孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  再び「ダイヤモンド・プリンセス」号の悪夢 当局は対応に苦慮 米本土でも感染拡大

2020-03-06 23:09:04 | 疾病・保健衛生

(2月11日、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジのそばを通る「グランド・プリンセス」【3月6日 朝日】)

【アメリカでも大型クルーズ船の問題が 「すべての乗員を隔離収容する施設がない」】
横浜沖に停泊した「ダイヤモンド・プリンセス」と同じ会社の姉妹クルーズ船が、新型コロナウイルス感染者を乗せた状態でサンフランシスコ沖に停泊しており、日本のときと同様、当局は対応に苦慮しています。

*****米もクルーズ船100人を緊急検査 死者が下船者と判明****
新型コロナウイルスを巡り、米カリフォルニア州で4日に初めて死亡が確認された男性がクルーズ船からの下船者だったことがわかり、米当局が5日、このクルーズ船をサンフランシスコ沖に停泊させて、感染の可能性がある約100人の乗客らの緊急検査に入った。数時間で検査結果を出す見込みで、その後対応を検討するという。
 
死亡したのは同州の71歳の男性で、2月にサンフランシスコからメキシコに行くクルーズ船「グランド・プリンセス」に乗船。同州に戻った際に下船していた。
 
クルーズ船は4日にサンフランシスコ港に到着する予定だったが、死者の判明を受けて、カリフォルニア州当局などが沖合に停泊させていた。
 
州当局や米疾病対策センター(CDC)は5日朝、クルーズ船にヘリコプターで検査キットを送った。船を運航する米プリンセス・クルーズ社によると「100人に満たない数の乗客や乗務員」が検査されるという。

米メディアによると、乗客11人と乗務員10人にかぜのような症状が出ている。約2500人の乗客の半数以上は同州民だ。
 
プリンセス・クルーズ社は、日本で横浜沖に停泊した「ダイヤモンド・プリンセス」も運航していた。日本同様の事態に、米国内でも関心が高まっている。
 
カリフォルニア州では4日時点で、感染者数は53人、死者は1人。ニューサム同州知事は4日、同州に非常事態を宣言していた。【3月6日 朝日】
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乗客2500人ということで、日本の「ダイヤモンド・プリンセス」のときと同様、収容隔離施設がないことがネックとなっています。

****新型コロナ 米クルーズ船乗客収容には限度 米高官が懸念****
米西部カリフォルニア州沖で乗員・乗客に新型コロナウイルスの感染症状が出ていることが明らかになったクルーズ船「グランド・プリンセス」への対応をめぐり、米国土安全保障省の高官は5日、上院委員会の公聴会で、すべての乗員を隔離収容する施設がないことを明らかにした。

(中略)グランド・プリンセスの乗客は約2500人で、乗員・乗客約20人が感染が疑われる症状を訴えている。

公聴会では「(検査で)陽性反応が出れば、全員を一緒に乗船させておくのは適切ではない」(ハッサン上院議員)などと懸念が噴出した。

これに対し、国土安全保障省のケネス・クチネリ副長官は「一度に検疫を行う能力に誤解がある」と述べ、設備対応には限界があると訴えた。

(中略)同船にはヘリコプターで運ばれた検査キットと米疾病対策センター(CDC)の担当者が下ろされた。CDCの指示でカジノが閉鎖されるなど人が集まる催しが中止されているという。
 
「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは船内での感染拡大を防げず、米国内でも批判が起きたこともあり、米当局は難しい対応を迫られそうだ。【3月6日 産経】
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【船内での感染症は「負け戦」を覚悟しなければない そうであれば・・・】
ダイヤモンド・プリンセス号の経験に関してはいろんな意見があるところでしょうが、下記のような記事が。

****クルーズ船の重い教訓****
ダイヤモンド・プリンセス号の隔離は「失敗」だつたのか 感染症対策の第一人者が語る危機管理の理想と現実 

日本は、新型コロナウイルスの封じ込めに失敗したのだろうか。
  
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号(以下、クルーズ船)は、横浜港で2週間にわたり乗船客を隔離し、2月19日から乗客を下船させたが、2月28日現在、乗客と乗員3711人中700人以上が新型コロナウイルスに感染し、6人の死者が報告されている。

なぜもっと早期に下船させなかったのか、船内の感染症対策が不十分だったのでは? などさまざまな批判が国内外から出ている。
 
災害対策や危機管理は「最悪の事態を想定する」ことから始まる。(中略)
 
水際対策には意識を高めるなどの効果はあるものの、海外から日本への感染症侵入を防ぐことはほぼ不可能だ。世界のどこかで感染症が流行した場合、日本に来るか来ないか、いかに水際で防ぐかよりも、日本に侵入することを前提に準備と対策を進めなければならない。
 
今回、船舶の特殊性と感染症の威力を知っている海上自衛隊の専門家や船医と話していて、われわれが共通に感じたことは、大型クルーズ船で1人の乗客が新型コロナウイルスに感染していたことを知った時点で、誰もが「負け戦」を覚悟したことだ。(中略)

今回は船内である。船は特異な閉鎖環境であるだけでなく、陸上施設にはあり得ない特殊な面、例えば、艦内を循環する空気、上水・下水、豪華客船とはいえ乗務員の活動・生活エリアは狭く入り組んだ環境、居住区においても人と人の距離が近い、などの特徴がある。

感染管理において多くの阻害因子があるのだ。
 
さらに、24時間常に誰かが動いていなければ成り立たず、船長は絶大な権限を持ち、乗客と乗務員との関係性が難しいなど、オペレーションも一筋縄ではいかない。(中略)

このような船舶のリスクを考えると、早急に全員を下船すべきだった、との批判は正当に聞こえる。私も初めはそう思った。対策担当者もその可能性を探った。

しかし、頭で考えるほどオペレーションは生易しいものではなかった。

人類史上初の出来事だった
その理由として、まずこのクルーズ船は英国籍であり、横浜港に入港する2月3日までは介入できず、2月6日の接岸後も船長と船会社の意向を尊重しなければならなかった。
 
下船のため、外部の宿泊施設や搬送方法を検討したところ、乗客・乗務員の数が数百人規模であれば実施可能であったが、3000人以上のオペレーションは不可能であった。

風評を恐れて、受け入れてくれる民間施設はなかなか見つからない。国や公共の施設にも限りがあった。搬送するために必要な数のバスもチャーターできない。
 
個人間の感染防御対策を考えると、この搬送自体にリスクがある。2月5日には感染者10人が確認され、検疫開始前に既に船内で感染が拡大していたことが判明した。バスの移動でさらに拡大する恐れがあった。
 
仮に下船させれば、症状がないからと、検査もせずに勝手に日本国内または海外を公共の交通機関で移動する者も出てくる。法制度上、一度下船させると、検疫のためにどこかに強制的に停留させることはできない。3000人以上の行動を追跡することも難しい。
 
もしあの時下船させていれば、現在よりも国内外に感染が拡大した可能性がある。そこで下船を諦め、可能な限り、隔離と昼夜を徹した感染者・急患の搬出を継続することになった。苦渋の決断だったようである。
 
では、結局、14日間の停留期間で船内での感染拡大は防げたのか。日本政府の対策は間違っていたのかについて、議論が起きている。(後略)【3月10日号 國井修氏 Newsweek日本語版】
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上記記事は、この後「オペレーション」の重要性に関して議論が展開されますが、ここでは割愛しました。

筆者の國井修氏は元長崎大学熱帯医学研究所教授で、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)戦略投資効果局長ということで、感染症対策の第一人者ということですから、その意見は尊重されるべきでしょう。

同氏の状況認識としては、できれば速やかに下船させることが望ましかったが、現実的制約でそれはできなかった。
対応に当たった者は、「過酷な環境でよく頑張った」という評価のようです。

ただ、素人的にはやや違和感も。

同氏が“大型クルーズ船で1人の乗客が新型コロナウイルスに感染していたことを知った時点で、誰もが「負け戦」を覚悟した”認めているように、船内という環境は圧倒的に不利な状況であり、そこでいくら頑張っても限界があります。

ですから、まず取り組むべきは、状況を船内から陸上に移すことでしょう。

「そうしたいが、現実的な制約で・・・」というのはどうでしょうか?

乗客・乗務員3000人以上の生命が危険にさらされており、同時に対応を誤れば、国内に感染が拡大して悲劇的な事態にもなりかねない・・・という状況にあっては、平時の規則・ルールに従うだけでなく、場合によっては規則・ルールを変えてでも対応するという「政治的指導力」が求められるようにも思います。

要請に従わない者がいれば、首根っこを押さえつけても・・・といった「腕力」も。その責任は後でとることに。

隔離施設にしても、3000人超を一箇所で収容はできませんので、全国各自治体に「割当」て、小さなグループに分散する形で。

地方にはそういった隔離施設がない・・・というのは、事前に完璧を求める日本人の欠点です。
この際、山奥の廃校でも何でもいいのでまず隔離して、その後の対応は「走りながら考える」し、まずければいくらでも変更・修正するという形でいいのでは。

中国の1週間ほどで1000床規模の病院をつくってしまう「馬力」は参考にすべきでしょう。

とにかくどんな無理をしてでも、「負け戦」を覚悟しなければならない「船内」という環境を、きちんとした隔離が可能な陸上に移すことに努力を傾注すべきではなかったのか・・・と、私は思います。

サンフランシスコ沖のクルーズ船「グランド・プリンセス」について言えば、船内で全員を一緒に乗船させておくのは適切ではないとの指摘は当然で、隔離収容する施設がないなら、広いネバダ砂漠にでも簡易施設を応急的につくればすむ話でしょう。アメリカは日本と違って、「人里離れた土地」はそこら中に余っています。(おそらくその大部分は国有地)

まあ、素人はそんな風に考えてしまうのですが・・・。

【対岸の火事から、尻に火が付いたアメリカ】
クルーズ船「グランド・プリンセス」の件以外でも、アメリカはこれまでの「対岸の火事」的な姿勢を転換せざるを得ない状況になっています。

****新型コロナ、対岸の火事から一気に危機感強める米国****
アメリカ海軍当局は米大平洋艦隊艦艇(最近、アジア地域に寄港した艦艇)に対して、14日間にわたる自己検疫隔離措置を下命した。

韓国や日本やシンガポールをはじめとするアジア太平洋沿岸諸国に寄港した場合、艦艇に乗り組んでいる将兵が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患している可能性が否定できないからである。

そのため、該当する軍艦は今後少なくとも2週間はどこにも寄港せずに海上を遊弋(ゆうよく)していなければならない、ということになった。

アメリカでは遠いアジアの出来事
アメリカ海軍当局による自己検疫隔離措置は、太平洋とインド洋を主たる活動範囲にしている大平洋艦隊(第7艦隊、第3艦隊)に所属している艦艇に対するものであって、現在のところ大西洋や地中海を主たる活動範囲とする艦艇に対しては発せられていない。
 
このことは、米海軍当局だけでなくアメリカ公衆衛生当局をはじめとするアメリカ政府、そしてアメリカ一般社会での、今回のCOVID-19に対する初動対応(初期における危機意識)の特徴を如実に表している。

それは一言で言うならば、「新型コロナウイルスの感染拡大は遠いアジアでの出来事であり、アメリカはそれほど危険ではない」という意識があったことだ。

すなわち、いまだにヨーロッパ系を祖先とする人々が多くの社会中枢を担っているアメリカ社会の底流に存在している意識である。(中略)

CDCも当初は「インフルのほうが危険」
もし、COVID-19の発生と初期段階での感染拡大が、中国、香港、シンガポールをはじめとするアジアではなく、イタリアやフランスなどのヨーロッパ(とりわけ西欧)地域であったならば、アメリカ公衆衛生局を中心とする米政府当局やアメリカ社会のCOVID-19に対する初期段階での反応と公的対応は、大きく違ったものであったことは間違いない。
 
しかし、新型コロナウイルス(当初は「武漢ウイルス」などと呼ばれていた)が発生した場所は中国武漢の不衛生きわまる海鮮市場であるとされ、衛生観念に乏しい(とアメリカ社会では考えられている)中国で感染が急激に拡大し、やはりアメリカ社会では衛生レベルが低いと考えられているアジア諸国に感染が拡大していった。
 
そのため、公衆衛生や感染症対策の専門家をズラリと揃えたCDC(疾病予防管理センター)であっても、「一般のアメリカ国民にとっては、COVID-19よりもインフルエンザのほうがはるかに危険である」との立場を取っていた(CDCはアメリカ公衆衛生局内の重要機関で、感染症に対する危機管理と被害管理のエキスパート集団である)。
 
トランプ政権もCDCの見解をもとにして、当初はCOVID-19に対して厳戒態勢を固めなかった。ただし、実際に多数の感染者や死者が発生している中国からの渡航制限だけは、比較的早期の段階で打ち出した。日本とは異なり、入国制限の対象を湖北省に滞在した者のみにとどめなかった。

アメリカの航空会社(アメリカン、デルタ、ユナイテッド)も日本の航空会社とは違い、中国便を早々と運休にしてしまった。このように、米政府や航空会社は中国との出入りを大幅に制限したため、専門家以外の一般の人々は一安心といったところで、COVID-19にはさして関心が払われなかった。

ハワイ帰りの日本人夫妻が発症
ハワイ滞在者の感染が発覚した際も、アメリカで特に関心が高まることはなかった。(中略)

ハワイの一部ではCOVID-19に対する不安が生じていたが、ハワイ州自体がアメリカ全体から見れば「太平洋の彼方に浮かぶ基地がある島」程度の存在であり、COVID-19への危機感がアメリカ全体に広がるには至らなかった。

ワシントン州で死者続出、危機感が高まる
(中略)ダイヤモンド・プリンセスに対する日本政府の検疫停留措置の「歴史的失敗」(アメリカの専門家の多くは、そのように断定している)は、「COVID-19の感染拡大は中国や日本などアジアでの出来事であり、中国からの渡航を大幅に遮断してしまったアメリカにはさしたる影響はない」といった無関心にもとづく希望的感覚を増長させてしまった。
 
しかし、2月29日から3月2日にかけて、アメリカ西海岸のワシントン州シアトル郊外で続けて6名がCOVID-19で死亡したことが確認されると、アメリカ国内では急激にCOVID-19に対するパニックに近い危機感が発生した。

そしてここにきて、韓国やイタリア、日本などをはじめとする「エピセンター(感染源)国」でのCOVID-19に対する防疫措置に対する関心も急速に高まっている(日本時間3月4日時点で、ワシントン州では9人の死亡が確認されている)。(後略)【3月5日 北村 淳氏 JBpress】
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感染は西海岸だけでなく、東海岸にも拡大しつつあります。

****アメリカ 東海岸でも感染者増加 全米で対策急務に****
アメリカでは、首都ワシントンに隣接する東部メリーランド州で新型コロナウイルスの感染者が新たに確認され、州内に非常事態宣言が出されました。感染者は西海岸にとどまらず、大都市が連なる東海岸でも増え始めており、全米で感染拡大の防止が急務となっています。

東部メリーランド州のホーガン知事は5日、記者会見を開き、首都ワシントンに隣接するモンゴメリー郡で、70代の夫婦と50代の女性の合わせて3人が新型コロナウイルスに感染していることが新たに確認されたと発表しました。

これに合わせてホーガン知事は、感染拡大を防ぐ対策を速やかにとれるよう、州内に非常事態宣言を出すとともに、日本円で10億円余りの緊急予算を組むことを明らかにしました。

アメリカCDC=疾病対策センターの集計では、4日までに全米で少なくとも99人が感染し、10人の死亡が確認されており、西部ワシントン州やカリフォルニア州ではすでに非常事態宣言が出されています。

一方、東海岸でも、ニューヨーク州やフロリダ州など7州で感染者が確認され、このうち、ニューヨーク市では、地下鉄などの公共交通機関で定期的に消毒が行われるなど警戒が高まっています。

CDCは、医師の同意があれば呼吸器系の症状がある患者は新型ウイルスの検査を受けられるようガイドラインを改定しましたが、検査を行う施設や資材の準備が全米に行き渡っておらず、態勢の整備が急務となっています。【3月6日 NHK】
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“米国も圧倒的なマスク不足に、備蓄が必要数の15%”【3月6日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
準備不足・態勢の遅れは、日本同様の状況のようです。

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