(ミャンマー 海中に突き出した“水中寺院”チャイッカミッ 厳島神社のミャンマー)
ミャンマー東部のモン州の州都モウラミャイン二日目。
昨日は市街地背後の丘陵部に点在するいくつかの寺院をまわり、夕方には、そのひとつの寺院境内からの夕日を眺めました。
今日は、郊外に足を延ばし、海中に突き出した“水中寺院”チャイッカミッ、旧日本軍が現地労働者や連合国軍捕虜を使って建設した泰緬鉄道のミャンマー側起点タンビュッザ、おそろしく巨大な涅槃仏ウィンセントーヤなどを回ります。
昨日から明日までのモウラミャインでの観光は、昨日、日本円が両替できるところを探して市内を歩いていた際に見つけた(あるいは、見つかった)ところで“丸投げ”してあります。
バイクの後ろに乗ってまわる形なら半額ですむと勧められましたが、近場移動ならともかく、3日間バイクの後
ろというのは、お尻は痛くなるし、振り落とされないように台座をつかむ手は痛くなるし、暑い中でかぶるヘルメットは不快だし、ほとんど拷問です。高くてもいいからと車にしてもらいました。
その車というのが、軽トラックでした。
私は助手席に座り、ガイド役のくだんの男性は荷台に乗る形です。(屋根はついていますし、日よけのカーテンもあります)
別に私は軽トラックでもなんでもかまいませんが、バイクをしきりに勧めたのは自分が荷台に乗りたくなかったせいかも。
ドライバー氏は、「この車は日本製だ。日本車はグッドだ」と。
私も「それは、ありがとう」と適当に話を合わせていたのですが、日本製中古車ですから右ハンドルです。
ミャンマーは日本とは逆の右側通行です。
昔は、イギリス植民地の名残で左側通行だったようですが、1970年に当時のネ・ウィン政権が旧宗主国の英国の名残を消そうと、自動車通行を左側から右側へと変更したそうです。
右側通行の右ハンドルですから、日本国内の左ハンドル外車と同じで、追い越しなどのとき非常に見づらそうです。大きなトラックなど追い越す際は、車も半分ほど対抗車線に乗り出し、ドライバー自身も助手席側に体を寄せて・・・といった感じです。
日本製中古車が溢れているのはミャンマーだけではありません。
東南アジア各国で車体に日本語で会社名などが書かれた車がたくさん走っています。(優秀な日本車の証として、あえて消さないそうです)
今までも東南アジアでの多くの旅行で同様体験をしていたはずですが、通常は後部座席に座っていましたので気がつきませんでした。
「日本車はグッド」はいいけど、なんだか危なそうだね・・・とも感じたのですが(私は原付免許しか持っていませんので、車のことは全くわかりませんが)、よく見ると(見るまでもないことですが)走っている車はほとんど全部が右ハンドルです。
ということは、ミャンマーの車のほとんどが日本製中古車の右ハンドル車ということになります。
暇なので、対向車のハンドルを確認していたのですが、左ハンドルは10台に1台もいません。
ホテルに戻ってから確認したところ、ミャンマー国内の新車販売台数はまだ2000台(2014年)ほどで、ミャンマー国内の自動車販売台数の95%以上が日本からの輸入中古車販売となっているのが現状のようです。
****登録車の9割以上*****
ミャンマーでは軍政時代、欧米による経済制裁が強まると、自動車の完成車はもちろん部品輸入も制限された。
このため、既存の車を修理したり、わずかな輸入車を大事に使ってきたりした。なかでも日本の中古車は、20~30年前の車でも整備を怠らなければ走り続けた。
そうしたことがミャンマーでの日本車人気につながった。現在、登録車数(二輪など除く)約50万台の9割以上が日本車だ。【2015年5月29日 SankeiBiz】
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通常、自動車輸出については新車が議論の対象となり、シェアをめぐる各国メーカーが熾烈な争いをしている訳ですが、ミャンマーなどにあっては、車イコール中古車であり、中古車ビジネスが巨大な市場を形成していると思われます。
そこから生じる利益も巨額なものになります。
右ハンドルについては“慣れたら問題ない”との声もあるようですが、やはりこの右側通行・右ハンドル問題は安全対策のうえでミャンマー政府においては大きな問題となっているようです。
現在は、新車の乗用車とバスについては左ハンドルでなければ輸入できませんが、それ以外は右ハンドルでも構わないことになっています。
ミャンマー政府は、左ハンドルの韓国車や中国車のディーラーに優遇措置を与えるなどして、左ハンドル車の普及を進めていますが、中古車輸入についても右ハンドルを禁止したい意向で、実際に法規制も行われています。
しかし、膨大な右ハンドル車の存在、そこに絡む販売業者の反対などもあって、右ハンドル規制は迷走しているようです。優秀な日本車への人気が厄介な問題を生んでいるようにも。
****中古車天国ミャンマーの今後の動向****
2018年からミャンマーで走れる自動車は左ハンドルのみにしようと政府が動いていたが、2015年12月19日に突然右ハンドル規制が出された。内容は2016年4月以降に新しく自動車を輸入する場合は左ハンドルしか認めないというものであった。
一方で、元々所有していた自動車を買い替える場合は右ハンドルが可能であり、ミャンマー国内の中古車価格が上がった。
しかしながら中古車業界の圧力によって、2016年1月7日に再度ひっくり返り、元の右ハンドル自動車が輸出できる状況に戻った。
これは現政権の計画であり、市場が混乱する結果となった。NDLの政権は4月からスタートする。自動車は税収面でのインパクトが強く多くの利権が絡むため不明な部分は多い。【川崎大輔氏 「都市から地方へシフトするミャンマー中古車流通」】
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右ハンドル輸入OKは“自動車基本政策策定委員会は、左ハンドル車の輸入規制の導入前に移行期間を設けることを明らかにし、規制により車輸入関係者が損害を受けないよう、左ハンドル車だけでなく右ハンドル車も輸入できる移行期間を6カ月~1年設けるという。”【3月2日 「左ハンドル車のみとする輸入規制が移行期間の設定に」http://www.credo-biz.com/?p=6663】ということで、“当分の間”の措置とも。
“当分の間”がずるずる続くというのは、よくある話ではありますが。
関係業界からは、いっそのこと左側通行に戻した方がいいのでは・・・との声もあるようですが、それはそれでまた大変なことです。
右ハンドル車問題以外にも交通安全対策としては問題が山積しています。
首都ヤンゴンはともかく、人口30万人ほどのモウラミャインでも信号はほとんど見かけません。(まったくない訳ではありませんが) 当然ながら、歩行者は勝手に道を横断します。
ミャンマーだけでなく東南アジア各国を旅行して、非常に危ない・怖い思いをするのがこの道路横断です。
特に、ミャンマーの自動車普及は他の国々から遅れており、これから急速に加速すると思われます。
(そもそも、日本中古車が急激に増加したのも、民政移管後の規制緩和によるもので、2012年頃からのつい最近の話のようです)
早急な対応が必要とされています。先延ばしにするほど問題は深刻化します。