
(中国海軍のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦(上)、056型コルベット(下)【4月9日 Newsweek】
南京軍区副司令員、王洪光中将によると、中国軍は6種の戦い方(火力戦、目標戦、立体戦、情報戦、特殊戦、心理戦)を駆使することにより、台湾を3日で占領してしまうことができるとのこと。
地上軍を使わずとも、短距離弾道ミサイルを800〜1000発、長距離巡航ミサイルを1000発以上、それらに加えてミサイル爆撃機や駆逐艦、それに潜水艦などから発射する対地攻撃用ミサイルも数百発保有しており、各種ミサイル集中連射攻撃による「短期激烈戦争」で、3日といわず半日で台湾の軍事拠点や戦略拠点を徹底的に破壊することも可能とみられているとか。
さらに言えば、そうした軍事力を実際に使わずとも、現実の脅威と思わせることができれば「戦わずして勝つ」ことも。【4月5日 BIGLOBEニュースより】)
【実弾射撃訓練、空母「遼寧」を台湾東側に】
朝鮮半島で(どういう結果になるかは別にして)融和ムードが高まる一方で、もうひとつの分断国家を分かつ台湾海峡周辺では、大規模演習行うなど中国側の圧力が強まっています。実弾射撃訓練も行ったとか。
****演習常態化でプレゼンス強化 中国、米の“空白”突き台湾威圧****
中国軍は今月に入り、近海で演習を相次いで実施し、3日連続で爆撃機を台湾周辺に飛行させるなど軍事行動を活発化させている。
強国」「強軍」路線を掲げる習近平指導部が、「一つの中国」原則を認めない台湾の蔡英文政権を軍事的に威圧すると同時に、南シナ海などアジアにおける軍事戦略がいまだに定まらないトランプ米政権の“空白”を利用して周辺海域での軍事プレゼンス拡大を図っている側面もありそうだ。
中国国防省によると、陸軍航空隊所属の攻撃ヘリ部隊が18日、昼夜にわたる実弾射撃訓練を実施。海上の模擬艦船などの目標に対してミサイルやロケット弾による攻撃を行った。場所は「東南沿海」としか言及していないが、台湾海峡での実施を公表していた演習の一部とみられる。
さらに同省は19日、空軍の轟(H)6K爆撃機やスホイ30戦闘機、偵察機が宮古海峡を通過するなどして台湾の周囲を飛行する訓練を2日間にわたって実施したことを明らかにした。防衛省統合幕僚監部によると、中国の爆撃機2機は20日も同様の飛行を行った。
いずれも蔡政権へのあからさまな圧力だが、台湾に接近するトランプ米政権への対応を“口実”に、軍事行動を拡大させている面もある。
中国当局は特に強硬派のボルトン米大統領補佐官が訪台する動きを牽制しており、徐光裕退役少将は「もし米国が過ちを犯し続けるのであれば、さらなる軍事演習につながる可能性は否定できない」と環球時報(英語版)に語った。
羅援・中国戦略文化促進会副会長も同紙に「演習は武力統一への準備だ」と寄稿し、軍事演習や飛行訓練の「常態化」を求めた。(後略)【4月20日 産経】
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台湾側は、中国は小規模な定例訓練を過大に宣伝し、台湾を動揺させる心理戦をしかけていると、国民が動揺しないように呼び掛けています。
****台湾・蔡政権、24時間態勢の警戒強調 中国の心理・世論戦に対応腐心****
台湾の蔡英文政権は、中国が軍事的な「心理戦」と「世論戦」で圧力を強めていることで対応に腐心している。国防部(国防省に相当)は20日、中国が18日の「実弾演習」から3日連続で爆撃機を台湾周辺に飛行させたことを受け、24時間態勢の「領空侵犯対処」を強調する動画を公開。外遊中の蔡総統も中国側の「情報操作」を「簡単に信じないで」と呼びかけた。
中国は18〜20日、空軍の轟(H)6K爆撃機2機などを宮古海峡から西太平洋、バシー海峡を経て台湾を「周回」する経路で飛行させた。
台湾紙は、19日には台湾南東の防空識別圏(ADIZ)に2時間にわたり進入し再三の警告を無視したと報じたが、国防部は確認を避けた。
国防部は、中国国営中央テレビが報じた、陸軍の攻撃ヘリが18日に実施した海上射撃訓練とする映像も「新旧の映像を編集した可能性がある」(報道官)としている。(後略)【4月20日 産経】
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一方、中国は、台湾の防御が比較的手薄な南東側に空母「遼寧」を中心とする「空母編隊」を送り込んで台湾を牽制する動きも見せています。
****中国空母「遼寧」が台湾南東沖で対抗演習 国防省発表****
中国国防省は21日、空母「遼寧」を中心とする「空母編隊」がバシー海峡以東の西太平洋で対抗演習を20日に実施したと発表した。空母打撃群の本格的な運用に向けた演習とみられる。
演習では、艦載機の殲(J)15による発着艦訓練を太平洋上で初めて実施した。演習海域は台湾の南東とみられ、台湾への脅威が一段と増した形だ。(中略)
遼寧が西太平洋に進出し、台湾の東側を航行するのは2回目だが、2016年12月に南下ルートで通った際には台湾を「高速で通り過ぎた」(台湾の元国防部長)とされる。
台湾の防衛体制は、西側の中国大陸方面に重点があり、山脈で隔てられた東部は、後方支援機能や緒戦での損害を避けるための「戦力保存基地」が置かれている。
特に南東部は防空体制が薄く、遼寧が東側に進出することは「背中から挟み撃ちに遭う」(台湾海軍少佐)ことを意味する。このため、17年1月には東部と南東部に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配置したことが判明している。
防衛省は21日夕、遼寧など7隻が宮古海峡を通過し東シナ海方向に北上したと発表した。山東省青島の母港に帰港するとみられる。【4月22日 SankeiBiz】
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【中国が苛立つアメリカの「台湾旅行法」、台湾行政院長の独立発言】
中国側が圧力を強めている背景には、ひとつはアメリカ・トランプ政権の「台湾旅行法」による台湾接近があります。
****米高官、台湾を相次ぎ訪問 中国側は強く反発****
米国と台湾の高官の往来を促す米国の台湾旅行法が(3月)16日に成立して以降、米国の国務省や商務省の高官が台湾を相次いで訪れ、米台関係の強化をアピールしている。
貿易問題で中国への圧力を強めている米国が、台湾問題でも牽制(けんせい)しているとみられ、中国側は強く反発している。
米国務省で東アジアを担当するアレックス・ウォン次官補代理が20~22日に訪台。商務省の次官補代理も22日に訪れ、27日まで滞在する予定だ。ウォン氏は21日夜、台北で開かれた米系企業の集まりで、「民主主義を守る台湾の能力を強化していく。米国の関与はこれまでに無く強い」とあいさつし、同席した蔡英文(ツァイインウェン)総統と握手を交わした。
米国は1979年に中国と国交を結び、台湾と断交して以降、米台高官の相互訪問を自主規制してきた。16日にトランプ米大統領が署名した台湾旅行法は高官の相互訪問を促している。トランプ氏の訪台や蔡氏の訪米が可能となる内容で、中国側は即時に「断固反対」を表明した。
台湾外交部は法の成立当初、「台米関係を向上させる」と歓迎を表明したものの、蔡氏らの訪米の可能性に関心が集まると、「総統や副総統らが訪米するいかなる計画もない」と火消しの談話を19日に公表した。
台湾は中国の一部であるという「一つの中国」原則を主張する中国側はその後も反発を強めており、連動するように、中国海軍の空母遼寧が20~21日に台湾海峡を通過した。
中国外務省は22日、米高官の台湾訪問について、「台湾カードを切ろうとする者は、中国の領土分割を絶対に認めないという習近平(シーチンピン)国家主席の講話を読み込むべきだ」と警告した。【3月24日 朝日】
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「台湾旅行法」に加え、アメリカ政府は、台湾の潜水艦自主建造計画に米企業の参加を許可したことで、米台の安全保障関係の強化をアピールする姿勢も見せています。
台湾にとってアメリカとの関係強化は歓迎すべきものですが、野党を中心に、中国からの圧力強化やトランプ政権が台湾を対中交渉のカードとするのではないかとの懸念もくすぶっています。
台湾がトランプ大統領によって対中国“貿易戦争”の「カード」として利用されるという懸念は、もっともな心配でしょう。また、蔡総統らの訪米など“過度の期待”が高まるのも避けたい様子です。
中国を苛立たせているもうひとつの要因は、台湾の頼清徳(ウィリアム・ライ)行政院長(首相に相当)の“独立発言”です。
****台湾行政院長の独立発言、中台で非難の応酬****
台湾の頼清徳(ウィリアム・ライ)行政院長(首相)が議会で台湾の独立に言及したことを巡り、中国と台湾で非難の応酬が続いている。
中国共産党機関紙「人民日報」傘下の新聞は中国は頼氏に国際逮捕状を発行すべきと主張、台湾側は中国政府が国内メディアに台湾批判をあおっていると反論した。
中国は台湾を自国の領土とみなしており、台湾の総統に独立派・民主進歩党の蔡英文氏が選出されて以来、独立機運への警戒を強めている。
頼院長は30日、議会で、自身が台湾独立派だと述べ、台湾は主権を持つ独立国家との考えを示した。
これを受け、人民日報傘下の有力国際情報紙である環球時報は31日、頼氏は中国の反国家分裂法に基づいて起訴されるべきと主張。「頼氏の犯罪の証拠が確固たるものならば、国際逮捕状の発行が可能だ」とした。
中国国務院の台湾事務弁公室は2日、頼氏の発言は中台関係の平和と安定を損なうもので「危険でおこがましい」と非難した上で、台湾は中国から切り離されないとの見解を示した。
台湾で対中問題を扱う大陸委員会は3日、環球時報と中国政府の見解は「脅迫的で理不尽だ」と反論。「台湾は民主主義に基づく多元的社会だ」とし、頼氏は台中関係の平和と安定を維持するという総統の政策に従っていると擁護した。
委員会はまた、「中国が繰り返し、台湾当局と台湾人を脅迫、抑圧するためにメディアやインターネットを利用してきたと」し、「軍事力や法的な脅しによって台湾の尊厳と利益を侵害しようとしている」と主張した。【4月3日 ロイター】
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【中国「台湾の独立勢力が引き続きやりたい放題やればわれわれはさらなる行動を取る」】
中国側は、上述のような軍事的圧力の以外にもいろいろと。
****中国駐米大使「台湾の平和統一がうまくいかねば、武力統一も辞さず」****
中国メディアの環球網によると、中国の崔天凱駐米大使はこのほど、中国中央電視台(中国中央テレビ)の英語国際チャンネル、CGTNの番組に出演して、中国による台湾の武力統一を肯定する発言をした。 (後略)【4月6日 レコードチャイナ】
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****<台湾>WHO総会、今年も招請されず 中国が圧力か****
5月21日からスイスで始まる世界保健機関(WHO)総会への招請状が昨年に続き今年も台湾に届いていない。台湾は中国がWHO事務局に圧力をかけているとみて、国交がある国や友好国に対し、台湾の参加をWHO事務局に働き掛けるよう求めている。(後略)【4月23日 毎日】
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今後は、台湾側の対応しだいでは軍事的な圧力をさらに強める考えも示しています。
****「台湾がやりたい放題ならさらなる行動」中国 独立志向に反発****
中国政府は、台湾周辺の海域で活発化させている中国軍の演習について「台湾の独立勢力がやりたい放題やればさらなる行動をとる」として、台湾の蔡英文政権の対応しだいでは軍事的な圧力をさらに強める考えを示しました。
中国は、台湾の蔡英文政権を「1つの中国」の原則を受け入れず独立志向が高いと見なし、批判を続けています。
台湾の首相にあたる頼清徳行政院長が「台湾は独立主権国家だ」などと繰り返し発言していることにも中国は激しく反発しています。
今月、中国軍は台湾海峡とみられる海域で実弾射撃演習を行ったほか、台湾の東の西太平洋の海域で初めて空母や艦載機が訓練を行うなど圧力をかけています。
これについて、中国政府で台湾問題を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は25日の記者会見で「台湾の独立勢力が引き続きやりたい放題やればわれわれはさらなる行動を取る」と述べ、台湾側の対応しだいでは軍事的な圧力をさらに強める考えを示しました。
また、このところ台湾と関係を深め、閣僚の相互訪問を促進する法律を成立させたアメリカについて「台湾問題は中国の内政で外部の勢力が介入して干渉することに断固として反対する」と述べ、改めてけん制しました。【4月25日 NHK】
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“やりたい放題”なのは中国の方に見えるのですが、立場が違うと上記のような話にもなるようです。
【台湾世論:中国による台湾侵攻の可能性は「ない」が、戦争になれば勝てない 独立より現状維持を】
軍事的圧力を強める中国に関し、台湾の与党寄りの自由時報は、一連の中国側の言動は実体のない情報操作も含めて世論に影響を及ぼす「シャープパワーの新事例だ」(20日付)と指摘、一方、中国寄りの中国時報は「(台湾への)警告の雰囲気がさらに強まった」(25日付)とするなど、評価は両極化しています。【4月26日 産経より】
台湾世論は、あまり大きくは反応せず“様子見”の状況です。
****台湾の世論調査、6割強が中国による侵攻「あり得ない」****
2018年4月27日、台湾周辺の海域や空域で中国軍の動きが活発化している。一連の軍事活動について、中国側は独立志向の蔡英文政権に明確なメッセージを送るため、と警告。それでも台湾の世論調査では中国による台湾侵攻の可能性は「ない」と考える人が6割強に上っていることが分かった。(中略)
台湾メディアによると、民間団体の台湾民意教育基金会が23日に発表した最新の世論調査の結果で、中国による台湾侵攻の可能性は「ない」と考える人は64.5%。「ある」と答えた人の割合を大きく上回った。調査は今月15〜17日、台湾に住む20歳以上の男女を対象に電話で実施。有効回答件数は1072件だった。
台湾側が中国軍に打ち勝つ見込みは「ない」とした人は65.4%。中国が台湾を攻めてきた場合、米軍が台湾を助けるために「出動する」と思う人は47.4%で、「出動しない」と思う人は41.0%だった。
18日の台湾海峡での実弾射撃演習については、両岸関係の改善に「寄与しない」と答えた人は86.1%に達した。
台湾の現在の国際的地位に関して、「不満」だとした人は69.9%。「両岸関係は外交関係より重要であり、中国側を刺激しないよう、国際的地位の向上に向けた努力をやめるべきだ」とする項目に「反対」と答えた人は65.6%に達し、「賛成」の人は23.5%にとどまった。(後略)【4月28日 レコードチャイナ】
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****緊張のなか台湾が軍事演習──中国が攻めてきたら7割が「戦う」****
・・・台湾民主基金会が2018年1月に行った世論調査によると、中国が侵攻してきた場合、軍隊に志願するか、その他の手段で抵抗すると回答した人の割合は68%に達している。
また台湾の独立を懸けた戦争が起きた場合、55%が参戦すると述べたものの、その一方で91%が、独立よりも実質的に主権が保たれた現在の状態の維持を望むと回答した。
台湾が中国と再統一されるべきだと考える人は、アメリカの外交専門誌ナショナル・インタレストによれば、わずか1.5%にすぎなかった。【4月25日 Newsweek】
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中国が攻めてくることはないとは思うが、もし攻めてきたら戦う、しかし勝機はあまりない・・・・そうならないためにも独立云々より“現状維持”で・・・・というのが台湾世論の多数です。
ただ、“現状維持”は座して得られるものでもありません。大陸から押し寄せる波に対して、どうすれば“現状維持”が可能なのか・・・。
朝鮮半島では、実現可能性や実現した場合の問題などは別にしても、一応「民族の平和的統一」が南北双方で“大義”として語られるのに対し、中台間では“戦争”が現実の脅威として消えていません。
この差は、これまでの歴史的経緯の差を反映したものですが、ただ、朝鮮半島でも40年ほど前、朴正煕大統領の時代は38度線は一触即発のピリピリした状態で、韓国は臨戦態勢にもありました。(さらに10年ほどさかのぼれば、日韓の間にも李承晩ラインなんてものがあって、日本の漁船328隻が拿捕され、漁師3929人が拘束、そのうち44人が死傷するといった関係にもありました)
それが、今では南北首脳が手をつないで38度線を行き来する・・・・状況は変化するものです。
30年後、40年後には、中台首脳が海峡を越えて相互訪問する、そんな時代がくる・・・・のでしょうか?