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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエルとパレスチナ・ハマス 攻撃の応酬  見えない解決の糸口

2021-05-12 23:12:21 | パレスチナ

(11日、パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の空爆で立ち上る煙【5月12日 時事】)

 

【ロケット弾と空爆の応酬 増える犠牲者】

エルサレムにおけるパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突については、4月28日ブログ“イスラエル  パレスチナ問題が選挙争点にすらならない状況で、再び連日の衝突”でも取り上げました。

 

パレスチナ問題が“選挙争点にすらならない”イスラエルの国内事情、そのイスラエルと関係正常化を進めるアラブ諸国というように、“置き去りにされた存在”にもなりつつあったパレスチナの問題は、衝突が大きく拡大するほどのエネルギーはもはや残っていないのでは・・・と、個人的には感じていました。

 

しかし、イスラエル軍とハマスがロケット弾と空爆で応酬する展開となっていること、多くの犠牲者が出ていることは周知のとおり。

 

ハマスの異例なほどのイスラエル中枢部攻撃に対し、ネタニヤフ首相も「彼らは攻撃に対する重い代償を支払っており、これからも支払うことになるだろう」と一歩も譲らない姿勢です。

 

衝突の発端は、先月エルサレムの旧市街への入り口の1つ「ダマスカス門」の前にある階段に、イスラエルの治安部隊がバリケードを設置したこと。

 

この問題に加えて、東エルサレムのシェイフ・ジャラフ地区に住むパレスチナ人に対してユダヤ人入植者が立ち退きを求める裁判に対するパレスチナ人の懸念が、イスラエルへの抵抗を拡大しました。

 

****イスラエルとパレスチナ 攻撃の応酬が激化 空爆で43人死亡****

中東のエルサレムでの衝突をきっかけに、イスラエルとパレスチナによる攻撃の応酬が激しさを増しています。イスラエルによるガザ地区への空爆でこれまでに子どもを含む43人が死亡するなど、緊張が続いています。

 

中東のエルサレムではイスラム教の断食月ラマダンが始まった先月中旬以降、イスラエルの治安部隊とパレスチナ人が衝突し、反発が各地に波及しました。

パレスチナのガザ地区では、イスラエルが報復として激しい空爆を行い、建物が倒壊するなどして、これまでに子どもを含む43人が死亡したとされています。

一方、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは報復としてロケット弾で対抗し、現地時間の11日夜には、イスラエル最大の商業都市テルアビブや、南部の都市などに向けて200発以上のロケット弾を発射しました。

ハマスがテルアビブなどに向けてこれほど多くのロケット弾を発射するのは異例で、イスラエル側は軍が迎撃して対抗しましたが、一部は着弾し、イスラエル側は市民6人が死亡したと発表しました。

これに対し、イスラエルは11日から12日にかけて夜通しガザ地区に対する激しい空爆を行ったほか、今後、ガザ地区周辺の部隊を強化し、地上からも軍事作戦を展開する構えを見せていて、緊張が続いています。

 

衝突の発端の1つとはバリケードの設置

イスラエルとパレスチナの衝突の発端の1つとなったのは、先月エルサレムの旧市街への入り口の1つ「ダマスカス門」の前にある階段に、イスラエルの治安部隊がバリケードを設置したことでした。

ダマスカス門は東エルサレムのパレスチナ人が、旧市街のイスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」にある「アルアクサ・モスク」や、金色の丸い屋根が特徴の「岩のドーム」で礼拝するために行き来し、門の前の階段には市民たちが座って時間を過ごす憩いの場にもなっています。

先月中旬からイスラム教徒が日中の飲食を断つ断食月、ラマダンが始まり、礼拝する多くのパレスチナ人がこの門を通りますが、イスラエル側はバリケードによって門の周辺に人が集まるのを妨げようとしたことにパレスチナ側が反発し、イスラエルの治安部隊とパレスチナ人の小競り合いに発展しました。

暴力の連鎖は各地に波及し、ヨルダン川西岸地区では、ユダヤ教の宗教学校に通うユダヤ人入植者が襲撃されて、死者が出たほか、イスラエル軍の兵士を襲撃しようとしたパレスチナ人が射殺されるなど、次第に緊張感が高まっていきました。

こうした中、パレスチナ側をさらに刺激したのは東エルサレムの住宅をめぐる裁判でした。

東エルサレムのシェイフ・ジャラフ地区に住むパレスチナ人に対してユダヤ人入植者が立ち退きを求める裁判が不当な判決になるのではと警戒したパレスチナ側が抗議活動を展開し、衝突が激化しました。

そして、今月7日の金曜礼拝のあと、聖地ハラム・アッシャリフ内にイスラエルの治安部隊が突入してパレスチナ人と衝突するようになり、事態の収拾のめどが立たなくなりました。

その後、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは、エルサレム周辺のほか、イスラエルの各地に数百発のロケット弾を発射し、これまでに少なくとも3人が死亡しました。

これに対し、イスラエルは報復措置としてガザ地区へ空爆を行い、これまでに、子どもを含む30人以上が死亡していて、双方の応酬はやみそうにありません。

 

対立の中心は「東エルサレム」

今回、最初に衝突が始まったエルサレム東部の「東エルサレム」は、イスラエルとパレスチナの領土をめぐる対立の中心となってきました。

エルサレムは1948年のイスラエル建国後東西に分かれ、それぞれイスラエルと隣国ヨルダンが統治しましたが、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが勝利すると、東エルサレムを占領・併合し、現在も自国の領土として扱っています。

ただ、国際社会はこれを認めず、イスラエルに対して戦争で占領した土地からの撤退を求める国連安保理決議を採択しています。

また、パレスチナは東エルサレムを将来樹立する国家の首都としていて、現在も大勢のパレスチナ人が暮らしています。

このうちシェイフ・ジャラフ地区には、1948年の第1次中東戦争で住む場所を追われたパレスチナ人が暮らしていますが、それ以前にこの土地を所有していたのは自分たちだと主張する右派のユダヤ人団体から立ち退きを求められる事態となっています。

イスラエルは、東エルサレムで国際法に違反した住宅地建設によりユダヤ人入植者の数を年々増加させていて、イスラエルのNGOによりますと合わせて22万人余りが暮らしているということです。(後略)【5月12日 NHK】

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東エルサレムのジャイフ・ジャラフ地区については、1948年にイスラエルが建国し、第一次中東戦争が起きると土地を追われたパレスチナ人が移り住みました。

その当時東エルサレムは、隣国のヨルダン政府が統治し、パレスチナ人は難民を支援する国連機関が建設した住居などで暮らしてきましたが1967年には第三次中東戦争を経て東エルサレムも、イスラエルに占領・併合されました。

ユダヤ人の団体は、この土地をかつてはユダヤ人が所有していたと裁判などで主張して、パレスチナ人の立ち退きを求めています。

 

衝突が激しくなる中、立ち退きをめぐる裁判の判決は延期となっています。【5月12日 NHKより】

 

【双方が「強気」姿勢を崩さない政治的事情も 懸念される「ナクバの日」】

衝突の今後については、“今月15日には、パレスチナ人がイスラエル建国で故郷を追われた「ナクバ(大破局)の日」を迎えることもあり、パレスチナ側による抗議活動がさらに激しさを増すとの懸念が高まる。”【5月12日 朝日】ということで、時期的には非常に危険な状況です。

 

“現地の報道では、ガザとの境界線付近でイスラエル軍の戦車が展開され始めている”【5月12日 TBS】という報道も。

 

イスラエル、パレスチナ双方とも内部に政治対立を抱えており、ネタニヤフ首相・ハマス双方とも「強気」に出ることが政治的に有利と判断していることからも、妥協は困難な状況です。

 

****イスラエルとハマス、双方とも妥協は困難か 国連など調停へ****

(中略)イスラエルのネタニヤフ政権は2014年夏、ユダヤ人少年3人が射殺体で見つかった事件を機にガザに侵攻、ハマスとの間で2千人以上が死亡する大規模な戦闘を展開した。今回も双方が敵対的な姿勢を崩さない可能性がある。

 

右派与党リクードを率いるネタニヤフ氏は3月23日の国会選後、他党との連立協議が頓挫し、現在は中道・左派勢力が連立協議を進める。治安維持で妥協しない態度を誇示して求心力を取り戻す狙いがちらつく。

 

一方、パレスチナでは5月22日に15年ぶりとなる評議会(議会)選挙が行われる予定だったが、自治政府のアッバス議長が4月末に延期を発表。

 

自ら率いる主流派ファタハが分裂、支持基盤が弱体化したアッバス氏が敗北を避けたとの見方が広がり、ハマスはアッバス氏を批判していた。

 

対イスラエル強硬派のハマスはパレスチナ人の間で根強い人気があるとされ、支持拡大のため戦闘継続に意欲をみせているとみられる。

 

エジプトの政治評論家、ハサン・アブターレブ氏(65)は電話取材に「早期停戦は見通せない。イスラエルが東エルサレムのパレスチナ人の強制退去を推進すれば、新たなインティファーダ(反イスラエル闘争)に発展する可能性もある」との見方を示した。【5月11日 産経】

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【イラン問題でイスラエルとの関係を悪化させたくない米バイデン政権 打てる手は限定的】

こうした状況にアメリカは、双方に自制を促していますが・・・

 

****中東対立 米国務長官、事態沈静化呼びかけ****

(中略)こうした事態を受け、アメリカのブリンケン国務長官は10日、イスラエルとパレスチナ双方に事態の沈静化を呼びかけました。

ブリンケン国務長官「双方が緊張を緩和し、事態を沈静化させるための現実的な行動をとらなくてはいけない」

その一方でブリンケン長官は、「ロケット弾攻撃を深く懸念している」「イスラエルにはこうした攻撃から国民、領土を守る権利がある」とも述べています。【5月11日 日テレNEWS24】

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バイデン大統領は、トランプ前大統領のイスラエル一辺倒から「2国家共存」を目指す方向に姿勢を戻していますが、イラン核合意復帰問題を抱えて、これに強く反対するイスラエルとの関係を悪化させたくないとの事情もあって、打つ手は限られているとも。

 

****エルサレム衝突 「脱トランプ」のバイデン米政権、鎮静化の道筋みえず****

エルサレム旧市街でのパレスチナ人とイスラエル治安部隊の大規模衝突を受け、バイデン米政権は10日、イスラエルと将来のパレスチナ国家による「2国家共存」を目指す考えを改めて強調し、イスラエル寄りだったトランプ前政権からの転換を印象付けた。

 

一方でバイデン政権はイラン問題などを念頭にイスラエルとの関係維持に腐心しており、同国との立場の違いを際立たせかねないパレスチナ問題では、和平仲介などの具体的な関与策を打ち出せていない。

 

米国務省のプライス報道官は10日の記者会見で、イスラエルとパレスチナの双方に緊張緩和を呼び掛けた上で、イスラエルには、衝突があった旧市街を含む東エルサレムの住民に「哀れみと思いやりを持って接するべきだ」と求め、強制立ち退きや入植活動に反対の考えを示した。入植を推進する右派ネタニヤフ政権にくぎを刺した格好だ。

 

プライス氏は、東エルサレムの最終的な地位は「当事者(による協議)で解決されるべき問題」だとし、東エルサレムの大部分をイスラエルの首都と認定した前政権と一線を画した。

 

ただ、政権発足から3カ月余りがたった現在も、バイデン政権が2国家共存に向けた協議の仲介に乗り出す兆しは見えていない。

 

背景には、優先課題として取り組むイラン核合意の修復へ向け、同国と敵対するイスラエルから一定の理解を得る必要に迫られていることから、優先度の低いパレスチナ問題で同国との関係をぎくしゃくさせたくないとの思惑がある。

 

また、イスラエルでは過去2年で4回の総選挙が行われる政治空転が続く中でも、対パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相が底堅い支持で政権を維持してきた。これに対してパレスチナ側では自治政府に対する住民の不満が強く、アッバス議長ら指導部の求心力が低下。バイデン政権には、こうした政治情勢で和平協議を主導するのは難しいとの判断もあるとみられる。

 

歴代米政権は、イスラム原理主義組織ハマスなどのロケット弾攻撃に対してイスラエルが空爆などで報復することは「正当な自衛の範囲内」だとしており、バイデン政権もこれを踏襲。

 

東エルサレムでの衝突やハマスによる挑発的な攻撃が長期化した場合、事態沈静化のためにバイデン政権がとれる措置は極めて限定的だ。【5月11日 産経】

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一方、トランプ前大統領は、バイデン大統領の「弱腰」がハマスの攻撃を誘発しているとして、イスラエルを後押しすることが中東の安定につながると主張しています。

 

*****「バイデンの弱腰が原因」トランプ氏、イスラエルとハマス衝突で声明****

トランプ米前大統領は11日、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘を受けて声明を出し、「バイデン(大統領)の弱腰とイスラエルへの支援の欠如のせいで、われわれの同盟国に対する新たな攻撃が起きている」と非難、自身について「平和の大統領として知られていた」と自賛した。

 

トランプ氏は自身の在任中を振り返り、「イスラエルに敵対する者たちは、米国が断固としてイスラエルとともにあったために、イスラエルを攻撃すれば即座に報いを受けると分かっていた」と述べ、イスラエルを後押しすることが中東の安定につながると持論を展開。

 

それに対し、バイデン政権下では「世界はより暴力的になり、不安定化している」と主張した。【5月12日 産経】

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トランプ氏の主張は、うるさい相手は力で押さえつければいいと言っているにすぎず、そうして得られる小康状態が望ましい「安定」とは思いません。

 

歴代のアメリカ政権がイスラエルの拡張姿勢を容認してきたことが、イスラエルが問題可決に向かわせることを阻害し、そうしたイスラエルに武力で対抗しようとする勢力をパレスチナ側に根付かせているように思います。

 

ただ現実問題として、どのような妥協がありうるとか言えば・・・・難しいのが実情です。

 

パレスチナ人が住んでいた土地にイスラエルが建国したことが問題の発端ではありますが、今更イスラエル建国を否定することもできません。

 

ただ、その後の占領地拡大、入植政策に関しては、パレスチナ側の権利を侵害しており、これに関するイスラエル側の譲歩が必要になるでしょう。しかし、イスラエルは認めないし、イスラエルの首に鈴を付ける者もいない状況では手詰まり感も。

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