(インドでも新型コロナウイルスの感染者が報告された。アフマダーバードではイスラム教信者がマスクを着けて神に祈りを捧げた。【2月3日 SWI】)
【ウイルスまん延が懸念される13億人のインド】
連日、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、どこそこの国で初めて死者・感染者が出たとか、死者・感染者が何人になったというニュースが多数報じられています。
その一つ一つは、その国にとって、あるいは国際社会にとって重要なものですが、そうしたなかで個人的にとりわけ注目している国が三つ。インド、北朝鮮、そしてイラン。
インドに注目するのは、中国に並ぶ約13億人を擁する人口規模、素人目にも十分とはとてもいいがたい衛生環境、膨大な絶対的貧困層の存在、そうした貧困層にとって不十分な医療体制・・・などを考えると、この国で感染拡大が始まったら大変な事態になりそうに思えるからです。
そうした懸念は私だけではないようです。
****米情報機関がインドを懸念、世界の新型ウイルス感染状況を監視****
複数の関係筋が27日明らかにしたところによると、米情報当局は世界での新型コロナウイルスの感染状況や各国政府の対応能力を監視し、インドの対応に懸念を示している。
インドでは確認されている感染者は少ないものの、利用可能な対策や、人口の多さからウイルスがまん延する可能性が強く懸念されているという。(後略)【2月28日 ロイター】
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そうした懸念があるなかで、感染はインドでも報じられています。
****インド、新たに3人が新型ウイルス感染 株価7日連続安****
インド西部の主要観光地ラジャスタン州で2日、イタリア人が新型コロナウイルスに感染したことが分かった。病院当局者が匿名で明らかにした。
当局者によると、最初の検査では陰性だったが、2回目の検査で陽性反応が出たという。すでに隔離病棟に移されており、3回目の検査が行われる見込み。
これとは別に、インド政府は同日、新たに2人の感染者が確認されたと発表。1人は首都ニューデリーで確認され、イタリアへの渡航歴があり、もう1人は南部テランガナ州で確認され、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを訪れていたという。
政府によると、2人とも状態は安定しており、監視されているとした。
ハルシュ・バルダン保健相は、当局が12カ国からの渡航者を検査していると発表。ネパールとの国境では100万人以上が検査されていると明らかにした。
インド国内での感染者はこれで6人に増加。国内での感染拡大を受けインド株価は7日続落した。【3月3日 ロイター】
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インド政府は、(日本を含めた)危険国からの感染者流入を阻止するための入国制限を強めています。
****インド、日本人への発給済みビザを無効に*****
インド政府は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、まだインドに入国していない日本人に発給された全ビザを無効にすると発表した。既に入国済みの場合は無効措置の対象外となる。
発表によると、韓国人、イタリア人、イラン人に発給されているビザも無効となった。インドに渡航を希望する場合、最寄りのインド大使館や領事館で新たにビザを申請するよう求めている。既にインド政府は、日本人と韓国人に対する到着ビザの発給と、オンラインでのビザ申請受け付けを停止している。(後略)【3月3日 産経】
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これからの流入阻止もさることながら、すでに流入しているウイルスはないのか?
日本政府が中国・武漢からチャーター便で日本人を帰国させた頃、インドも同様の帰国措置を行っています。
****新型肺炎流行で数百人のインド人が中国を出国****
情報筋によりますと、中国での新型肺炎流行を受けて324人のインド人が中国から出国しました。
イランの多言語放送サハルTV・ラジオのウルドゥー語チャンネルによりますと、1日土曜午前、インド人324人がエア・インディアにより新型コロナウイルス発生地である中国の武漢市からインドの首都ニューデリーに帰国しました。
インド政府は、中国での感染拡大を受け、同国に居住する全てのインド国民の帰国を計画しています。(後略)【2月1日 ParsToday】
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日本の場合、チャーター便帰国者829人中、陽性反応が15人とされています。【厚生労働省HPより】
インドでは? 適切に隔離監視されたのでしょうか?
“あの”インドで感染爆発したら、とんでもない惨事になりそうです。
インド政府の対応もさることながら、ウイルスがインドの気候風土に合わないことを願います。
【感染拡大が国家体制を揺るがしかねない北朝鮮 公式には感染者ゼロ】
次に北朝鮮。この国に注目するのは、感染拡大が国家体制を揺るがすことにもなりかねないからです。
北朝鮮側も、脆弱な医療体制のなかで感染が拡大したら、国民の不満が爆発し、体制を揺るがす事態ともなりかねないという危機感があってのことでしょう、本来は北朝鮮経済の命綱でもある中国との往来をいち早く遮断する強硬な対策を打ち出しました。
また、中国だけでなく他の国々との外交関係を事実上麻痺させるような強硬な施策も実施して、感染流入阻止に躍起となっています。
その甲斐あってか、公式には感染者は今までのところゼロとされています。
しかし当然ながら、あのような国ですから公式発表が信用できないことに加え、北朝鮮と中国の密接な関係を考えると、“ゼロ”というのは到底信じられません。
****感染者「ゼロ」の北朝鮮、新型コロナウイルスで「異例」の対策****
拡声器から鳴り響く衛生管理を呼び掛ける声、敷地内に閉じ込められた外交官、保健当局への「絶対的服従」を求める国営メディア――北朝鮮は新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の流行を防ぐため数々の対策を講じており、外交官からは「異例」との声も上がっている。
中国で新型コロナウイルスが発生すると、独裁国家である北朝鮮は直ちに国境を封鎖し、外の世界との接触を断った。外交官やアナリストは、医療インフラが脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮にとって、これが自国を守るための最善の策だったと指摘する。
北朝鮮は新たに入国した人を30日間隔離し、国内での対策も強化している。国営朝鮮中央通信によると政府は、戸別訪問による検診や、拡声器を取り付けた自動車で市民に衛生指導をするなど「反ウイルス運動」に力を入れている。
さらに北朝鮮在住の外国人は全員2月初めから各自の敷地内にとどまらなければいけないことになっており、外国人にも厳しい制限が科されている。
在北朝鮮ロシア大使館のアレクサンドル・マツェゴラ大使は、平壌にいる外交官は市内に出ることが出来ず、「精神的に厳しい」状況に置かれていると話す。
同大使はロシア国営タス通信に対し、「外交文書を受け取れず(中略)、応急手当てのための医薬品や物資も手に入れられない」と語った。外交業務は事実上、停止しており、北朝鮮当局者や諸外国の大使館との会合や対話、交渉なども行われていないという。
現在の状況は「異常」だが、「国の重要問題」に対処するためこのような決定を下し実行できるのは、北朝鮮のような「独自」国家だけだと同大使は話す。
「もちろん物質的な面では、孤立は北朝鮮にとって非常に高くつく」が、いつでも喜んでそのような代償を払うだろうと指摘する。「国家の安全保障、イデオロギー、国の誇りが経済よりも、常に例外なく優先されるということを理解するのが重要だ」
■感染者「ゼロ」
中国・武漢で発生したCOVID-19は、世界に広がっているが、北朝鮮政府は中国の近隣諸国の中で唯一、感染者がいないと主張し続けている。しかし、専門家らはこの主張に懐疑的だ。
朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、市民に対し保健当局と国の指示に「絶対的に服従」するよう呼び掛けている。「われわれは、一瞬の油断が取り返しのつかない破滅的な結果を生むことを忘れてはならない。常に厳戒態勢をとるべきだ」
さらに今週初め、一人でも新型コロナウイルス感染者が出れば「悲惨な結果」になると警告し、レストランを含め大勢が集まる場に行かないよう国民に求めた。
だが、国家行事にはこの制限は当てはまらないようだ。
北朝鮮は26日、国会に当たる最高人民会議の議員らが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の父親である金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕の地とされる白頭山を訪れるため列をなしている写真を多数公開した。全員マスクを着用していた。 【2月28日 AFP】
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外交官の活動が極度に制約されるため、ドイツ、フランス、スイスは大使館を一時閉鎖すると決めたとも報じられています。【2月28日 共同より】
実際のところ、北朝鮮国内の感染状況はどうなのか?もちろん確定的なことはわかりませんが、いろいろな情報は飛び交っています。
****新型コロナ「平壌など23人死亡」…金正恩に極秘集計の衝撃情報****
北朝鮮当局は「わが国に新型コロナウイルス感染者は発生していない」と繰り返しているが、各地から新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)と疑われる症状で亡くなる人が相次いでいるとの情報が寄せられている。そんな中、当局が感染者の極秘集計を行っている。
北朝鮮国内のデイリーNK高位情報筋は、政府の中央非常防疫指揮部が集計した結果、1月から今月25日までに、高熱、咳、呼吸困難の症状を示し、死亡した人が全国的に23人にのぼると述べた。
「結果は深刻」正恩氏発言
(中略)ただし、繰り返しになるが、北朝鮮当局は対外的には国内での新型コロナウイルスの感染者発生を認めていない。あくまでも「急性肺炎」という扱いだ。
「指揮部で地域別急性肺炎の死者と隔離措置者の管理状況を議論しつつも、新型コロナウイルス感染者はいないとの結論を下した。人民に感染者はいないと知らせて、徹底した防疫を継続すべきとの指針を下した」(高位情報筋)
北朝鮮の防疫体制は日本や韓国、中国などと比べ極めて脆弱だ。国民も、そのことを十分に理解している。感染者の大量発生は国民に大きな動揺をもたらし、金正恩体制の崩壊にさえ発展しかねない。
そうでなくとも北朝鮮当局は、経済難により悪化した治安を抑え込むべく、公開処刑を活発化させていたところだ。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は2月29日、朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議で金正恩氏が新型コロナウイルスを巡り、「この伝染病がわが国に流入する場合に招かれる悪結果は深刻であろう」と述べたと伝えた。また党機関紙の労働新聞は1月29日、新型肺炎への対策は「国家存亡に関わる重大な政治的問題」であるとする記事を掲載している。
北朝鮮国内の感染実態が本当のところどこまで来ているのかは知りようがないが、金正恩氏が相当な緊張感の中にあることは想像に難くない。【3月2日 高英起氏 YAHOO!ニュース】
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更には、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は、北朝鮮で7000〜8000人が隔離されているとの報告を。
*****北朝鮮で約8000人隔離か 平壌の各国外交官は解除=韓国情報機関*****
韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は3日、国会情報委員会の委員を務める野党議員に対し、北朝鮮で新型コロナウイルスのため7000〜8000人が隔離されていると報告した。同議員が聯合ニュースの取材に明らかにした。(中略)
国情報の分析によると、北朝鮮は1月29日に中国との国境を閉鎖し、列車、飛行機などの通行を禁止したが、中朝の交流が盛んであるため、国境閉鎖以前に中国との間を往来した人が感染した可能性があるという。
また国情報は、平壌に駐在する各国の外交官に対する隔離は今月2日に解除され、解放された外交官のためにロシア極東ウラジオストク行きの航空便が6日に運航される予定と伝えた。【3月3日 ソウル聯合ニュース】
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真偽のほどはわかりません。
そうしたなかでの飛翔体発射。
“国内向けには、ウイルスへの危機感があっても軍事訓練を普段通り実施できるほど社会の統制が取れている――と誇示する狙いがあるように見える。対外的には米国を念頭に「対話が途絶えているうちには軍事力増強を進める」と警告しているもようだ。”【3月3日 西岡省二氏 YAHOO!ニュース】とも。
【政治・宗教高位者にも感染者が相次ぐイラン】
次にイラン。この国の感染の特徴は、中国に次いで多い死者数にみられるように、感染規模が相当なレベルにあることが推察されることと、政治家・宗教指導者に感染者が相次いでいること。
****イランで新たに11人死亡、新型ウイルス死者計77人に****
イランは3日、新型コロナウイルスにより前日だけで11人が死亡したと発表した。同ウイルスによる死者は計77人になった。
同国保健省の副大臣が国営テレビの生放送で語ったところによると、感染者数は新たに感染が判明した835人を含め、合わせて2336人に上ったという。 【3月3日 AFP】
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イランも情報が隠蔽されている可能性が指摘されており、“一方、イランの在外反体制派組織「国民抵抗評議会(NCRI)」は、1日時点でイラン国内の死者が650人を超えたと主張。「指導部は誤った情報を通じて惨事の実態を隠し続け、ウイルスの急速な拡散を招いている」と非難した。英BBC放送ペルシャ語版も2月28日、複数の病院関係筋の話として、死者が少なくとも210人に上ると伝えており、政府が公表する情報の正確性に疑念も強まっている。”【3月2日 時事】とも。
感染者2336人・・・イラン保健省が1日発表した感染者数が(それまでより大幅に増加して)978人だったことからもわかるように、公表される感染者数はここ数日で急増しており、事態が急速に悪化したのか、これまで隠蔽していたものを表に出すようにしたのか・・・・。
感染者には政治的・宗教的高位者が含まれています。
****イランの諮問機関メンバー、新型ウイルス感染で死亡****
イラン国営ラジオは2日、同国の諮問機関のメンバー1人が新型コロナウイルスに感染して死亡したと発表した。
死亡したモハマド・ミルモハマディ氏(71)は、最高指導者ハメネイ師に任命された「公益判別会議」のメンバーだった。
同国では先週、高位の聖職者の1人も新型ウイルス感染症で死亡していた。
エブテカール副大統領と、政府の対策チームを率いていた保健省次官の感染も確認されている。(中略)
イランの感染者数は中東で最も多く、死者数は中国本土以外で最多。米国の制裁による経済危機に、感染拡大が追い打ちをかけている。
事態を受けて国会での審議が中止され、全国の大学や学校が閉鎖されている。イスラム教の金曜礼拝を含め、全ての集まりが禁止された。(後略)【3月3日 CNN】
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この現象は、感染の中心が聖地コムであることに由来するのだろうと、個人的に独断しています。
コムは宗教都市で、政治的・経済的に優遇された都市であり、宗教関係者が集中する都市です。
宗教的な理由で外国からイランを訪問した者も、コムで感染し、母国に帰国する形にもなっています。
宗教施設が集中し、宗教関係者が多く暮らすコムでの感染は、“神権政治”とも言われる宗教が政治に重きをなすイラン政治にあって、大きな影響が出そうです。
また、イランも経済制裁で疲弊している国ですから、医薬品不足など、脆弱な医療体制が問題となります。
【アメリカでも感染が・・・】
インド、北朝鮮、イランを注目する国として挙げましたが、もうひとつあげるならアメリカ。
これまでは“対岸の火事”状況でしたが、アメリカ国内でも死亡者が6名、感染者数43名となり、国内感染の拡大がうかがえます。
アメリカが今後どういう対応を取るのか、日本などの重度感染国との関係をどうするのか・・・非常に関心が持たれるところですが、長くなるのでまた別機会に。