
(インドのジャム・カシミール州およびウッタルプラデシュ州で起きた女児レイプ殺人事件に抗議し、グジャラート州アーメダバードでろうそくをともして行われたデモの様子(2018年4月16日撮影)。【4月17日 AFP】)
【「ジェンダー後進国」日本は114位 保守的日本社会のセクハラ騒動に世界も注目】
世界基準で見た場合、日本が男女格差の大きい「ジェンダー後進国」であることは、常々指摘されているところです。
****世界「男女平等ランキング2017」、日本は114位で昨年より3位後退。北欧諸国が上位 ****
世界経済フォーラム(WEF)は11月2日、各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report) 2017」を発表し、毎年発表している2017年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」を公表した。対象は世界144カ国。
格差が少ない1位から5位までは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、ルワンダ、スウェーデン。日本は114位で昨年111位から3つ下がった。その他では、ドイツ12位、英国15位、米国49位、中国100位でいずれも日本より上。韓国は118位だった。
この指数では、ジェンダー間の経済的参加度および機会、教育達成度、健康と生存、政治的エンパワーメントという4種類の指標を基に格差を算定し、ランキング付けされている。(中略)
日本は、2015年が101位、2016年が111、2017年が114位とどんどん順位を落としている。
日本の評価は、項目ごとに優劣がはっきりしている。読み書き能力、初等教育、中等教育(中学校・高校)、平均余命の分野では、男女間に不平等は見られないという評価で昨年同様世界1位のランク。
一方、労働賃金、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育(大学・大学院)、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下。その中でも、最も低いのが国会議員数で世界129位。
その他の項目でも50位を超えるランクは一つもない。
全体順位114位という結果は、G7諸国とロシアを含む先進8ヶ国の中で断トツの最下位。(中略)
日本は、厚生労働省が旗を振り、企業も性別ダイバーシティに力を入れているが、毎年順位が落ちていく。一般的な報道では企業の女性管理職比率ばかりが注目されるが、大学や国会議員も同じぐらい足を引っ張っていることを忘れてはいけない。
ダイバーシティ不足を指摘する為政者や専門家こそがまず範を示すべきではないだろうか。【2017年11月2日 SustainableJapan】
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もちろん、特定項目に絞って数値化したものが、どれだけの意味を持つのか・・・という疑問はあるでしょうが、先進国で断トツ最下位という結果になっていること、しかも年々順位を落としていることは、なにかしら改善すべきものがあると認識すべきでしょう。
上記のような日本における女性の社会的地位の状況にリンクするものがあると思われますが、日本では「#MeToo(私も)」運動はあまり大きな社会現象とはなっていません。
そうしたなかで、“まず範を示すべき”立場にある官僚トップのセクハラ問題が大騒動になっているのは周知のところです。
****セクハラ告発の珍しさ注目=財務次官辞任、海外メディアも報道****
女性記者に対するセクハラ疑惑で福田淳一財務事務次官が辞職を表明したことは、海外メディアも相次いで取り上げた。
世界では昨年以降、セクハラ被害を公表する「#MeToo(私も)」運動が活発化。こうした中、海外メディアは、日本では同運動が広がっておらず、セクハラが告発されることは珍しいと注目している。
#MeToo運動のきっかけとなったハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ疑惑を昨秋に報じ、今年米ピュリツァー賞を受賞した米紙ニューヨーク・タイムズは18日、#MeToo運動に「日本が参加するかもしれない小さな兆し」と報道。
さらに、「日本ではセクハラ問題や性的暴行に関する国民的な議論は避けられてきており、こうした辞任は珍しい」と指摘した。
ロイター通信は「相次ぐスキャンダルで支持率が落ち込む安倍政権への打撃」と報道。また、世界で#MeToo運動が広がる一方、日本では著名人によるセクハラ被害が告発された例がほとんどなかったと指摘。「被害者は自身が責められることを恐れ、公表を控えることが多い」と伝えた。
英紙フィナンシャル・タイムズは「日本では珍しい#MeToo例」と報道。英BBC放送も「社会的に保守的な日本社会は#MeToo運動への参加が遅れている」と伝えるとともに、日本では「政治や企業の中に大きなジェンダーギャップ(男女格差)がある」と指摘した。【4月19日 時事】
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重要な問題が山積するときに“こんな問題”で混乱するのは・・・との見方もあり、辞任もそうした声への謝罪の意味合いのようですが、現代社会にあってセクハラが許されないのは北朝鮮からのミサイルが飛んでくる・こないには関係なく自明のことです。
また、国家トップのスキャンダルも「またか・・・」ですまされる“大国”もありますが、それに比べればセクハラ騒動は“健全さ”のあらわれでもあるでしょう。
【インドで相次ぐ女性への性的暴力事件】
ただ、別に日本の「ジェンダー後進国」の状況、セクハラの実態を弁護するつもりは全くありませんが、世界に目を転じれば、“セクハラ”なんてお上品なものではなく、むき出しの性的暴力が蔓延している国が多々あります。
例えば、コンゴ民主共和国などのアフリカの紛争多発地域における性的暴力は目を覆うものがありますが、この地域では女性への性的暴力に限らず、虐殺・暴行を含めた暴力行為そのものが日常化しているという根本的な問題があります。
そうしたアフリカの混乱地域に比べれば、まだましなのかもしれませんが、“世界最大の民主主義国”インドも、女性への性的暴力が大きな社会問題になっています。
****バス内集団レイプ事件から5年超・・・・警察の対応改善進まず インド****
2012年にインドの首都ニューデリーを走るバスの車内で女子学生のジョティ・シンさん(当時23)が集団による性的暴行を受けて死亡した事件から5年以上が経過する中、同国では女性の地位向上や性的暴行事件への対応改善が声高に叫ばれるようになった。
だがその一方で、助けを求める性暴力の被害者たちに対する警察のハラスメントは今も後を絶たないという。
同国では性犯罪に対する取り組み不足に対して反省を求める声が高まり、犯人はもとより、事件を無視したり被害者を侮辱したりする警察官を処罰する法律が強化された。
しかし、警察は今もレイプとみられるケースを事件化しなかったり、被害者に犯人と和解するよう圧力をかけたりしていると、人権団体は訴えている。
同国ラジャスタン州で義理の兄弟から暴行を受けたある女性は、家へやってきた警察に「和解案に署名しろ、さもないとお前たちを殴りつける」と言われたと告白。
さらに「賄賂を要求して私たちを脅迫した。警察署を訪れた時はいつも邪険に扱われ、『何も起きていないのにお前はうそをついている』などと言われた」と証言している。
また国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは昨年11月の報告書で、ニューデリーでの事件の余波を受けて、性犯罪の扱いの改善が誓われたものの「十分に実現していない」と指摘。
法的サービスの援助を女性たちに提供している慈善団体「Jan Sahas」によると、警察は現在も屈辱的な「処女検査」のため犠牲者を地元の病院に差し向けているという。同団体の一人は「犠牲者がしばしば動物のように扱われている」と述べた。
インドでは依然、首都だけでも毎日5件、全土では100件以上の性的暴行事件が記録されている。
その一方、首都警察の報道官は、女性たちが「5年前より安全になったと感じている」ことに自信を持っているという。
ただ、報道官は2012年以降、パトロールを増やし、女性向けのヘルプラインや護身術講習を導入したとする一方、さらなる対策が必要であることも認めている。【4月3日 AFP】
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事態を改善していく役割を担うべき警察そのものに意識の遅れがあるだけでなく、“まず範を示すべき”政治家にも。
****インド警察、国政与党の有力地方議員を少女レイプ容疑で捜査****
インドの警察当局は12日、ナレンドラ・モディ首相率いる国政与党・インド人民党所属の有力地方議員について、少女に対するレイプ容疑で捜査を開始した。
今回の事件により、同国のエリート層が刑罰を免れている実態に改めて厳しい目が向けられている。
BJP所属でウッタルプラデシュ州議員のクルディープ・シン・センガル容疑者とその兄弟には、同州ウナオ地区で被害者の少女をレイプした疑いが持たれている。
センガル容疑者は同州の有力議員。この拉致およびレイプ事件は昨年6月に発生していたが、11日夜になって州首相が捜査を命じ、連邦捜査当局の手に捜査が委ねられるまで地元警察は対応を拒否していた。
州警察の本部長は記者会見で「容疑者の事件は受理され、今後はインド中央捜査局がどのような対応が必要か決定する」と述べた。
この事件をめぐっては被害者である少女の父親が先週、警察の拘束下で負ったとされる傷が原因で死亡し、改めて事件に注目が集まった。
また少女は8日、州首相宅前で自身の体に火を付けようとした。少女の話によると、父親は事件を追及しようとしたところ逮捕され、警察によって拷問を受けたという。
センガル容疑者は議員に4期選出された一方、無法ぶりでも知られており、容疑を否認しているという。【4月12日 AFP】
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まあ、政治家の下半身に問題が多いのは日米を含めて世界共通のことではありますが、レイプとか、地元警察が対応を拒否といったあたりはやはり問題です。
女性への暴力と、インド特有の宗教対立感情が結びつくと、悲惨な事件をも生みます。
****印ヒンズー教徒グループがイスラム教徒の8歳少女殺害 目的は異教徒「排除」 蛮行に各地で抗議デモ****
インドで8歳のイスラム教徒の少女が、国内最大宗教であるヒンズー教徒のグループに性的暴行を受けて殺害されるなど、女性への暴行事件が相次いでいる。
各地で極端な民族主義や女性差別に抗議するデモに発展。12日深夜には首都ニューデリーでも集会が開催され、参加者は「差別には厳罰を」などと訴えた。
8歳の少女が殺害された事件は今年1月に北部ジャム・カシミール州で発生した。印PTI通信などによると、ヒンズー教徒のグループは約1週間にわたり、少女を寺院に監禁して殺害したという。少女には薬物が投与され、遺体は森林に放置された。
これまでに元州政府関係者や警察官を含む8人が逮捕された。犯行の残忍さもさることながら、イスラム教徒の一団を「地域から排除するため」脅迫の意味で事件を計画したと供述しており、怒りが広がっている。
国政与党のインド人民党(BJP)所属の政治家が、犯人を擁護する集会に出席したことも反発を招く要因となった。(後略)【4月15日 産経】
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上記事件が問題となっているさなか、再び女児への性的暴行事件が。
****インドで7歳女児のレイプ殺人、相次ぐ性犯罪に怒りの声強まる****
インドで17日、レイプされて首を絞められた7歳の女児の遺体が見つかり、女性や少女らへのおぞましい性犯罪が後を絶たないことに対する怒りがますます高まっている。
遺体は17日朝、ウッタルプラデシュ州エタ県の建設現場で見つかった。女児はその数時間前に、出席していた結婚式から行方不明になっていた。
警察によると、結婚式のためにテントを設置していた近所の男が、隔離された建物に女児をおびき出したと疑われており、身柄を拘束されたという。(中略)
同国では北部ジャム・カシミール州で、イスラム教徒の8歳の女児が集団レイプされた上殺害されるという事件が発生しており、ここ数週間、各地で抗議行動が繰り広げられていた。【4月17日 AFP】
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インドでこうした事件が多発する背景としては、インド社会の貧困、教育事情、さらにはカースト制などによる社会的閉塞感といった社会的問題が関係しているのかも。
【フランスのレイプ事情 スウェーデンでは「自発的でなければ暴行」】
なお、先述のように、女性への性的暴力は世界各地で見られる現象で、インドに限った話ではありません。
アフリカの紛争地域は別格としても、“先進国”フランスでも。
****女性10人に1人以上がレイプ被害経験 フランス****
フランスの女性の10人に1人以上が少なくとも1回はレイプ被害に遭っていることが、23日に発表された性暴力に関する調査結果で明らかになった。
シンクタンクのフォンダシオン・ジャン・ジョレスが仏調査会社Ifopに委託して18歳以上の女性を対象に2月6〜16日に行ったオンライン調査によると、調査に応じた女性2167人の12%が、フランスの法律でレイプと規定される「暴力、強制、不意打ちをもって行われる性的挿入行為」の被害に遭ったことがあると回答した。
また回答者の5%は、2回以上被害を受けたと答えた。
レイプ被害経験者のうち、31%が夫や恋人などのパートナーから襲われたと答え、19%が知り合いから被害を受けたと回答。見知らぬ他人が加害者だったと答えた人はわずか17%だった。
被害経験者の半数が、襲われた当時は子どもか10代だったと述べ、42%が被害に遭った場所は自宅だったと答えた。
しかし、加害者を公的に訴えた被害経験者はたった15%だった。一方、25%が自殺を図った経験があると答え、被害者の多くが心の傷(トラウマ)を抱えていることが示された。被害経験者の自殺未遂率は、フランスの女性の一般的水準と比べて4倍も高かった。
FJJによると、回答者の中には米ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタイン氏のスキャンダルをきっかけにソーシャルメディアで相次ぐ性暴力の告発に勇気付けられて沈黙を破り、初めて被害経験を明かした人がいる可能性がある。
仏内務省は先月、2017年10〜12月の性暴力被害の報告が前年同期比で31.5%増えたと発表している。【2月26日 AFP】
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冒頭の「男女平等ランキング」では、フランスは11位と上位に位置しています。そうなると、このランキングは何を意味しているのか・・・という話にもなりますが、日本が114位にあることの問題を小さく扱うつもりもありません。
一方、ランキング5位のスウェーデンでは、性交渉について「自発的でなければ暴行」と法律で明確化することが検討されているようです。
****スウェーデンのセックスに必要なのは……****
性交前には双方が明確な同意を示さなければならない・・・そんな法律の新設がスウェーデンで進んでいる。議会で可決されれば、7月1日には施行される見込みだ。
現行法では強姦で起訴できるのは脅迫、暴力、強要が証明できる場合のみ。ヨハンソン法相は法改正により有罪判決が増えるだろうと言う。「自発的でなければ暴行だと、法律で明確にすることが重要だと思う」
法令審査を行う立法顧問院は新法の必要性に疑問を呈し、性交を違法にする行為の明確化を提言。これを受けて政府は「言語や行動などによる」同意が必要との文言を法案に挿入した。
それでも法案の原則は変わらないとヨハンソンは言う。「性交が虐待かどうかを決めるのは自発性。暴力、脅迫、強要があったか、または被害者が弱い状況だったかの証明が必要な現行法とは違う」
この改正案導入の背景には#MeToo運動や、性犯罪者の起訴を容易にする流れがある。スウェーデンでは性犯罪の厳罰化や外国での買春禁止も検討中だ。【4月3日号 Newsweek日本語版】
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性行為の前に相手から同意書をとっておく必要があるかも・・・なんて茶化すのではなく、男性側の身勝手さを反省すべきなのでしょう。