孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本  エンジン、石炭火力など長年培われた高度な技術へのこだわりが変化への足かせになることは?

2021-05-22 22:44:47 | 環境

(【5月19日 WSJ】 米エネルギー大手ビストラがカリフォルニア州モスランディングで建設する、廃止された天然ガスプラントを利用した大規模蓄電池施設 完成すれば400メガワットの電力を4時間供給できるようになる)

 

【EVシフトの流れの中で“エンジン”へのこだわりは?】

先ほど食事しながらTVのニュースを観ていると、トヨタが富士24時間レースに水素エンジン自動車を参加させ(社長自らレーサーとして参加するとか)、今後も水素エンジンの開発を進める・・・といったことを報じていました。

 

脱炭素社会の自動車の主流は電気自動車(EV)と一般的にはみられており、すでに中国を筆頭にEVへのシフトが加速しています。

 

“中国、50万円弱の低価格EV販売急拡大「人民の足」アピール”【4月20日 産経】

“中国IT大手、続々とEV市場に参戦 上海モーターショーで世界が注目”【4月22日 AFP】

 

****世界初「夢の全固体電池」も?! 上海モーターショーで注目“中国のテスラ”NIOの実力****

「夢の次世代電池」一番乗りは中国EV企業?

4月19日に開幕した上海モーターショー。トヨタがSUVタイプのEV(電気自動車)を世界初公開し、ホンダも中国で来春発売するEVを披露するなど、EV一色となった。

 

世界的な脱炭素の流れのなか、中国でも2035年までに新車販売の50%以上をEVなどの「新エネルギー車」とする計画が示されていて、各社がアピールに必死だ。

 

そんなモーターショーに先立つこと3カ月。中国の新興EVメーカーが夢の次世代バッテリー「全固体電池」を世界で初めて実用化した―?そんなニュースが一部で話題になった。(後略)【4月27日 FNNプライムオンライン】

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「夢の全固体電池」については、いささか疑問符があるようです。

 

アメリカも負けじと・・・

“バイデン氏「EVでは中国に負けない」 全米50万カ所に充電施設”【5月20日 FNNプライムオンライン】

 

一方、クリーンなエネルギーとしての水素の利用ということでは、トヨタも手がける燃料電池車(FCV)がありますが、燃料電池は水素を酸素と結合させて電気を取り出しているのに対し、燃焼によって水素と酸素と結合させ熱エネルギーとして取り出すのが水素エンジンの原理です。

 

つまりFCVが電気でモーターを動かすのに対し、水素エンジンはあくまでも水素を燃やしてエンジンを動かす・・・ということのようです。

 

そのことで、これまでのエンジンに関する技術も活かせるし、エンジン生産に携わる多くの企業の雇用も守れる・・・ということのようです。

 

価格もFCVより安くなるようですが、ネックは水素ステーションが全く広がっていないこと。

 

私は四輪の免許も持っておらず、車には全く関心も、知識もないので、全くの見当はずれになることを覚悟で感想を言えば、(トヨタの真の狙いがどこにあるかはともかく)水素エンジンへのこだわりは、これまで培ってきた高度な技術に引きずられて、世の中の大勢からどんどん孤立していくとなるような危うさを感じました。

 

仮に、日本国内である程度の販売が可能になっても、水素ステーションが整備されていない外国への輸出もできないでしょう。

 

「長所・強み」を活かそうとして、やろうとすれば何とか可能だけに、ずるするとそこに執着し、結局新たな転換に乗り遅れる、周囲から孤立化する・・・ということは往々にしてあることですが、自動車王国・日本についてもそんな“ガラパゴス化”の懸念を感じた次第。

 

【脱炭素発電の流れのなかで“石炭火力”へのこだわりは?】

電気自動車が今後の主流になるにしても、その「電気」をどうやって発電するかが問題になります。

 

EVシフトする中国ですが、中国のように石炭火力でCO2を排出しながら、その電気でEVを動かしても、社会トータルの脱炭素・カーボンニュートラルは達成できません。

 

その点では、高効率な石炭火力に拘る日本も国際的評価は芳しくないことは、5月8日ブログ“SDGsを目指す世界の流れとは溝もある日本の石炭火力対策”でも取り上げました。

 

****英、G7に石炭火力全廃を提案 サミット議長国、日本孤立も****

6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)議長国の英国政府が、共同声明にG7各国での石炭火力発電の全廃を盛り込む提案をしていることが17日、分かった。

 

国内外の複数の関係者が明らかにした。二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力は、日本などが目指す「2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ」達成を妨げる存在。英国はG7が積極姿勢を示すことで、世界全体の排出削減に向けて機運を高める狙い。石炭火力の利用を続ける日本が孤立する可能性もある。

 

G7各国のうち、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国は国内の石炭火力発電について廃止を表明している。【5月17日 共同】

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CO2の排出が多い石炭火力廃止の流れのなかで日本は

“日本の発電電力量のうち、二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力の割合は19年度で32%。政府は30年度までに「非効率」な旧式の発電所を段階的に休廃止するが、旧式よりも排出を抑えた発電所は維持する方針だ。しかし、国際的には石炭火力自体の廃止圧力が強くなっている。”【4月22日 東京】

 

****G7気候相会合、石炭火力への国際投資停止で合意 年末までに具体措置****

主要7カ国(G7)の気候・環境相会合は21日、石炭火力発電への国際投資を年末までに停止する方針で合意した。

ロイターが確認した共同声明は「2021年末までに、国際的な石炭火力事業への直接的な政府支援を完全に停止するために、具体的措置を講じることにコミットする」と言明した。

日本が支持に回ったことで、中国など、石炭火力の使用を支持する国にとっては逆風が強まる見通しだ。第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)のシャルマ議長は中国に対し、「長期目標の達成に向けた短期的な政策」を明示するよう求めた。

G7はさらに「他のグローバルパートナーと連携し、ゼロエミッション車の展開を加速させる」ほか、2030年代に電力部門を「圧倒的に脱炭素化」し、いずれは化石燃料全体への国際投資を停止することでも一致。ただ、目標達成に向けた具体的な日程は盛り込まれなかった。

世界の産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるという2015年のパリ協定へのコミットメントも確認した。

バイデン米政権で気候変動問題を担当するケリー大統領特使は20カ国・地域(G20)に対し、G7が表明した方針と一致した取り組みを進めるよう要請した。【5月22日 ロイター】

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「国際的な石炭火力事業への直接的な政府支援を完全に停止」とは言いつつも、結局は日本と議長国イギリスで折り合いがつかず、曖昧なメッセージとなったようです。

 

****G7、石炭火力で折り合いつかず 日本は継続維持****

オンライン形式で開かれていた先進7カ国(G7)の気候・環境相会合が21日、二酸化炭素(CO2)の排出抑制対策をしていない石炭火力発電への「国際投資をやめなければならない」とする共同声明を採択して閉幕した。

 

議長国の英国は「全廃」を模索したが、G7各国のうち、日本は今後も使い続ける方針を維持し、折り合いがつかなかった形だ。

 

共同声明では、新たな政府支援の全面的な終了に向け「年内に具体的な措置を取る」としたものの、高効率の石炭火力は継続を容認する余地も残した。また各国内の石炭火力廃止について踏み込んだ表現は盛り込まれなかった。【5月22日 共同】

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自動車同様、技術的なことは知りませんが、おそらく日本が主張する高効率の石炭火力というのは、それなりの水準にあるのでしょう・・・ただ、自動車のEVシフト同様に、高効率の石炭火力というものを可能にする技術力があるだけに、石炭火力からの決別が難しく、世の中の流れとは異なる方向に・・・という印象を感じたところです。

 

新しい世界に飛び込むためには、これまでの高い技術力、そこへの執着は、かえって足かせになることがあるようにも。

 

【再生可能エネルギーの可能性を広げる蓄電池技術】

その意味では、石油・天然ガスに恵まれたアメリカは、そのことが再生可能ネルギー進展の足かせにもなる可能性がありますが、アメリカ電力業界では新たな動きも見られるとか。

 

再生可能エネルギーの発電コストが大きく低下してきたこともありますが、カギとなるのは、不安定な再生可能エネルギーを蓄える蓄電池技術の開発。

 

****天然ガスを脅かす蓄電池、変わる米電力業界****

再生エネと電力貯蔵の併用でガス発電所が「座礁資産」化も

 

米エネルギー大手ビストラは全米最多クラスの36基の天然ガス発電所を有しているが、これ以上は発電所を買収または建設する予定はない。

 

代わりにテキサス州とカリフォルニア州で太陽光発電所と蓄電池に10億ドル以上を投資し、新技術によって変貌しつつある電力業界で生き残るため、事業の転換を図る意向だ。

 

「次のブロックバスターにならないよう必死だ」。ビストラのカート・モーガン最高経営責任者(CEO)は、経営破綻した米ビデオレンタル大手の名を挙げてこう話した。「私はこのレガシービジネスが衰退していくのを黙って見守るつもりはない」

 

米国では10年前、フラッキング(水圧破砕法による掘削)によって天然ガスが安価に手に入るようになり、天然ガスが石炭に代わって最大の電力供給源となった。今度は天然ガスが同様の市場破壊によって脅威にさらされている。新たな破壊をもたらしているのは、風力や太陽光エネルギーを利用した費用対効果の高い蓄電池だ。

 

米国エネルギー情報局(EIA)によると、2019年の米発電量に占める天然ガス火力発電電力は38%に上り、24時間体制で電力を供給し、ピーク需要を満たしている。

 

風力発電や太陽光発電も大きなシェアを獲得しており、電池コストの低下に伴って、グリーン電力と電池の組み合わせが需要を満たす役割を担いつつある。電池に安価なグリーンエネルギーを蓄え、太陽が沈んだ後や風がやんだ後に放電するのだ。

 

米電力市場に占める蓄電池の割合はまだ1%にも満たず、現在のところ主に太陽光発電装置から給電されている。太陽光発電の出力量はかなり予測可能で、貯蔵によって増やしやすい。

 

しかし、蓄電池と再生可能エネルギーの併用は、何十億ドルもの天然ガス投資を無駄にする恐れがある。そのため、何十年も稼働することを見越して過去10年間に建設された発電所が、採算が取れるようになる前に引退する「座礁資産」と化すことが懸念されている。

 

米国の現在までの再生可能エネルギーの成長は、電力会社に一定量のグリーン電力の調達を義務付ける州の規制や、風力・太陽光発電の経済的競争力を高めた連邦政府の税制優遇措置によるところが大きい。

 

しかし再生可能エネルギーは近年、補助金なしでもコスト競争力を増している。このため化石燃料発電に代えて風力・太陽光発電に投資し、自主的に二酸化炭素(CO2)排出量を削減しようとする企業が増えている。気候変動に対処する州・連邦規制が強化される見込みであることも、こうした傾向を加速させている。(中略)

 

ガス対グリーンエネ

ガス火力発電所は、風力発電や太陽光発電との競争で既に苦戦している。米電力大手デューク・エナジーは依然、ガス火力発電所の増設を検討している。しかし、発電所がさほど長く運営できない可能性があるため、早期に採算を取れるよう財務計算を見直し始めている。(中略)

 

電力網用の蓄電池

電力網用の蓄電池の多くは、電気自動車(EV)に使用されているのと同じようなリチウムイオン製だ。大型の輸送用コンテナのような見た目で、複数の電池をまとめて配列し、大容量の電力を供給できるようにしていることが多い。再生可能エネルギー源に付属しているものもあれば、単独で設置され、電力網から給電されているものもある。

 

蓄電池は、風力発電ファームよりも太陽光発電ファームと併用されることが多い。太陽光の方が発電量を予測しやすいことと、その組み合わせの方が連邦政府の税額控除を受けやすいためだ。風力発電所と蓄電池の併用に取り組んでいる企業もあり、技術コストが低下すれば、市場の拡大が期待できる。(中略)

 

電力市場の競争が激しく、排出規制のないテキサス州でさえも、ガス発電所はほとんど建設されておらず、太陽光発電所や蓄電池の利用が急速に増えている。

テキサス電気信頼性評議会によると、同州では約8万8900MWの太陽光発電、2万3860MWの風力発電、3万0300MWの蓄電池容量が企業によって検討されている。一方、検討中の新たなガス火力発電容量は7900MWにとどまる。

 

電力会社や電力網規制当局は、少なくとも当初は、新たな電力源の信頼性が既存の発電所ほど高くない可能性を考慮する必要がある。2月に起きたテキサス州の大停電は、その懸念を浮き彫りにした。

 

同州では、気温の低下で電力需要が急増していたところに強力な寒波が襲い、風力タービンやガス発電所、原子力発電所などの多くの電力源が凍結。壊滅的な停電が何日も続いた。

 

たとえテキサス州に蓄電池がもっとあったとしても、風力・太陽光発電ファームの生産性が低い時期だったことを踏まえると、数日間に及ぶ供給不足の緩和にはあまり役立たなかった可能性が高い。企業幹部やアナリストはそう話す。現在のほとんどの蓄電池は、一度の充電でせいぜい4時間程度の放電しかできない。

 

カリフォルニア州では昨夏、ガス発電所への依存度を急速に下げた結果、その影響をもろに受けることになった。米西部が熱波に見舞われた8月、同州の電力会社は需要急増による供給不足を緩和するため、計画停電を余儀なくされた。カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)とカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)が共同作成した事後分析では、その一因に太陽光や風力発電への急激なシフトが挙げられていた。【5月19日 WSJ】

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現在の蓄電池技術は長期間の蓄電にはまだ不十分なレベルですが、こういった技術は利用が広がれば加速度的に進化するものではないか・・・との印象も素人的にはあります。

 

原子力・石炭火力に頼る姿勢を崩さない日本政府が繰り返し主張するのも再生可能エネルギーの不安定性ですが、上記のような流れが加速すれば、その不安定性を補う蓄電池技術の進歩もそう遠い将来のことではないのかも・・・と楽観的に考えてしまいます。

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