孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド・パキスタン 感染対策に優先する宗教行事 ネパールからのエベレスト超えを警戒する中国

2021-05-10 23:21:31 | 南アジア(インド)

(パキスタン・ラホールで、預言者ムハンマドの養子アリを記念する行事に参加したイスラム教シーア派信徒ら(2021年5月4日撮影)【5月4日 AFP】 マスク・ソーシャルディスタンスなど関係ない世界です)

 

【インド モディ政権は感染対策より選挙活動・宗教行事を優先 結果、感染爆発】

インドの新型コロナ感染爆発については、これまでも取り上げてきたとkろです。

4月21日ブログ“インド  コロナ1日30万人 「ワクチン大国」も国内需給ひっ迫 英・日首相、訪印中止

4月27日ブログ“インド  止まらない感染爆発 医療用酸素の不足で死者も 米中は支援でつばぜり合い

 

4月21日ブログの時の新規感染は一日30万人、4月27日ブログのときが35万人でしたが、現在は40万人前後、死者は一日4000人を超えたいうことで、爆発状態が続いています。

 

一応数字上は“天井を突き破るような勢い”で増加していた新規感染者のグラフは、ここ数日40万人レベルで推移していますので、拡大ペースは鈍ったようにも見えます。

 

ただ、もともと実際の感染者は発表される数字よりはるかに多く、100万人規模ではないかという推測もなされています。

病院に入れず車で待機する患者、酸素を求めて駆けずり回る家族・・・といった混乱ぶりを見れば、少なくと公式発表の数字より実態はもっと厳しいことは想像できます。

 

こうした状況で、感染対策より選挙活動・宗教行事を優先し、感染対策に消極的なモディ首相への批判が高まっています。

 

****インド、対応後手のモディ政権に批判 選挙・宗教行事で感染拡大―新型コロナ****

3月中旬から新型コロナウイルス感染の「第2波」を迎えたインドで、対応が後手後手に回ったモディ政権が批判にさらされている。国政与党が勝利を見込んだ地方議会選、与党支持者の多いヒンズー教の宗教行事を適切に規制せず、人が密集する機会が相次いでいた。

 

モディ首相は、感染の「第1波」が収まっていた1月下旬の演説で「インドは世界で最も多くの人命を救うのに成功した国の一つだ」と自賛した。1月にワクチン接種が開始されたことと併せ、人心の緩みを生んだ。
 

それから約3カ月で事態は暗転。1日の新規感染者数は7日、41万4000人を超え、連日の世界最多更新が続いている。
 

3~4月の地方議会選では、国政与党インド人民党(BJP)は勢力拡大を狙い、モディ氏ら幹部が何度も現地入りした。マスク非着用の群衆を前に声を張り上げていた。
 

また、ヒンズー至上主義を掲げるBJP政権は3月、3年に1度のヒンズー教行事「クンブ・メラ」への規制を渋った。参加者はマスクをせず「密」な状態で、ガンジス川で沐浴(もくよく)。その後帰郷し、感染を広げた疑いが強い。
 

4月19日には、医療崩壊の危機にひんしていた首都ニューデリーがたまらずロックダウン(都市封鎖)入りした。すると、モディ氏は翌日の演説で「国民をロックダウンから救う」と強調、政敵ケジリワル・デリー首都圏政府首相への批判を先行させた。支持率低下を恐れ、昨年のような全土封鎖にモディ氏は消極的だ。
 

医療崩壊に際しても、政権からは「医療用酸素は不足していない」「ワクチン不足は根拠がない」といった現状無視の発言が相次ぐ。インターネット上では、モディ氏辞任を求める声が広がってきた。英BBC放送は、モディ氏の選挙区、ヒンズー教聖地バラナシから「モディ氏は隠れている。BJP地方幹部も(批判を恐れ)携帯電話の電源を切っている」と怒る地元住民の声を報じた。【5月8日 時事】

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“モディ政権は、感染対策を地方政府に「丸投げ」している状態で、全土で統一した歩調が取れていない。”【下記 時事】という状況にもあります。

 

****インド首都の封鎖1週間延長=3週間経ても続く医療崩壊―医学誌、異例の批判****

インドの首都ニューデリーを管轄するデリー首都圏政府は9日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため4月19日から実施中のロックダウン(都市封鎖)を17日まで1週間延長すると発表した。延長は3度目。3週間に及んだ封鎖でも「医療崩壊」状態を脱することができず、苦境が続く。

 

インド政府によると、9日朝(日本時間同午前)までの24時間の全土での新規感染判明数は40万3738人。40万人を超えるのは4日連続。死者も2日続けて4000人を上回った。

 

首都では、4月に1日2万5000人近かった新規感染者数が最近、2万人以下で推移する。これが数少ない希望となっている。

 

デリー首都圏政府のケジリワル首相は9日、記者会見し「陽性率は下がっているが、依然、余裕を持つことはできない」と訴えた。間引き運転中の地下鉄を10日から運休し、より厳しい制限を導入する。

 

首都以外の各州も次々に都市封鎖入りした。ただ、インド紙タイムズ・オブ・インディアは「封鎖前日の南部チェンナイでは、通りが混雑している」と写真入りで報じ、感染対策が徹底されていないと伝えた。

 

モディ政権は、感染対策を地方政府に「丸投げ」している状態で、全土で統一した歩調が取れていない。8日付の英医学誌ランセットは論説で、モディ政権が十分な対策を取らず、支持母体のヒンズー教徒の宗教行事や、地方議会選での大規模な選挙運動を許し「自ら国民的大災害を招いた」と異例の批判を行った。「政府が失敗を素直に認め」対策を立て直すことが重要だと指摘した。【5月9日 時事】 

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モディ首相には感染第1波の時のように全土封鎖を命じるよう圧力が強まっています。

もっとも、貧困層が多いインドでは、封鎖による経済活動停止は日本以上に市民の生活を直撃し、死活問題ともなりますので、モディ首相が躊躇しているのもそのあたりがあってのことでしょう。

 

ただし、十分な対策を取らず、宗教行事や選挙運動を許してきたことは批判は免れません。

ヒンズー至上主義のモディ首相にとっては、ヒンズーの重要な宗教活動を止めることは、支持基盤からの強い抵抗を受けますので、できなかったのでしょう。

 

【パキスタンでも宗教優先 「われわれの祈りは違う」「アラー(神)はわれわれにやさしい」】

宗教活動が感染拡大の原因になっているのはインドだけでなく、多くの国でみられるところ。

韓国でも教会で大規模クラスターが発生し全土に拡大しましたし、アメリカやイスラエルでも正統派ユダヤ教の活動がやはり問題となったりもしました。

 

宗教とは縁がない私のような人間には理解できないところですが・・・・

 

お隣、パキスタンでも。

ただ、インドの教訓に対し、「彼ら(インド人)は神を信じていない。われわれはイスラム教徒だ」と意に介さないとか。

 

こうした宗教的情熱に対して、イムラン・カーン首相も「(インドと違って)アラー(神)はわれわれにやさしい」と発言するなど、棹差すことは出来ない様子です。

 

****イスラム教行事に約1万人参加か、コロナ感染拡大懸念 パキスタン****

パキスタン東部ラホールで4日、イスラム教シーア派の行事があり、当局の推計で8000〜1万人が参加した。密集して行進する参加者の多くがマスクを着けていなかった。

 

隣国インドで、同様の祭りが感染爆発の要因になったとみられていることから、パキスタンでも感染拡大を懸念する声が上がっている。

 

預言者ムハンマドの養子アリを記念するこの行事に先立ち、連邦政府は大人数での集会を禁じる通告を出していたが、地元の宗教指導者らとの協議で同意が得られなかった。

 

インドでは最近、何百万人もの巡礼者が集まるヒンズー教の大祭「クンブメーラ」など複数の祭事が開催され、過去最悪規模の感染爆発を引き起こしたとみられている。

 

パキスタンは現在、流行第3波の抑え込みに苦慮している。累計感染者数は80万人以上、死者は1万8000人以上に上っている。新型ウイルスワクチン接種を済ませた人はわずかしかいない。 【5月4日 AFP】

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****「神はわれわれにやさしい」感染急増でもモスクに人殺到 パキスタン****

新型コロナウイルスの感染が急拡大しているパキスタンでは、学校や飲食店は閉鎖され、夕方になると商店にはシャッターが下ろされ、軍隊も動員されている。だが、夜になると各地のモスク(イスラム礼拝堂)には敬虔(けいけん)なイスラム教徒が集まり、祈りをささげている。

 

隣国インドで新型ウイルスが猛威を振るっていることを受け、パキスタン当局は規制を強化し、イスラム教の断食月「ラマダン」の終わりを祝う大祭「イード・アル・フィトル」期間中の移動を禁じた。

 

だが、当局は宗教的な集まりには目をつぶっている。極めて保守的なイスラム国家であるパキスタンでは、宗教行事の取り締まりは広く反発を招く恐れがあるためだ。

 

パキスタンの新型ウイルスの累計感染者は84万人以上、死者は1万8500人に上っている。だが、検査数は限られ、医療体制は脆弱(ぜいじゃく)で、実際の数ははるかに多いとの懸念もある。

 

政府は新型ウイルス対策を守るよう市民に懸命に呼び掛けてはいるものの、モスクはまるで別世界だ。

 

ラワルピンディの歴史的モスク、マルカジ・ジャミアを管理するモウラナ・ムハンマド・イクバル・リズビ師は、イスラム教徒はほとんど恐れておらず、インドと比較することは無意味だと話す。

 

同師は、「われわれの祈りは違う」と主張。少なくとも自分が見ている限り、感染対策は取られていると強調した。

「彼らは神を信じていない。われわれはイスラム教徒だ」

 

このような考えは社会の隅々まで浸透している。イムラン・カーン首相は6日、「インドでは人が道端で死んでいく。(中略)他国と比較すると、アラー(神)はわれわれにやさしい」と述べた。

 

今週には各地で、シーア派のイマーム(宗教指導者)、アリを記念する祭事が行われた。

首都イスラマバードで行われた行事では、最初は注意深くしていた人々も、興奮が高まるとマスクを外し、密集した状態で歌ったりしていた。

 

インドの医療関係者は、世界最悪の感染爆発を引き起こした大きな要因の一つとして、宗教行事を挙げている。

 

パキスタン当局は、規制違反の証拠があるにもかかわらず、ガイドラインは守られていると主張している。

宗教問題・異教徒間融和省の報道官は、「新型ウイルス感染対策ガイドラインが守られている場所が一つあるとすれば、それはモスクだ」と強調した。 【5月7日 AFP】

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物事の価値観はひとそれぞれですから、コロナ感染より宗教活動を優先する人々がいることは不思議ではありませんが、それならそれで、「コロナで死んでもかまわないから、信仰を続ける」と言って欲しいですね。

「ガイドラインは守られている」とウソをついたり、「アラー(神)はわれわれにやさしい」なんて訳の分からないことを言うのではなく。

 

もっとも、日本でもオリンピックやってもコロナは大丈夫という主張もあるので、似たようなものかも。

 

【リトルインド化するネパール 感染のエベレスト越えを警戒する中国】

インドの感染爆発は当然のように隣国ネパールに及んでいます。医師も病院も足りない“リトルインド”と化しているとの声も。

 

****ネパールのコロナ感染、1200%増以上 隣国インドに連動****

新型コロナウイルスの感染急拡大に歯止めが利かないインドの隣国ネパールで今年4月半ば以降、1日の新規感染者数が7日間で平均1200%以上の増加を示していたことが6日までにわかった。

 

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計データをCNNが調べて判明した。ネパール政府の統計によると、今月4日に判明した過去24時間内での新規感染者は7587人の過去最多で、55人の新たな犠牲者数も同様だった。

 

ネパールでは今年2月から3月初旬にかけ新規感染者数が減り始め、50〜100人の間で推移してきた。しかし、インドの第2波が猛威を振るい始めた4月半ばになり、感染の急加速が顕著となり、数千人規模に拡大していた。

 

インド国内で初めて突きとめられていたウイルス変異株の出現も確認された。同国の公衆衛生や救急救命対策の基盤設備には限度があり、インドで起きているような大規模な感染拡大に到底対処し切れないとの懸念も出ている。

 

この中で、ネパールのシャルマ・オリ首相は3日、全国向けのテレビ演説で、同国での国際航空路線の離着陸を6日午前0時から禁止し、同月14日まで維持するとの対策を発表した。国内線の便は3日から14日まで欠航するともした。

 

さらに、対インド国境沿いの13カ所にある検問所ではネパール国籍の保持者の帰国は認めるが、現場での新型コロナ検査の陰性診断の結果が必要と指摘。陸路を通じての外国人の入国は全て禁止するとした。【5月8日 CNN】

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2861万人というネパールの人口を考えると、24時間内での新規感染者7587人というのはインドレベルの感染状況です。医療資源はインドにも及ばないネパールですから、犠牲者も・・・。

 

ネパール政府は外国からの流入を心配しているようですが、ヒマラヤでネパールと接する中国は、ネパールからの感染者流入を警戒しています。エベレスト山頂に「隔離線」(どういうものかは、よくわかりませんが)を設けるとか。

 

****中国がエベレスト山頂に「隔離線」 コロナ越境阻止へ****

中国国営の新華社通信は9日、世界最高峰エベレストのネパール側で登山者30人以上が新型コロナウイルス感染症疑いの体調不良を訴えたことを受け、中国当局が山頂に「隔離線」を設置すると報じた。

 

中国は2019年末に世界で初めて新型コロナウイルスが確認された国だが、厳格なロックダウン(都市封鎖)や国境封鎖を行い、現在は国内の感染をおおむね抑え込んでいる。

 

一方、ネパールは感染拡大の第2波に直面。エベレストのネパール側ベースキャンプでは、ここ数週間で30人以上の登山者が体調不良により緊急下山しており、登山シーズンへの新型コロナウイルスの影響が懸念されている。

 

新華社によると、チベット自治区当局は記者会見で、エベレストの山頂や中国側の南斜面とネパール側の北斜面の接する場所で「最も厳格な防疫措置」を講じ、登山者同士の接触を避けると発表した。また、中国チベット登山協会会長が、山頂に登山ガイドが「隔離線」を設置すると説明したという。

 

どのような方法で「隔離線」を設置するかは明らかにしていない。

 

中国は新型コロナウイルス流行を理由に、昨年から外国人のエベレスト登山を禁止している。一方のネパールは、コロナ禍で観光業が壊滅的な打撃を受ける中、登山客を呼び込もうと記録的な数の登山許可証を発行している。 【5月10日 AFP】

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今や、エベレスト山頂も警戒すべき「密」な状況にあるようです。

 

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