孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン・ホルムズ海峡の緊張 英新首相はアメリカとの連携へ? UAEはイランとの関係探る

2019-07-31 23:19:22 | イラン

(イラン港湾都市バンダルアバス沖に停泊する英船籍のタンカー「ステナ・インペロ」を監視するイラン革命防衛隊(2019721日撮影)【7月23日 AFP】)


【進まない米主導有志連合構想に、アメリカは圧力を強化 イギリスはアメリカとの連携の方向へ?】

アメリカ・トランプ政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想を進めていますが、実質的にアメリカ主導の「イラン包囲網」となるため、日本や欧州各国の対応は慎重です。

 

****米、有志連合協力要請強める=日本を名指しでけん制***

トランプ米政権は中東ホルムズ海峡の安全確保を目的とする有志連合構想について、日本などの同盟国を中心に協力要請を強めている。「イラン包囲網」の色彩を帯びる米国主導の有志連合への支持が広がらず、焦りを見せているためだ。

 

トランプ大統領は26日、ジョンソン英首相、フランスのマクロン大統領と電話会談しイラン情勢について協議。有志連合への協力を求めたとみられる。

 

ポンペオ国務長官は25日、FOXニュースのインタビューで、日本や英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、韓国、オーストラリアの国名を挙げ、有志連合への参加を迫った。

 

トランプ政権は25日、各国に対して有志連合構想に関する2回目の説明会を行ったが、米主導の構想を敬遠する国も多いのが実情だ。ポンペオ氏は具体的な国名を名指しすることでけん制する狙いもあったとみられる。

 

岩屋毅防衛相が26日、「(説明会の)報告をしっかり聞いた上で、どう対応すべきか検討したい」と述べるにとどめるなど、日本政府は有志連合への参加を明言していない。【7月27日 時事】 

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欧州各国は、イランとの核合意維持を重視する立場にあり、アメリカ主導の「イラン包囲網」に加わることでイランを刺激することを避けたい思いがあります。

 

一方で、イランとのタンカー拿捕合戦を繰り広げているイギリスが提唱する「欧州による船舶保護」構想も具体化しておらず、イギリスは独自に軍艦をホルムズ海峡に派遣しています。

 

****米主導の「有志連合」 欧州は様子見 対話を重視****

中東ホルムズ海峡で米国がタンカー護衛の「有志連合」を呼びかけたのに対し、イラン核合意の維持を掲げる英独仏3カ国は様子見の態度を続けている。

 

英前政権が提案した「欧州主導の船舶保護」は具体化しないまま。3カ国は米国の圧力に加わってイランを刺激することを避けつつ、対話による緊張緩和を探っている。

 

英国のジョンソン新首相は、トランプ米大統領から「素晴らしい首相になる」と期待されたが、イラン問題では慎重だ。両首脳は26日の電話会談でペルシャ湾情勢に触れた。英政府は2人が「パートナー国を交えて共に取り組む」必要性で合意したと発表しつつも有志連合への言及は避けた。

 

ラーブ英外相も英紙タイムズのインタビューで「欧州による取り組みは米国の支持がないとうまくいかない」と述べたが、有志連合には触れずじまいだった。

 

一方、独仏両国はイランとの外交に専心する。マクロン仏大統領は23日、イランのアラグチ外務次官とパリで面談し、ロウハニ大統領のメッセージを受け取った。最近の米欧では、イランとの最も高位の接触になった。

 

「欧州による船舶保護」構想では、パルリ仏国防相が仏紙との会見で、英独と情報共有などを協議中だとした上で「緊張を高めるような仏軍派遣は行わない」と明言した。

 

ドイツのクランプカレンバウアー国防相も「現在、重要なのは軍事より外交だ」と発言。欧州の取り組みについても、参加検討は「中身が分かってから」と述べるにとどめた。

 

欧州側が慎重なのは、武力行使の示唆で威嚇しながら対話を探るトランプ政権の手法に戸惑っているためだ。ポンペオ米国務長官は26日、米メディアで「イラン国民に呼びかけるため、必要があれば喜んで訪問する」と述べたが、イランは米国の圧力に強硬姿勢で応じており、対話実現の見通しは立っていない。

 

欧州による船舶保護が実現しない中、英国は単独で英船籍タンカーの護衛を行っている。英国防省は28日、駆逐艦「ダンカン」のペルシャ湾到着を発表。フリゲート艦「モントローズ」と共に護衛に当たる。イラン政府報道官は28日、欧州による護衛船派遣は「敵対的なメッセージになる」として反対した。

 

イラン核合意に参加する英独仏と中国、ロシアの5カ国とイランは28日、ウィーンで高官協議を実施。ロウハニ師は同日の声明で、ジョンソン氏の英首相就任を祝福し、テヘラン訪問を呼びかけ、欧州との関係改善を図ろうとしている。【7月29日 産経】

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アメリカは欧州各国に働きかけを強めており、トランプ大統領が称賛するジョンソン英首相はアメリカと連携する方向に転じたようです。ドイツは国内に意見の対立があります。

 

****ペルシャ湾の安全確保・英国は米国との連携の意向****

米国はドイツに対して航行の安全確保への任務への協力を公式に要請した。


ホルムズ海峡は石油の海上輸送の要所ですでにいくつものトラブルが発生。

最新のトラブルは英国タンカーがイラン革命防衛隊に拿捕された事件で英国政府は当初、ヨーロッパ独自の護衛活動を求めていたがジョンソン新首相は米国と連携する意向。

米国はここにきてドイツへの圧力を強めている。
ドイツ連立政府内では海軍の派遣に対して意見が大きく分かれている。有志連合への参加要請は党にきており連立政府はこれを拒否してきた。

SPDはイランへの圧力を最大限に高めようとする米国の戦略に参加する意思はなく最終的に戦争に巻き込まれるとの懸念があるから。
CSUはヨーロッパによるミッションに賛成しておりドイツは海上輸送の安全確保に寄与すべきとの意見。【7月31日 NHK・BS1】

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もっとも、このジョンソン新首相の“米国と連携する意向”に関しては、他の記事ではまだ見ていませんので、詳細は知りません。まあ、トランプ大統領と似た者同士ですから、ありえる話ではありますが。

 

【湾岸諸国ではUAEがサウジとの連携を見直し、イランとの関係を模索する方向へ】

一方、「イラン包囲網」の一翼を担う中東湾岸諸国のなかで、サウジアラビアとともに主導的な立場にあったUAEがイランとの関係を模索する方向に転じています。

 

****サウジ・UAE連合に亀裂、転変する緊張のペルシャ湾****

(中略)

UAEの離反

トランプ政権はこうしたイラン包囲網の一環として、サウジアラビアに16年ぶりに駐留部隊を派遣することで、サウジからの合意を取り付けた。すでにプリンス・スルタン空軍基地には米軍の戦闘機や部隊の一部が到着した。

 

サウジはメッカなど聖地を抱える「イスラムの守護者」。異教徒の駐留には一部から強い反対がある。

 

湾岸戦争の際には、王国指導部が米軍の駐留を許したことに反発が広がり、その急先鋒だったオサマ・ビンラディンがサウジを追放され、後に国際テロ組織アルカイダを創設したのはよく知られているところ。

 

今回の米軍駐留はサウジを牛耳るムハンマド皇太子とトランプ政権との親密な関係の上に実現したが、サウジ国内に新たな火種が生まれたことは確かだ。

 

こうした米国とサウジアラビアにとって実は深刻な事態が進行中だ。それは対イラン政策でサウジとタッグを組んできたUAEが離反の動きを見せていることだ。

 

例えば、UAEはムハンマド皇太子主導のイエメン戦争で、5000人の部隊をイエメンに派遣し、戦闘を主導してきた。

 

そもそもイエメン戦争はイラン支援の武装組織フーシ派がイエメンの実権を握ったことにサウジアラビアが反発して本格的に軍事介入。サウジが主に空爆を担ったのに対し、UAEは“兄貴分”のサウジの求めに応じて空爆の他、地上部隊を派遣して血を流した。

 

だが、UAEはこの1カ月で部隊の撤収を開始、イエメン派遣部隊を大幅に削減しつつある。「勝利できない戦争に巨額の戦費と兵力を割くことに嫌気が差した」(専門家)とされるが、実際には、ホルムズ海峡の安全航行が不安定になり、石油輸出に影響が出ることを恐れ、イランとの関係改善を図る思惑が背景にあるようだ。

 

UAEのアブドラ外相は先月、ペルシャ湾で相次いだタンカー攻撃について、「誰がやったかは明確で、確実な証拠が必要だ」として、米国やサウジアラビアが主張するイラン犯行説に大きな疑問を呈した。

 

レバノン紙によると、UAEはイランに代表団を送って航行の安全やイエメン戦争からの撤退について秘密交渉も行ったとされ、イラン包囲網の一角に穴が開きそうな雲行きだ。【7月21日 WEDGE】

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UAEとイランの関係調整については、下記のような動きも報じられています。

 

****イランとUAE、30日に海の安全保障協議を再開=学生通信****

イラン学生通信(ISNA)によると、イランは30日、伝統的に対立しているアラブ首長国連邦(UAE)との間で、海の安全保障に関する協議を再開する。明らかにペルシャ湾の緊張緩和の意図があるとみられているが、湾岸当局者は、協議は定例のもので技術的としている。

協議は2013年以来中断しているが、同地域でUAEは安全なビジネスハブとしての地歩を守りたい意向とされている。

ISNAは、「第6回協議は30日、イランを訪れているUAE沿岸警備当局者の代表7人とイラン当局者により、テヘランで行われる」と伝えた。

ISNAは情報源を明かさず、協議では国境や双方の市民の行き来、不法入国などの問題が議題になる見通しと伝えた。

湾岸当局者は、この協議は地域の緊張とは無関係と述べた。【7月31日 ロイター】

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イランとの関係改善に転じたUAEの“現実主義”については、以下のようにも・

 

****ホルムズ海峡の緊張****

(中略)
他方サウディと並んで対イラン最強硬派(何しろ彼らの立場からするとその島3つをイランに占領されている…勿論イランは自国領としている・・ことから当然か!しかし、そこは湾岸商人的というべきか、その様な建前とは別に、これまでもイランとの密輸で大儲けをしてきたのはドバイ商人等のUAE人。外貨及び貴金属等の密輸に始まり何でも密輸しているはず)のUAEに関して現実主義的というか、イランとの関係で興味深い記事があるので取り敢えず

・一つは、UAE沿岸警備隊司令官のイラン訪問で、同司令官は30日、軍事ミッションを率いてテヘランを訪問し、イラン沿岸警備隊司令官と会談した由。
両国は湾岸の安全航行問題について協議する由なるも、具体的な会議の日程は不明

・もう一つはal qods al arabi netの報じる両国間銀行(金融面)での協力です

記事はイラン金融連盟会長が30日、UAEの2つの銀行が、金融面でのイランとの協力の用意があることを表明したが現時点では実施に至っていないと語ったと報じています。

同会長は、UAEの銀行(複数)は対イラン制裁のために、西部アジアでイランが金融市場を利用できない問題で、イランと協力する用意があると語った由。またUAEに代えてオマーンを使うことも検討されたが、オマーンは国際社会でそれほどの信頼性がない由。

同会長は、イランの会社や両替商は、これまでの経験や関係から、UAEを使うことを希望しているとした由。
記事はさらに最近もイランとUAEが金融面で協力するとのうわさが流れていたとしてます(後略)【7月31日 「中東の窓」】
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イランはカタールとはすでに緊密な関係にありますので、UAEとの関係が改善すれば、湾岸諸国において「イラン包囲網」に大きな穴をあけることにもなります。

 

UAEの方針転換は、サウジ主導の大規模空爆にもかかわらず戦況が膠着しているイエメン情勢にも大きく影響しそうです。

 

サウジが米軍駐留を受け入れたのも、そうした危機感が背景にあります。

 

****イエメン内戦「泥沼化」 サウジ皇太子にもたらす危機****

イエメン内戦への軍事介入を主導してきたサウジアラビアのムハンマド皇太子が危機に直面している。サウジとともに戦ってきたアラブ首長国連邦(UAE)がイエメンの前線から撤収し始め、内戦での勝利が難しくなったからだ。

 

内戦はサウジなどがイランの影響下にあるイスラム教シーア派民兵組織、フーシ派と戦う構図。サウジが、皇太子の面目が傷つく形で撤退するとは考えにくく、米国にとってのベトナム戦争と同様、サウジの国力を衰退させかねない事態となっている。

 

サウジやUAEは2015年、フーシ派と敵対する暫定政権を支援し内戦に介入。ロイター通信は今月中旬、バベルマンデブ海峡に近いイエメン中部ホデイダ港周辺の軍事拠点2カ所の指揮権がUAEからサウジ側に移譲されたと伝えた。

 

サウジはイエメンと長さ1300キロもの国境を接し、無人機によるフーシ派の越境攻撃も続く。UAEと違い、内戦はサウジの安全保障に直結している。

 

こうした中、19日にはサウジが同国内への米軍駐留を承認したと報じられた。米軍のサウジ駐留は約16年ぶり。イランやフーシ派に対する米、サウジの強い危機感がうかがえる。

 

ただ、米紙ニューヨーク・タイムズは20日付で、皇太子が米国に特殊部隊や軍事顧問の派遣などの支援を求めてきたとの外交筋の見方を伝えた。地上戦を担ったUAE軍に対し、空爆が主任務だったサウジ軍の指導力には、共闘する民兵組織からも疑問の声が出ているという。

 

自尊心が高いといわれるムハンマド皇太子の性格からみても、サウジが“負け戦”の印象のまま内戦から撤収する事態は想定しがたい。半面、戦闘を継続すれば戦費がかさみ、原油依存からの脱却を図る構造改革の停滞は免れない。

 

皇太子はかつて改革の旗手として脚光を浴びたが、王族や富豪らを汚職罪で一斉摘発したり、反体制記者殺害事件への関与も疑われたりしてクリーンなイメージは失墜。泥沼化するイエメン内戦での勝利に固執し続ければ、石油大国サウジの国際的な評価を下げる結果にもなりかねない。【7月26日 産経】

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