(2019年には外国人比率が54.5%に達した川口市芝園町【7月14日 新山 勝利氏 東洋経済ONLINE】)
【白人を主とする支持層向けの再選戦略 民主党を急進左派に引き寄せる“罠”とも】
トランプ米大統領が、野党・民主党の非白人系の女性議員らを念頭に「アメリカが嫌ならば、出ていけばいい」といったツイート・発言を繰り返し、人種差別的だとの批判を浴びているとは周知のところです。
他の政治家だったら政治生命にかかわるような発言ですが、トランプ大統領の場合、「ああ、またか・・・」で終わってしまうところが大きな問題でもあります。アメリカ・世界には“トランプ疲れ”みたいなものも。
今回発言に関しては、当初、与党・共和党は音なしの構えとも言われていましたが、ここにきて、さすがに批判が出ているようです。
****トランプ氏「嫌なら出ていけ」発言に非白人系女性議員ら反論、与党からも批判****
米国のドナルド・トランプ大統領が、野党・民主党の非白人系の女性議員らを念頭に「米国が嫌ならば、出ていけばいい」と述べたことは極めて人種差別的だとして、民主党のみならず与党・共和党の一部からも批判を浴びている。
トランプ氏は14日にまずツイッターへの連続投稿で民主党議員らを攻撃し、米国が嫌なら出身地に戻ればいい、と述べた。
さらに15日、ホワイトハウスで行われた米国製品の広報イベント「メード・イン・アメリカ」に出席したトランプ氏は報道陣に対し、「彼らは文句しか言わない」と発言。「彼らは米国を嫌悪する人々だ」「ここが嫌ならば、出て行けばいい」などと語った。
さらに「(国際テロ組織)アルカイダのような米国の敵」を愛する者たちだとも述べた。
記者から、発言を人種差別的と捉える人が多いが気にならないかと聞かれたトランプ氏は、「心配ではない。多くの人が私に同意しているから」と答えた。
トランプ氏は議員の名前を挙げなかったが、同氏が念頭に置いていたのは、前回の下院選で初当選を果たした、プエルトリコ系のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏、ソマリア生まれのイルハン・オマル氏、パレスチナ系のラシダ・タリーブ氏、アフリカ系のアヤンナ・プレスリー氏の4人とされる。いずれも民主党の女性議員だ。
15日のトランプ氏の発言から数時間後、4人の議員は記者会見を開き反撃した。プレスリー氏は、トランプ氏のコメントは「ゼノフォビック(外国人嫌い)で偏見の塊」だと非難し、「私たちを黙らせることはできない」と語った。
またオマル氏は、トランプ氏が4人の「有色」議員に「露骨に人種差別的な攻撃を行った」と述べ、「これは白人国家主義者の考え方だ」と述べた。さらにオマル氏とタリーブ氏は、トランプ氏の弾劾を求めるという従来の主張を繰り返した。
■冷徹で強硬な大統領選戦術?
トランプ氏の一連のコメントの直後から民主党議員らは批判していたが、共和党議員らは当初沈黙していた。しかし15日になり、トランプ氏のお膝元である与党からも非難の声が上がり始めた。
ツイートおよびホワイトハウスでのトランプ氏の言葉は「破壊的で人を卑しめ、不和をもたらすものであり、率直に言って非常に悪い」と批判したミット・ロムニー氏、「大統領の悪意に満ちた発言は弁解のしようがない。絶対に容認できない」と断じたリサ・マカウスキ氏ら上院議員が次々と批判を展開。
下院では共和党唯一のアフリカ系議員であるウィル・ハード氏が米CNNテレビに対し、トランプ氏の振る舞いは「自由世界の指導者として不適切」だと述べた。
トランプ氏のコメントは2020年の次期米大統領選へ向けて、白人を主とする自身の支持層へ向けてアピールする狙いがあるとみられ、人種間の緊張を引き起こし、また自らの政敵らの分裂をかき立てている。
バラク・オバマ前大統領の2回の大統領選で選挙参謀を務めたデービッド・アクセルロッド元大統領上級顧問はツイッターに次のように書き込んだ。
「一連の意図的な人種差別的投稿によって、@realDonaldTrump は標的(訳注 非白人系議員)に注目させ、民主党を彼らの擁護に走らせ、彼らを民主党全体の象徴とすることが狙いだ。これは冷徹で強硬な選挙戦術だ」「シートベルトを締めよう。大統領選が近づけば、もっとひどくなるだけだ」
「@realDonaldTrump 」はトランプ大統領のツイッターのアカウント。 【7月16日 AFP】AFPBB News
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民主党や一部共和党内部からの批判はあるものの、トランプ大統領が言っているように、支持層の多くは「そうだ!」と喝さいを叫んでいることでしょう。
そのあたりが、“2020年の次期米大統領選へ向けて、白人を主とする自身の支持層へ向けてアピールする狙いがあるとみられ、人種間の緊張を引き起こし、また自らの政敵らの分裂をかき立てている。”という選挙戦略にもなる訳ですが、いくら再選のためとは言え、こんな分断を煽るようなことをしていいのか?
トランプ大統領は、それまで各自が“思ってはいるが、口にすることはためらわれる”ようなことを自ら口にすることで、本音で語る政治家として人気を博しています。
ただ、そのことは本来は理性的に対応すべきことがらについて、“本音”と称する感情の赴くままに行動することが許されるという形で、パンドラの箱を開け、世の中に憎悪や敵意が満ち溢れる形にもなっています。
トランプ大統領の政策がどうこう、恫喝的な外交の成果がどうこう・・・といった話よりも、この「パンドラの箱を開けてしまった」ことがトランプ政治の一番の問題ではないでしょうか?
話を今回の発言に戻すと、民主党がトランプ批判の流れで、急進的な4人に寄り添う形にむかうことは、トランプ大統領の仕掛けた罠にはまるものだ・・・との指摘もあります。
****「国に帰れ」ツイートはトランプ大統領が仕掛けた罠か 民主党が“独立愚連隊”周辺に結束****
(中略)
民主党幹部と対立する4人の“独立愚連隊”
(トランプ大統領ツイートの対象とされる)その4人というのはアレキサンドリア・オカシオ・コルテス議員(ニューヨーク州)アヤナ・プレスリー議員(マサチューセッツ州)ラシダ・タライブ議員(ミシガン州)イイハン・オマール議員(ミネソタ州)で、いずれも昨年の中間選挙で初当選した新人議員だが米国政治では極左とも言える立場をとって民主党幹部とはことごとに対立しており、党内の「独立愚連隊(squad)」とも呼ばれている。
また彼女らは、オカシオ・コルテス議員がプエルトリコ系、プレスリー議員とタライブ議員はアフリカ系、オマール議員はソマリア生まれといずれも白人ではないので大統領のこのツイートは「人種差別」と直ちに民主党側から非難の声が巻き起こった。(中略)
当然のことながら民主党内からは彼女らを支援する発言が続き、来年の大統領選への出馬を表明している民主党の候補者も全員が彼女らの主張に賛意を表明した。
こうなると、トランプ大統領にとっては取り返しのつかない「失言」だったように思えるが、実は大統領が計算づくで仕掛けた「罠」だったという見方もある。
トランプ大統領が仕掛けた罠か
反トランプの立場を貫いているNBCニュースのサイトに「トランプは民主党が急進左派に縛られるよう期待し、その通りになった」という分析記事が16日掲載された。
それによると、トランプ大統領は来年の大統領選で対立候補が誰であれ急進過激派に近ければ「国を率いるには過激すぎる」と攻撃して有利な立場になると計算してシナリオを作り、まず「独立愚連隊」に攻撃を仕掛けた。
案の定民主党内では反発が広がり、もともとは「独立愚連隊」と党内で対立していたペロシ下院議長も大統領の主張は「米国を白人第一に」とするものだと非難する声明を発表した。
大統領の狙い通り、民主党を「独立愚連隊」の周囲に結束させることになったわけだが、これについてNBCニュースの分析記事はこう評している。
「トランプが喋ったりツイートする誹謗中傷の全てが彼の天才的な駆け引きの賜物であると考えるのは間違いだが、彼のメッセージが何の思惑もなく発せられていると考えるのも間違っている」
民主党は、トランプ大統領の「罠」にハマったのだろうか?【7月16日 木村太郎氏 FNN PRIME】
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トランプ大統領がどこまで「シナリオ」を練ったのかは定かではありませんが、急進左派からの批判は怖くない、むしろ民主党が急進左派の方向に行けば自分の再選戦略には有利だ・・・ぐらいの思いはあるでしょう。
トランプ大統領にとっての問題は、批判が急進左派議員擁護のレベルにとどまるのか、あるいは、アメリカ建国の理念・価値観・良識に反する言動として幅広い批判に広がるかどうかですが、「どうなるか、様子を見てみよう」と言うしかないですね。
【最新作では「007」が黒人女性に引き継がれる設定 「ポップコーンを落とす瞬間」】
話は飛びますが、イギリスからの話題。
****「007」は黒人女性=来年公開の最新作、英に衝撃****
2020年公開予定の英人気スパイ映画「007」シリーズ最新作で、黒人女優のラシャーナ・リンチさんがコードネーム「007」のスパイを演じることが明らかになった。英メディアが15日までに一斉に報じた。
主人公ジェームズ・ボンドはこれまで通り男性俳優ダニエル・クレイグさんが演じるが、最新作ではボンドがスパイを退任し、「007」が黒人女性に引き継がれる設定になるという。
「007」を白人男性以外が演じるのは25作目にして初となる。報道を受け、英国では「ポップコーンを落とす瞬間だ」(デーリー・メール紙)などと衝撃が広がっている。
メール紙によると、最新作ではボンドが英情報機関・対外情報部(MI6)を去り、ジャマイカで余生を過ごしているところから物語が始まる。情報機関の責任者が「007、入れ」と呼ぶと、リンチさんが演じる黒人女性が登場するシーンがあるという。【7月16日 時事】
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トランプ大統領やその支持者は、こういう事態がアメリカでも起きるのが嫌なのでしょうね。
【なし崩し的“移民大国”日本 外国人が5割を超える地域も】
一方、外国人に門戸を閉ざしているとされてきた日本も“隠れた移民大国”になりつつあるとか。
総務省が10日に発表した住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口動態調査によれば“日本人と外国人を合わせた総計(1億2744万3563人)に占める割合も2.09%と、外国人を調査対象に加えた2013年以降、増加傾向が続いている。”【7月10日 毎日】というのは、報道のとおり。
日本人の人口減少を外国人が補う形にもなっています。
その結果、特定地域によっては、外国人がメインになるような地域も出現しています。
****日本語NG店も「川口」のディープすぎる街の姿 在留外国人数は全国3位で中国人が最も多い****
メニューは中国語だけで、日本語や英語表記は見当たらない。店員とのやりとりは基本中国語。片言の日本語や単語で行うが、わからない場合は苦笑いですごされる。
この店があるのは中国ではない、埼玉県川口市だ。西川口の駅前を歩くと中華料理店や中国語で書かれた看板が目に入る。
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019年4月、政府は「改正出入国管理法」を施行、外国人労働者の受け入れが拡大された。新たな在留資格の目的の1つには、深刻な人手不足に対応するための即戦力を受け入れる目的がある。事実上の移民政策の解禁で、日本が大きく舵を切ったといえる。
在留外国人総数は全国の自治体で3位
そんな中、中国人の急増で大きく変貌した街が埼玉県川口市だ。今では外国人の入居者も増えており、「日本の未来予想図」といっても過言ではないだろう。本稿では埼玉県川口市の西川口駅前のチャイナタウン化と外国人比率が5割を超える芝園町の現状についてレポートする。
川口市の人口は約60万人で、県庁所在地のさいたま市に次ぐ県内2位だ。2018年4月より中核市(県から一部権限が移譲)となった。在留外国人総数は全国の自治体で3位、3万5988人いる。もちろん、埼玉県内でも1位だ。
川口市の国籍別で住民をまとめると、中国人が圧倒的に多いことがわかる。
1990年代から中国人の住民数が増加
1962年に公開された映画『キューポラのある街』は川口市が舞台。鋳物の街キューポラ(鉄の溶解戸)が多く見られ、多くの韓国・朝鮮人労働者が働き、在日朝鮮人が帰還問題で悩むシーンも描かれていた。
1979年当時、韓国・朝鮮の住民数は1910人、中国は86人しかいなかった。それが1993年にそれぞれ2601人、2683人になり中国が追い抜き、2019年には3047人、2万1036人と約7倍の差がついた。この鋭角の右肩上がりの人口増加は、今後も増えていくだろう。
2004年、埼玉県警が西川口駅周辺を「風俗環境浄化重点推進地区」に指定。最盛期に約200店舗もあった違法性風俗店が摘発され徐々に姿を消した。その後、撤退と入れ替わりに中国系の飲食店、商店が進出した。
冒頭で紹介した西川口駅近くにある大鍋料理店を訪れた。中国・東北部で食べられている大鍋料理は、東京都内などでもあまり見たことがなく、とても珍しい存在だ。ここに東北部出身の中国人が、故郷の味を求め足しげく通っている。(中略)
西川口駅前だけでなく、市内で中国化が進んでいるのが川口芝園団地だ。
川口芝園団地は1978年に入居を開始、JR京浜東北線、蕨駅から徒歩8〜15分だ。駅は隣の蕨市にあるが、団地の住所は川口市になる。蕨駅は「埼玉都民」のアクセスとしては最適であり、池袋・新宿・渋谷・東京駅など、都心へも30分ほどでアクセスできる。団地から駅まで徒歩に時間差があるのは、大規模な団地で横長に距離があり、15号棟も連なり2400戸超もあるためだ。
外国人比率は5割超
川口市芝園町は川口芝園団地の9割程の面積を占めるが、2016年にとうとう外国人が日本人の人口を抜き、2019年には外国人比率が54.5%に達した。
現地や川口市役所などで取材したところ、住んでいる日本人は高齢者が多く、外国人のなかでは中国人比率が60%を超えているそうだ。「中国人が90%」と書いてある記事もあるが、そこまではいないという。
中国人は子どもの教育に関心が高く熱心だ。実は芝園団地には、日本で生まれたり日本にきたりして中国の言葉を忘れさせないため、子女たちが通う補習校の分校があった。
現在は生徒数が多くなり、団地近くに移転した。その補習校自体は関東を中心に10校以上あり、1500人の子どもたちが通っている。ニーズのないところに開校はしないので、これから違う街にも多くの新チャイナタウンが生まれるであろう。
川口芝園団地自治会は、2018年多文化共生の優秀な事例として、独立行政法人国際交流基金から「地球市民賞」を表彰された。交流イベントの開催、中国語のSNSを活用した情報発信など、自治会の地道な取り組みの結果、中国人の自治会役員も誕生し、共生の意識の根付く活気にあふれる団地が受賞理由だ。
川口市では2018年度からスタートする「第2次川口市多文化共生指針」を策定。外国人労働者を地域の担い手として受け入れる方針を打ち出した。
日本の総人口は長期の減少過程に入り、2029年に人口1億2000万人を下回った後も減少を続け、2053年には1億人を割り9924万人となり、いまから45年後の2065年には8808万人になると推計されている(内閣府「令和元年版 高齢社会白書」)。
そのとき、日本にはどのような多文化、共生がはかられているのであろうか。【7月14日 新山 勝利氏 東洋経済ONLINE】
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こういう記事を目にしたとき、「日本はどうなってしまうのか!」とネガティブに反応する人々も多いことでしょう。
私などは、逆に「日本語NG店? 面白そう。日本国内で外国気分が味わえるじゃない」なんて考えてしまいます。
もちろん、外国人が増加していくことは多くの問題を惹起します。「共生」に向けては多大な努力が必要です。それは当然のことです。
ただ、ネガティブな反応からは憎悪しか生まれませんが、ポジティブに向き合えば、なんらかの共生に向けた道筋も開けるのでは・・・とも考えます。
また、外国人をトラブルメーカーに追い込む一番の理由は、周囲のネガティブな反応だと思っています。
何よりも、「ここは我々の土地だ。よそ者は来るな!国に帰れ!」というのは、自らの品性を卑しめる言動に思えて、愛する日本がそんな偏狭で卑しい国になってほしくないと思っています。