(韓国で、感染が確認された患者の位置情報などを確認できるアプリのダウンロード数が急増している。
2月27日のアプリストア「グーグルプレイ」のランキングでダウンロード数上位15位のうち6つが感染の追跡などを支援するアプリだった。
一部のアプリは政府機関の公的な情報を利用しているが、開発業者によれば、2月の公開以降ダウンロード数が急増しているという。
「コロナ100m」の開発業者によれば、(中略)このアプリは新型コロナウイルスの患者の感染が確認された日付や国籍、性別、年齢、訪問先などを確認できる。新型コロナウイルスに感染した患者がどのくらい近くにいるかもわかるという。2月11日の公開以降、100万回以上ダウンロードされた。(後略)【3月3日 CNN】)
【行動制限を課すことなく増加曲線を抑制 各国が韓国の対応に注目】
欧米各国が新型コロナとの戦いに疲弊するなか、大規模なアウトブレイクが発生しながらも、中国のように都市封鎖・行動制限といった強硬な手段を使うことなく感染拡大を封じ込めているとして韓国が注目されています。
****韓国の新型コロナ感染者 1日70人台に低下=新規完治者195人****
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスを巡り、韓国の中央防疫対策本部は30日、この日午前0時現在の韓国での感染者数は前日午前0時の時点から78人増え、計9661人になったと発表した。
前日の増加数(105人)から大きく低下。新規感染者が2桁になったのは3日ぶり。死者は前日から6人増え計158人になった。(後略)【3月30日 聯合ニュース】
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韓国の対応の特徴としてThe New York Times は、「素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援」という点を指摘しています。
****世界で賞賛される「韓国」コロナ対策の凄み****
行動制限を課すことなく増加曲線を抑制
数字をどう見ても、1つの国が際立っている――韓国だ。 2月下旬と3月上旬、同国における新型コロナウイルスの感染者数は数十から数百人、数千人へと爆発的に増加した。
ピーク時には、医療従事者は2月29日の1日で909人の症例を特定し、人口5000万人の同国は打ちのめされる寸前のように見えた。しかし1週間弱経つと、新たな症例数は半減した。4日以内で、再び半減した――そしてその次の日も再び半減した。
封鎖政策も行われていない
韓国は22日、ほぼ1カ月の間で最少となる、わずか64人の新規感染者を発表した。他国では感染者数が1日ごとに数千人単位で増加し、医療システムや経済が壊滅的状況に追い込まれている中で、である。イタリアでは毎日数百人の死亡者を記録している。韓国は1日当たり8人を超えたことはない。
韓国は大規模なアウトブレイクが発生しながら、新規感染者数の増加曲線を抑えることができたわずか2国のうち、中国ではないほうの国である。そして韓国は中国のように言論や行動に厳しい制限を課すことなく、またヨーロッパやアメリカのように経済に打撃を与える封鎖政策を行わずに、それを成し遂げている。
ウイルスによる世界の死亡者数が1万5000人以上に膨らみ、世界中の役人や専門家は教訓を求めて韓国を徹底的に研究している。
そしてそれらの教訓は、簡単にはほど遠いものの、比較的ストレートで経済的にも負担が少ないように見える――素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援である。
しかし強く打撃を受けたほかの国は韓国のような対策は打てなかった。その手法を見習おうと関心を示し始めた国もあるが、もはや早々に制御できない時点までエピデミックが加速してしまった後のことであった。
韓国の文在寅大統領の周辺によると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とスウェーデンのステファン・ロベーン首相は、韓国の対策の詳細を聞くために文大統領に電話をしてきたという。
世界保健機関の事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは、ウイルスの封じ込めは難しいものの「可能である」ことを示したとして、韓国を称賛した。テドロス氏は各国に「韓国その他で得られた教訓を応用する」よう促した。
韓国の当局は、同国の成功は一時的なものであると警告する。再発のリスクは残されている。国境の外ではエピデミックが猛威を振るい続けているため、なおさらだ。
今では1日に10万の検査キットを生産
それでも、アメリカ食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブはツイッターで「韓国は賢く精力的な公衆衛生によってCOVID-19が克服できることを示している」と書き、何度も韓国をモデルに掲げてきた。
教訓1:介入は早く、危機的状況になる前に
1月下旬に同国初の感染症例の診断が下ってからわずか1週間後、当局は製薬会社数社の代表者たちと面会した。当局は緊急承認を約束したうえで、大量生産のためのコロナウイルス用検査キットの開発に直ちに着手するよう促した。
韓国で確認された症例数は2桁にとどまっていたが、2週間以内に何千もの検査キットが発送された。同国は今では1日に10万キットを生産しており、当局によるとキットの輸出について17カ国の政府と協議中だという。
当局はまた、地元の教会から感染が素早く拡大した人口250万人の都市テグで迅速に緊急措置を施行した。
「主な感染源が教会の礼拝だったことが割と早い段階でわかっていたため、韓国は人の動きを制限することなく対処できた」と政府にコロナウイルス対応を助言する疫学者であるキ・モランは話す。「判明するのがもっと遅かったら、ずっとひどい状況になったかもしれない」。
韓国はまた、ヨーロッパやアメリカと異なり、2015年の中東呼吸器症候群(MERS)のアウトブレイクにより国内で38人の死亡者を出した経験を持つため、コロナウイルスを国家非常事態として扱う準備ができていた。
コロナウイルスは5日間の潜伏期間があると考えられており、多くの場合その後風邪と間違われるような軽度の症状が出現するが、その際にウイルスが非常に伝染しやすくなる。
このパターンにより、アウトブレイクが明白になるまで1、2週間のタイムラグが生じる。一握り程度に見えた患者数が実は数百人、数百人に見えたものが実は数千人ということもありうる。
「このウイルスのこのような性質により、閉鎖と隔離に重点を置く従来型の対応は非効果的となる」と韓国保健福祉部次官キム・ガンリプは語る。「(感染者数が)いったんある程度に達してしまうと、古いやり方では感染拡大の防止に効果はない」。
1日当たりの検査率はアメリカの40倍
教訓2:検査は早く、頻繁に、安全に
韓国はほかのどの国よりもはるかに多くの人を検査してきた。そのため、多くの人を感染後すぐに隔離・治療することが可能となった。 同国では30万回以上の検査を実施し、1人当たりの検査率はアメリカの40倍となっている。(中略)
病院やクリニックがキャパオーバーにならないよう、当局は可能な限り多くの人を、可能な限り早く検査できるよう設計された検査センターを600カ所開設した。医療従事者の安全を確保するために接触を最小限に抑える狙いもあった。
50カ所のドライブスルー検査施設では、患者は車に乗ったままで検査が受けられる。患者は質問票を渡され、遠隔体温スキャンと喉の検体採取を行う。このプロセスは10分程度かかる。検査結果は通常数時間で上がってくる。 (中略)
公共メッセージが容赦なく発せられ、韓国人は自分や知人が症状を発症したら検査を受けるよう促される。海外からの訪問者は症状のセルフチェックを行わせるためのスマートフォンアプリのダウンロードが義務づけられている。
オフィスやホテル、その他の大きなビルではしばしば発熱している人を特定するためにサーモグラフィーカメラを使用している。多くのレストランでは来店客を受け入れる前に体温チェックを行っている。
社会からウイルスを「ほり出す」
教訓3:接触者追跡、隔離および監視
陽性反応を示す患者が出ると、医療従事者は患者の直近の動きを追跡して接触した可能性のある人を特定し、検査し、必要があれば隔離する。このプロセスは接触者追跡として知られている。
これにより医療従事者は伝染の可能性のあるネットワークを早期に特定することができる。まるで外科医がガンを取り除くように、社会からウイルスをほり出すのだ。
韓国はMERSのアウトブレイク中に精力的な接触者追跡のためのツールとプラクティス(実践法)を開発した。保健関係の係員はセキュリティーカメラの映像やクレジットカードの記録、車や携帯電話のナビのデータまでも使用して患者の動きをたどるのである。
「私たちはまるで刑事のように疫学上の捜査を行った」とキは言う。「その後、伝染病危機の際には個人のプライバシーよりも社会の安全を優先するよう法律が改正された」。
コロナウイルスのアウトブレイクが大きくなりすぎて患者を集中的に追跡するのが困難になると、当局はよりマスメッセージングに頼るようになった。
韓国人の携帯電話は居住地区で新規感染者が発見されるたびに緊急警報のバイブレーションが鳴る。ウェブサイトやアプリでは感染患者の1時間ごと、時には1分ごとの移動経路を表示する――どのバスに乗ったか、いつどこで乗り降りしたか、はたまたマスクを着用していたかどうかまで。
感染患者と経路が交わったと思う人は検査センターに届け出るよう促される。 韓国人はプライバシーの損失を、必要なトレードオフとして広く受け入れるようになった。
自主隔離命令を受けた人はもう1つアプリをダウンロードしなければならない。患者が隔離から抜け出した場合、当局に連絡が行くというアプリだ。違反した場合の罰金は最大2500ドルにもなる。
感染を早期に特定し治療すること、また軽度の症例は特別センターに分離することで、韓国は病院が最重症患者を受け入れられる状態を確保してきた。同国の症例死亡率は1%をわずかに超える程度で、世界でも最も低い国の1つである。
アウトブレイク抑圧には国民の協力が必要
教訓4:公衆の助けを募る
医療従事者の数も足りず、全員を追跡できるだけの体温スキャナーもないため、市井の人々が協力しなくてはならない。
首脳陣の結論は、アウトブレイクの制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること、そして国民の協力をお願いすることが必要ということだった、と保健福祉部次官のキム氏は話す。
テレビ放送、地下鉄の駅の告知、スマートフォンのアラートが、マスク着用の促進や社会的距離戦略、その日の感染データについて無限に注意喚起をしてくる。こうしたメッセージはまるで戦時中のような共通目的の感覚を植え付ける。
世論調査では大多数が政府の取り組みに賛同を示しており、人々は自信があり、パニックは少なく、買いだめもほとんど起こっていない。(中略)
中国は、ほとんどのヨーロッパの国よりも大きい湖北省における初の破壊的なアウトブレイクを駆逐した。ただし、その経済を閉鎖するというコストが伴った。
ゴットリーブ元FDA長官はツイッターで「われわれは韓国のような結果が得られるチャンスはおそらく逃してしまっている」と書いたが、韓国の手法はアメリカでも役立つかもしれない。「イタリアで生じているような悲劇的な苦しみを回避するためのことはすべてやらなければならない」。【3月27日 東洋経済ONLINE】
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【新型コロナで威力を発揮するスマホ位置情報追跡 監視社会への扉を開く可能性も】
韓国が実践した「接触者追跡、隔離および監視」については、他の国々でも携帯電話等を用いたシステムが実施・検討されていますが、感染対策として有効な反面、「監視社会」への入口となる可能性もあり、運用には十分な配慮が必要とされます。
****コロナ対策でスマホ位置情報追跡、欧州で広がる****
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため多くの国で封鎖措置が敷かれている欧州で、市民の順守状況を監視するため、通信会社が携帯電話の位置情報を政府と共有する動きが広がっている。プライバシー規定に抵触しないよう、データを匿名化することに注力しているようだ。
これまでのところ、ドイツ、オーストリア、スペイン、ベルギー、英国などで実施されている。
欧州以外では、韓国の保健当局が新型コロナ感染者や感染リスクがあるとみられる特定の人物について、携帯の位置情報を追跡し、匿名で居場所をネット公開している。
イスラエル当局も、感染リスクのある人物の居場所を特定するために、携帯データを活用している。(中略)
通信データに関する欧州連合(EU)のプライバシー法「一般データ保護規則」(GDPR)では、企業に対し、個人情報を収集するには各ユーザーからの許可が必要だと定めている。
コロナ対策としてデータを分析する政府当局者や通信会社は、匿名化されたデータしか使用していいないため、GDPRには違反していないと説明する。
だが調査会社ガートナーのバイスプレジデントアナリスト、バート・ウィルムセン氏は、匿名化の手法がぜい弱な場合、個人情報が特定される恐れがあると指摘する。例えば、暗号化による匿名化を行っても、暗号がのちに解読されるなどのリスクが考えられるという。(後略)【3月28日 WSJ】
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****携帯電話傍受し感染者を監視…イスラエル、30日間限定****
イスラエル政府は16日、閣議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急措置として、自宅隔離を義務付けた感染者らの携帯電話のデータを傍受して位置情報を把握し、自宅にとどまっているかどうかを監視することを決めた。
30日間限定で実施する。こうした監視は通常、テロリスト対策など犯罪捜査の目的で使う手法だという。治安当局が感染者の行動を把握し、過去14日間に接触した可能性のある市民を特定して自宅隔離を求める。(後略)【3月18日 読売】
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****ロシアでのテクノロジーを用いたコロナウイルスの潜在的な患者の追跡****
ロシアでコロナウイルス患者の移動の監視が始まった。それにより感染した人と接触した全ての人々が自己隔離すべきだということが警告される。この監視システムがどのように実行され、それが市民の権利を侵害しているかどうかをこの記事で伝える。
何が起こったのか
ロシアの首相ミハイル・ミシュスチンは、ロシア情報技術・通信省にコロナウイルス患者と接触している市民を追跡するシステムを作成するよう指示した 。
そのシステムではSMSメッセージを利用して自己隔離の必要性が警告される。このシステムは、2020年3月末までの、できるだけ早い時期に作成する必要がある。
このシステムはどのように機能するか?
次のように収集された情報で市民の追跡を行う。
携帯電話事業者が、コロナウイルスに感染した人の携帯電話の地理位置情報を提供する。
これのデータに基づいて、病気に感染した人が隔離されるまでの経路を決定する。
このシステムが、コロナウイルスCOVID-19に感染した人にすぐ近くにいた全ての通信契約者を識別し、彼らに対して14日間の隔離の必要と伝える自動メッセージを送信する。
また、感染の可能性に関する全ての情報が、地域のコロナウイルス対策本部に送られる。
これは可能か?
技術的にはこのようなシステムを作成することは可能であると、ロシアの携帯電話会社メガフォンが雑誌『コメルサント』の記事で伝えた。例えば、ロシア非常事態省でも同様の方法を用いて、緊急事態について市民に警告を発している。
「しかし、情報技術通信省によって提案されたこのプロジェクトを実施するために必要なメカニズムはまだ完全には理解されていません。これを実施するには規制分野の変更が必要とするかもしれません」と、メガフォンは伝えた。
密集した建物のある場所でも加入者の位置を追跡することは可能だが、誤差は約50メートルになると、匿名希望のとあるロシアのモバイルオペレーターは述べた。村や田舎では誤差がさらに大きくなると、このオペレーターは確信をもって話した。 (後略)【3月27日 RUSSIA BEYOND】
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新型コロナによって、テレワークの一般化などポスト・コロナの社会生活が大きく変化することが予想されます。
上記のような接触者追跡が「監視」に対する抵抗感を和らげ、本格的な「監視社会」への扉を開くことに・・・ということも十分に想像されます。
感染拡大抑止について言えば、日本は現在、非常事態宣言が云々される「ぎりぎりの状況」とも。
強硬手段の中国、迅速対応かつ徹底検査の韓国とも異なる(他国からはわかりづらい、何もしていないようにも見える)緩やかな第三の方法を示すことになるのか・・・そうあって欲しいものです。
“日本の新型コロナの封じ込め「成功」が世界を困惑させている=中国報道”【3月30日 Searchina】