孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナは「不平等のリトマス紙」 弱い立場の人々へのケアが社会全体のリスクを軽減

2020-03-22 22:57:55 | 疾病・保健衛生

(米ニューヨーク・マンハッタンのタイムズスクエアで道路を横断する料理宅配業者の配達員(2020年3月17日撮影)【3月19日 AFP】)

【アメリカ・欧州も“公平”にウイルスの脅威に直面】
新型コロナウイルスの世界各地での感染拡大に歯止めがかかりません。むしろペースが速まり、今後の更なる悪化が懸念されています。

****新型コロナ、感染者30万人超える 増加ペースが加速****
新型コロナウイルスの世界の感染者数が22日、累計で30万人を超えた。米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターが世界保健機関や各国政府の発表をもとに集計した。

感染者数は、中国が初めて感染を確認したとする日から約3カ月後の今月7日に10万人を超え、その11日後に20万人、さらに4日後に30万人に達した。増加のペースが加速している。
 
同センターによると、日本時間22日午後5時現在で感染者は約170の国・地域に広がり、計30万7280人に上った。死者も1万3千人を超えている。(後略)【3月22日 朝日】
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感染者数の多い国には、中国・韓国、そしてアメリカや欧州の国々が並んでいます。
世界でもっとも強大で、もっとも豊かな国アメリカもウイルスの攻勢に脅かされています。

****米の新型コロナ感染者、2カ月で65万人に拡大も=症状軽く気付かず―コロンビア大****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は20日、コロンビア大学の研究者の分析に基づき、今後2カ月で米国の新型コロナウイルス感染者が65万人に上る可能性があると報じた。感染の爆発的拡大を防ぐため、厳格な社会的接触の制限が必要と訴えている。
 
研究者は米国内の感染状況を分析した同紙のデータベースを利用。症状が軽いため感染に気付いていない「隠れ感染者」が、確認されている感染者の11倍に上るという。

こうした隠れ感染者が、感染を急速に拡大させており、政府の対策で感染率を半減させたとしても今後2カ月で65万人が感染すると見積もられている。(後略)【3月21日 時事】 
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今回の新型コロナウイルス感染について、“敢えて”まだましな面、救われる面を探せば、災難が特定の弱者・貧しい国に集中するのではなく、アメリカ・欧州を含めて全世界が“公平”に、その脅威に直面しているということでしょうか。もちろん“敢えて”言えばの話ですが。

【しかし、感染しやすい職業や立場の人が存在する「不平等のリトマス紙」】
しかし、その内実を見ていけば、やはり災いには“公平”“平等”ということはなく、世の中のすべてがそうであるように、現実には特定の弱者がより大きな危険にさらされています。

****新型コロナ感染症は「不平等のリトマス紙」なのか****
感染しやすい職業や立場の人にもケアを、米では1440万人がリスクの高い職業に

(中略)しかし、新型コロナのアウトブレイク(集団発生)や過去の研究からは、特定の職業の人やホームレス状態にある人、貧困層にとって、感染を防ぐのは容易ではないことがわかっている。 

新形コロナウイルスに感染しやすい人々は 
米ワシントン大学の推定によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しやすい職業に従事している人は、米国に1440万人もいる。 
 
当然ながら、医療従事者は感染リスクが最も高い。(中略)
 
このほかにも、週に1度、月に1度程度の頻度で、高い感染リスクに見舞われるグループも数多く存在する。例えば、警察官、消防士、交通機関の保安検査官、ベビーシッターや介護助手のようなケアワーカーのほか、クリーニング店の従業員、廃水処理業者、歯科技工士といった人たちだ。 
 
人種や民族の問題も挙げられる。例えば、2009年のH1N1型インフルエンザのパンデミックの際に行われた米国内の調査では、「自分の仕事は職場でしかできない」あるいは「7〜10日間仕事を休んで家にいることは難しい」と答えたスペイン語を話すヒスパニック系の人々の割合が、白人や黒人と比べてはるかに高かった。また、黒人とヒスパニックの多くは「公共交通機関を利用しないことは難しい」と答えた。 
 
この研究を主導した米メリーランド大学のサンドラ・クイン氏は、低所得労働者の感染リスクが高い現状を懸念している。低所得者の場合、比較的混み合った環境で暮らしている、仕事を休むことが難しい、未治療の基礎疾患があり新型コロナ感染症が重症化しやすいなどの事情を抱えがちだからだ。 

「新型コロナウイルスの流行は、社会の中で最も弱い立場にある人たちにとって、とりわけ大きな打撃となるでしょう」と、クイン氏は言う。」(中略)
 
現在、米国でも新型コロナウイルスが拡散しつつある。そしてそこは、人種的・民族的少数者や農村部の市町村などが、すでに深刻な医療格差の犠牲となっている国だ。 
 
ワシントン州シアトルの大学地区にあるフードバンクの入り口には、現在、手洗い所が設置されている。このフードバンクは毎週約1300家族に食料を提供してきた。

責任者のジョー・グルーバー氏によると、コロナウイルス危機が始まってからも、訪れる人が減っている様子はないという。しかし、フードバンクで働くボランティアの約3人に1人は高齢者であり、自分の健康を守るためにシフトを抜けることを選んだスタッフもいる。 

「わたしたちは、社会的な立場が弱いたくさんの人々と繋がっています。通常のサービスをできるだけ長く維持するにはどうしたらよいかを考えることは、非常に重要です」と、グルーバー氏は言う。 
 
シアトルでは、ホームレスの人々が特に大きな懸念事項となっている。米国にとって新型コロナウイルスの被害が最も深刻な地域であるだけでなく、ホームレスの人口が最も多い街のひとつでもあるからだ。

シアトルに1万1200人存在するホームレスの大半は屋外で寝起きしている。そして彼らの多くが高齢者や、慢性的な健康問題を抱えている人々だ。 

「ホームレス状態にある人が、自分の健康を管理することは不可能です。通常の状況であってもそうなのですから、感染症が流行すればひとたまりもありません」。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校社会的弱者センターの責任者で、医学教授のマーゴット・クシェル氏はそう語る。 
 
カナダでSARSが流行した際、ホームレス支援機関は、清潔で安全な日用品を確保するのに苦労した。明確な衛生ガイドラインもなかった。すでにSARSの主要な症状が複数現れている人も多く、スクリーニング検査は一筋縄ではいかなかった。病気になったホームレスの人たちをどこへ、どのように隔離すればいいのかもわからなかった。 
 
感染症は「不平等のリトマス試験紙のようなもの」だと、米ミシガン大学の疫学の助教、ジョン・ゼルナー氏は述べている。

「社会的距離」を保てない人々にもケアを 
(中略)多くの職場や街の中心部では、「社会的距離の確保」という方法が採用されている。これは人と人との距離を取って、ウイルスの拡散を遅らせることを目的としている。(中略) 

一方で、この街でも特に貧しく弱い立場になる住民は、常に他の人々と距離を保てるわけではない。そして、ウイルスへの感染が拡大するにつれて、シアトルはそうした人々をケアするために何ができるかという問題に直面することになる。 
 
3月5日に行われた記者会見で、ワシントン州知事ジェイ・インスリー氏は、保険に加入していない人たちの新型コロナウイルス検査費用を州が負担すると述べた。州保健委員会はまた、保険会社に対し、検査費用の自己負担分を免除するよう命じている。

新型コロナ流行地域では、医師がテレビや電話を通じて行う遠隔医療にまで、高齢者向け医療保険制度(メディケア)の適用範囲が拡大され、さらに当局はコロナウイルス患者を隔離するためのモーテルも購入した。 

「多くの場合、経済的に厳しい制約を受けている人々が最後の防衛線になります」と、ゼルナー氏は言う。「家の中にこもるにしても、食料品店には行かなければなりません。では、食料品店で働いているのは誰でしょうか。必要なものをネットで注文すれば、外出せずに済むでしょう。しかし、誰がその荷物を運ぶのでしょうか」 【3月18日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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ネット注文商品を「誰がその荷物を運ぶのでしょうか」ということに関しては、以下のようにも。(外出規制下でも食品配達サービスは続けられるようです)

****感染怖いが休めない、ニューヨークの料理宅配ライダーたち****
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためレストランなどが閉鎖された米ニューヨークでは、自宅で食事をとる習慣のない市民らが、自転車で料理を運ぶ宅配業者にますます頼るようになっている。
 
飲食店やバーに対する閉鎖命令が出て以来、料理の宅配業務を担う約4万人の配達員が、市内で重要な役割を果たしている。こういった配達員のほぼ全員が健康保険や在留許可を持たない移民たちだ。彼らは感染を恐れてはいるが、働き続けるほかないと言う。(中略)
 
移民支援団体「メーク・ザ・ロード・ニューヨーク」の活動にも参加しているゴンザレスさんは、配達員には「より手厚い保護が必要」だと語った。

「どういった人が検査を優先的に受けられるのか、保険や在留許可がない人々が検査や治療の費用を払わなければならないかどうかもはっきりしない」とゴンザレスさんは話した。

配達員らは感染リスクを最大限減らそうと苦心しており、多くは手袋やマスクを着用し、頻繁に消毒ジェルを使用し、中には自転車のハンドルをポリ袋で覆っている配達員もいる。

■「チップを増やそう」 SNSの呼び掛けにNY市民は
(中略)一部のニューヨーク市民はソーシャルメディア上で、連帯を示すために配達員へのチップを増やすよう呼び掛けている。
 
だが、AFPの取材に応じた10人ほどの配達員らは、これまでよりもチップが増えたと感じたことはないと話した。 【3月19日 AFP】
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【アメリカ:検査や治療をためらう移民】
リスクの高い職種についている在留許可がない人々は、単に感染リスクが高いだけでなく、摘発を恐れて検査を受けたがらない、費用が負担できず治療を受けないということで、更に感染を拡大させる危険性もあります。

****「強制送還される」「永住権取れなくなる」 米移民 新型コロナ受診ためらう****
新型コロナウイルスの感染者が急増する米国で、検査や治療をためらう声が移民の間に広がっている。不法滞在が発覚したり、政府の新たな移民規制策により永住権の取得などが難しくなったりするのを心配しているからだ。トランプ政権の強硬な移民制策が、感染拡大のリスク要因の一つに浮上している。
 
「病院に行き不法滞在だと知られたら強制送還されないか」「感染して治療を受けると永住権を取れなくなるのではないか」
 
西部カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で移民の法律相談に応じる支援組織「TODEC」には、トランプ大統領が国家非常事態を宣言した3月13日以降、中南米系移民らからこうした相談が相次ぐ。
 
不法移民は医療施設でビザ(査証)や在留証明を提示できないため、摘発を担当する移民・関税執行局(ICE)への通報などを恐れて受診しない傾向が強い。
 
また、2月に施行されたトランプ政権の移民規制策は、永住権(グリーンカード)の申請者が政府の医療支援などを受けた場合、申請が却下される可能性があるとしている。
 
米国の不法移民は推計で1100万人以上。また、グリーンカード申請者のうち約38万人が新たな規制の影響を受けるとされる。
 
東部ニューヨーク州やカリフォルニア州など移民人口が多い地域で新型コロナウイルスの感染者が特に目立ち、当局は移民の受診控えによる感染者の増加を懸念する。
 
ICEは3月18日、感染拡大防止策が続く間は「医療施設やその周辺で摘発はしない」との声明を発表。移民局もグリーンカード申請について「コロナウイルスに関わる医療サービスを受けても影響はない」として、症状があれば積極的に受診するよう呼びかける。
 
しかし、TODECの責任者、ルース・ガレゴス氏は「トランプ大統領は言うことがころころ変わるため、多くの移民は本当に受診が不利益にならないのか疑心暗鬼になっている」と話す。
 
また、ガレゴス氏は「飲食店などが一時閉鎖されて解雇され、治療費を請求されても払えないという移民も増えている」と指摘する。
 
米紙ニューヨーク・タイムズによると、感染者の治療費は症状によっては2万ドル(約222万円)を超える可能性があるという。所得が低く無保険の移民は多く、高額な費用負担を恐れて受診に消極的な人もいるとみられる。【3月22日 毎日】
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トランプ政権の厳しい移民政策、アメリカの医療保険制度の不備が、コロナ被害を大きくしそうな気配です。

【中国:出稼ぎ貧困労働者が感染を拡大】
中国でも、出稼ぎ労働者などの地方出身の貧困層が当局の監視網から抜け落ち、治療を受ける機会も経済的負担能力もなく、感染を拡大させたたとの指摘があります。

****新型肺炎の最大の犠牲者は中国の貧困層****
(中略)23日に武漢の交通機関がストップしたとき、出稼ぎ労働者や地方出身の大学生の多くは、既に故郷に向けて出発した後だった。こうした人たちによるコロナウイルスの「持ち帰り」が危惧されるなか、各地の公衆衛生当局にとって、最新情報の収集は最重要課題となっている。

ところが現実には、武漢の近隣都市で感染者が確認されたニュースよりも、韓国やタイで感染者が見つかったニュースのほうがずっと早く報じられているのが現実だ。

<監視社会の意外な抜け穴>
(中略)中国は監視社会だが、その網は穴だらけだ。テクノロジーによるプロファイリングシステムで中流階級はかなり可視化されているが、貧困層は抜け落ちている。

全ての市民が常時携帯しているはずの身分証を、持っていない人もいる。紛失したが、高い旅費をかけて役所まで行って再発行する余裕がない人。そもそも出生を届け出ていない人もいる。彼らは身分証が必要な鉄道や飛行機ではなく、監視が難しいバスや相乗りのトラックを利用する。

彼らはインターネット上でも追跡が難しい。中国では微信(ウィーチャット)のようなサービスが広く浸透していると言われているが、ネット普及率はようやく60%を超えた程度だ。微信のアカウントや身分証を、家族で共有する例も少なくない。

<予防や治療の「格差」>
公衆衛生に関しては、地方は置き去りにされがちだ。手洗いやマスクなどの感染予防策や、健康に関する情報はなかなか広まらない。電話やネット回線の有無が、健康を守るための情報を左右する。

情報だけではない。コロナウイルスが武漢の外に広がるにつれて、公衆衛生の関連用品が不足し始めており、都市部から離れている病院ほど必要な医療品が届きにくい。

上海では春節で工場が休業する時期と重なり、マスクの供給不足に拍車が掛かっている。ある工場は、通常の3倍の給料で休日出勤を募集している。こうしたリソース不足と従来の格差が相まって、持てる者と持たざる者の「感染予防格差」が広がりそうだ。

さらに、ウイルスに感染した貧困層は、病院に行く可能性がかなり低い。中国の医療制度は、中流階級さえ、適切な治療を受けるのが難しいことで悪名高い。国民の大多数にとって、質の高い医療へのアクセスはないに等しいのだ。

<公的保険を利用できない出稼ぎ労働者>
医療の資源は、政策によって大都市や首都圏に集められている。(中略)

公的な医療保険も近年は拡充されているが、社会保障は戸口(戸籍管理制度)と結び付けられている。戸口の登録は基本的に出身地に縛られ、居住地や受けられる教育、公共サービスも限定される。

従って、地方の住民が、優秀な医師のいる都市部の病院で公的保険を使って受診することはできない。戸口のある土地から遠く離れた所で働く出稼ぎ労働者は、保険を全く利用できない。

彼らは命の危険が迫るまで病院に行かず、自分で治そうとするか、伝統的な民間療法に頼る。日常的に健康状態が悪くウイルスの影響を受けやすいため、風邪と勘違いしやすくなる。(後略)【1月25日 Newsweek】
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感染リスク、検査・治療機会において劣後する立場に置かれた人々をいかにフォローしていくかが、社会全体の感染拡大を抑止できるかのカギになりそうです。

【プライベートジェットで感染を避ける富裕層】
そうした中にあって、富裕層はコロナを避ける手立ても。

****新型ウイルスでプライベートジェット業界が活況?****
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて大混乱に陥っている航空業界の中で、一つの分野だけが活況を呈している。富裕層を得意客とするプライベートジェット業界だ。
 
(中略)常連客の利用頻度は通常と変わらないが、新規顧客が急増している。その大半はプライベートジェットを初めて利用する人々で、急を要している顧客か、あるいは民間航空会社の座席を確保できなかったり、リスクを冒したくないと思っていたりする人々だという。(中略)

顧客がチャーター便を選ぶ理由には、渡航歴が「不明な」何百人もの乗客と一緒に閉鎖された空間にいたくないという気持ちや、プライベートジェットの利用者は通常、混雑した主要空港ターミナルから離れた場所で税関手続きや入国審査を行えることなどがある。(後略) 【3月22日 AFP】
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“定員12席のチャーター便を利用する場合、英ロンドン発米ニューヨーク行きでは往復15万ドル(約1600万円)。香港発日本行きでは片道約7万1000ドル(約760万円)かかる。だが、英国から南仏までは1万ドル(約100万円)余り”だそうです。

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