孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  女子生徒が犠牲になる爆弾テロ 将来の姿を暗示するものでなければいいが・・・

2021-05-13 22:24:55 | アフガン・パキスタン

(【5月10日 TBS NEWS】爆弾テロ現場に散乱する女子生徒の遺品)

 

【首都カブールで爆弾テロ 犠牲者60名超 重なり合って倒れる女子生徒】

米軍撤退で、今後の情勢が注目されているアフガニスタンですが、またしても悲惨なテロが。

 

****アフガン首都の爆破攻撃、死者60人超に ほとんどは女子生徒****

アフガニスタンの首都カブールの中学校近くで8日にあった爆発で、確認された死者が9日までに60人を超えた。現地では、子どもを失った親たちが埋葬を行っている。負傷者は150人以上となっている。

 

爆発は自動車爆弾と、2個の爆破装置によるものだったとみられている。攻撃のねらいは、はっきりしていない。死者の多くは、下校途中の女子生徒たちだった。

 

カブールの「殉教者墓地」では、被害者のうち少数派ハザラ出身者の埋葬が行われた。AFP通信によると、女子生徒の遺体を入れた木製の棺が墓穴へと下げられていくのを、人々はショックによる放心状態で見つめていた。

付近の住民の1人は、「現場に駆けつけたら、たくさんの死体があった」、「みんな女の子だった。重なり合って倒れていた」とAFP通信に話した。

 

爆発発生時に現場付近にいたというザハラさんは、「同級生が死んだ。数分後、別の爆発があり、さらにもう1回あった。みんな叫び声を上げ、いたるところで血が流れていた」と記者団に話した。

 

教育省のナジバ・アリアン報道官はロイター通信に、事件があった中学校は国立で、男女両方の生徒がいたと話した。被害にあった多くは女子生徒で、3回に分けて開かれる授業の2回目を受けていた生徒たちだったという。

 

地元報道によると、市内はイスラム教の重要な行事ラマダン(断食月)の終了を祝うイード・アルフィトルに向け、買い物客で混雑していた。

 

現場はカブール西部のダシュト・エ・バルキ地区。モンゴルや中央アジアにルーツのある少数派ハザラが多く住む。ハザラ系の多くはイスラム教シーア派教徒ということもあり、この地区ではスンニ派武力勢力による攻撃が頻発している。

 

BBCのシカンダー・カーマニ・アフガニスタン特派員によると、武装勢力イスラム国(IS)はハザラを異端とみなし、一般住民らを狙った残忍な攻撃を繰り返してきた。これまでに、スポーツ競技のホールや文化センター、教育施設などに爆弾が仕掛けられ、多数が死亡しているという。

 

アフガン政府は反政府武装勢力タリバンの攻撃だとしているが、タリバンは関与を否定した。

 

米軍の完全撤退を前に

アフガニスタンでは、駐留米軍が9月11日までの完全撤退を予定しており、暴力事件が増加している。米国務省は8日、今回の攻撃を「野蛮な攻撃」と非難し、「暴力を直ちに終わらせ、罪のない民間人を意味もなく標的にするのを直ちにやめるよう求める」と声明を出した。

 

欧州連合(EU)のアフガニスタン代表部もツイッターで、「主に女子校の生徒たちを標的にしたこの攻撃は、アフガニスタンの未来を攻撃したことになる」と糾弾した。

 

ノーベル平和賞の受賞者で、女性が教育を受ける権利の拡大を唱えてきたマララ・ユサフザイさんは、「カブールでテロリストらが、女子が大多数を占める生徒たちを狙って、恐ろしい襲撃をした。テロリズムの激化はアフガニスタンの平和と民主主義を危うくしている。世界の指導者たちは結束して学童を守らなくてはならない。カブールの学校で犠牲となった人たちの家族に思いを寄せている」とツイートした。

 

パキスタン出身のユサフザイさんは、2012年にタリバンによって頭部を銃撃されたが、一命を取り留めている。

今回の爆破があった地区では、ほぼちょうど1年前にも、病院の産科病棟が攻撃され、女性24人や、乳幼児を含む子どもらが死亡する事件が起きている。【5月10日 BBC】

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現在のところ犯行声明は出ておらず、タリバンの広報担当者は関与を否定するとともに、犯行を非難しています。

これまでの犯行を考えると、武装勢力イスラム国(IS)の関与が疑われますが、よくわかりません。

 

タリバンにしても、犯行声明が出ていなくても、関与が疑われるような事例もあります。

 

****著名ジャーナリスト射殺 タリバン、前日に警告―アフガン****

アフガニスタン警察によると、南部カンダハルで6日、地元テレビ局で著名だったジャーナリストが射殺された。犯人像は不明だが、反政府勢力タリバンは5日、「偏った報道」を続けているとして同局に警告していた。

 

タリバンの広報担当者はツイッターで「イスラム首長国(タリバン政権時代の正式名称)は暗殺に関与していない」と述べたが、ガニ大統領はタリバンによる「テロ行為だ」と非難した。
 

被害者は大手テレビ局「トロニュース」の司会者として有名になったラワン氏で、年齢は20代。4月にはコミュニケーション担当の専門家として財務省に転職していた。【5月7日 時事】

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いずれにしても、米軍撤退後のアフガニスタンでタリバンなどのイスラム過激派が勢力を強めることは間違いなく、そうした状況で人権や民主主義、特に女性の権利がどのように扱われるのかが非常に懸念されているなかでの今回テロであり、不吉な将来をも予感させます。

 

今後暫定政権に参加するか、あるいはアフガニスタン政府を倒して完全に支配を確立するか、そこらはわかりませんが、影響力が強まるタリバンは、かつての旧政権では女性が教育を受けることや家庭外で働くことを禁じていました。

 

今のタリバンはイスラム主義に反しない範囲で、一定に女性の権利を認めるとの主張もしていますが・・・・

タリバン自身は女子教育を認めても、ISのようなより過激な勢力の跋扈を許すことになれば、結果的に女性への門戸は閉じられてしまいます。

 

****「自転車に乗るためタリバンから逃げた」 東京五輪目指すアフガン女性選手****

アフガニスタンの自転車選手マソマ・アリ・ザダさんは、東京五輪に難民選手団の一員として参加したいと思っている。

 

マソマさんは2016年、家族と共にアフガニスタンを離れた。女性がスポーツを行うことへの社会的圧力が高まり、反政府勢力タリバンからの攻撃を恐れたからだ。

マソマさんは現在、家族を難民として受け入れたフランスで暮らしている。

 

タリバン政権下の1990年代、アフガニスタンでは女性は教育を受けべきではないとされ、働くことも禁じられていた。

 

現在、アフガニスタン政府とタリバンの緊張が高まる中、ジャーナリストや弁護士といった職業の女性が次々と標的にされ、暗殺されている。【5月11日 BBC】

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タリバンはISとは競合していますが、アルカイダ指導者ザワヒリはタリバン指導者に忠誠を誓う関係にあります。

 

“国連の監視チームがタリバンと国際テロ組織「アルカイダ」が今も連携しているとする報告書を2月に発表したことについて、タリバンと対立するアフガン政府の支援者による誤った「証言や情報」に基づくものだとした。ただ、複数のタリバン部隊長は毎日新聞の取材に連携を認めている。”【5月4日 毎日】

 

【米軍 9月11日より早い段階での撤退完了を目指す タリバンも姿勢軟化】
米軍撤退の方は、バイデン大統領は4月末期限を9月11日に延期しましたが、より早い時点での完了(米独立記念日の7月4日)を目指して、すでに撤退が開始されています。

 

****アフガン駐留米軍、前倒しで撤収開始…「必要に応じ戦力投入できる状態」でタリバン警戒***

米国のカリーヌ・ジャンピエール大統領副報道官は29日、記者団に対し、アフガニスタンの駐留米軍が撤収を開始したと明らかにした。バイデン大統領は今月中旬、約2500人規模の駐留米軍の撤収を5月から始めると表明していたが、前倒しで着手した。

 

米軍は撤収に伴い、アフガンの旧支配勢力タリバンが攻勢に出る事態も警戒している。ジャンピエール氏は、空母ドワイト・アイゼンハワーが中東地域にとどまるほか、B52戦略爆撃機も周辺に展開させていると説明し、「必要に応じて追加の戦力も投入できる状態にある」と強調した。

 

トランプ前政権とタリバンが結んだ和平合意では、駐留米軍の撤収期限を4月末と規定していた。バイデン氏は撤収期限を、米同時テロから20年の節目となる9月11日に延期したが、タリバンは、「明白な合意違反だ」と批判し、対抗措置を取ると警告している。【4月30日 読売】

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米中央軍は11日、10日までに全体の6〜12%が撤退を完了したと発表しています。

欧州の同盟国からは、アメリカの早いペースに、延期要請もでています。

 

****米のアフガン撤退計画、欧州の同盟国が延期を要請****

トルコ軍がカブール空港撤収を示唆で

 

バイデン米政権が9月11日までの完了を目指すアフガニスタンからの米軍撤退を巡り、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に一段の猶予を与えるため、欧州の同盟国が延期を要請していることが分かった。米当局者が明らかにした。

 

これにより、2週間かそれ以上、撤退が遅れる可能性が出てきたという。米当局者はこれまで、早ければ7月4日の撤収完了もあり得ると話していた。

 

また当局者によると、数年にわたりカブール国際空港に部隊を配備していたトルコが、米国などNATO加盟国に対して、同国も撤収する可能性があると通知し、問題がさらに複雑になっている。

 

トルコは当初、米軍とNATO連合軍の撤退後までとどまる予定だった。一部の西側諸国は、国際部隊が空港に存在しなくなれば、首都カブールに大使館を維持する方針を見直す可能性があるという。

 

欧州の同盟国による要請は、米国が早期のアフガン撤退と数多くのパートナーとの連携を両立させることの難しさを浮き彫りにする。二十数カ国で構成される米国主導のNATO連合軍は長らく、アフガン駐留に関して「進出も撤退も共に」とする方針を堅持してきた。【5月8日 WSJ】

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一般的に、勢いに乗った前進・進攻より、整然と撤退することが難しいものでしょう。

 

これでタリバンが攻撃を強めれば・・・というところですが、タリバンも4月末からの延期には反対して攻撃も予告していましたが、その後の米軍撤退自体は歓迎し、態度が軟化しているようです。

 

****タリバン、米軍撤退を評価「良い一歩」****

アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは9日、最高指導者アクンザダ師の声明を発表した。米国が昨年2月の和平合意の「違反」を繰り返していると批判したが、バイデン米政権が進める9月11日までの駐留米軍の完全撤退は「良い一歩と考えている」と評価し、態度を軟化させた。

 

イスラム教のラマダン(断食月)明けの祝祭「イード」が近く始まるのに合わせて発表した。タリバンは和平合意に基づき4月末までの米軍の撤退完了を求め、以降も駐留が続いた場合には攻撃すると示唆していた。

 

声明は「もし米国が再び約束を果たせなければ、国際社会は米国に全ての結果の責任を負わせなければならない」と強調。「いかなる犠牲を払っても、祖国の独立と主権を守る用意がある」とし、武力行使の余地も残した。【5月9日 産経】

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【タリバン 政府軍への攻勢を強める中で、ラマダン明けの3日間停戦】

タリバンは米軍には手を出さないとしていますが、アフガニスタン政府との交戦は続いており、攻勢が増しているようです。

 

****タリバン、カブール近郊の区を制圧****

アフガニスタンでタリバン戦闘員が、首都カブールまでおよそ30キロメートルのナルフ区を制圧した。

 

カブール近郊にあるマイダン・ヴァルダク州のアブドゥル・ラフマン・タルク知事は記者団に発言し、タリバン戦闘員が昨夜(5月11日)マイダン・ヴァルダク州のナルフ区に向けて攻撃を開始したと述べた。

 

治安部隊は撤退したと述べたタルク知事は、そうしてナルフ区中心地がタリバンに制圧されたと話した。

一方、国防省は、同区中心地を奪還すべく作戦を開始すると伝えた。

 

タリバンも、同区中心地外の警察署も制圧したと主張した。

タリバン戦闘員は、5月5日にもバグラン州ブルカ区を制圧している。(後略)【5月12日 TRT】

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米軍撤退も進み、政府軍との交戦もタリバンペースで進んでいる余裕でしょうか、タリバンはラマダン明け停戦を発表しています。

 

****タリバン“断食月明け停戦”和平交渉進むか****

アフガニスタンの反政府勢力タリバンは10日、今週始まる、イスラム教の断食月ラマダン明けの祝日の3日間、政府軍との戦闘を停止すると発表しました。

地元メディアによりますと、タリバンが10日に発表した声明では、「ラマダン明けの祝日の3日間は、敵に対する全ての攻撃を停止する」としています。攻撃を受けた場合は自衛するよう、戦闘員に指示していますが、ガニ大統領も政府軍に停戦を指示したということです。

アフガニスタンでは駐留するアメリカ軍の撤収作業が進むなか、各地で政府軍とタリバンの戦闘が続いています。停戦をきっかけに双方が歩み寄り、和平交渉を進められるかが焦点ですが、タリバンは過去にも同様の停戦を宣言し、停戦期間が終われば戦闘を再開しています。

アフガニスタンでは、8日に首都カブールの女子校の近くで爆発があり、女子生徒ら60人以上が死亡したほか、9日と10日には南部の州などで爆発が相次ぎ、あわせて13人が死亡するなど事件が相次いでいます。いずれも犯行声明は出ていませんが、政府はタリバンによるテロとの見方を示しています。【5月11日 日テレNEWS24】

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今の段階でタリバンが和平に応じることは考えにくいので、あくまでもラマダン明けに限定した停戦でしょう。

 

ただ、タリバンは4月下旬から延期された和平に関するトルコでの国際会合へは「米軍の駐留延長は合意違反」だとして出席を拒否していますが、米軍撤退の進行に伴って、こちらはそのうち動きが出てくるのではないでしょうか。

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