
(昨年9月に「日本風情街」としてリニューアルオープンした蘇州の日本街)淮海街に並ぶ日本料理店や日本風居酒屋(2020年9月27日撮影)【2020年9月30日 AFP】)
【日中の印象の非対称性】
日本では中国に対する印象は悪化しているのに対し、中国の日本への印象は比較的高水準を維持している・・・という非対称性は周知のところ。
****中国印象「良くない」89% 共同調査、日本の感情悪化****
日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際出版集団は17日、両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。中国に「良くない」印象を持つ日本人は前年比5.0ポイント増の89.7%となり、対中感情の悪化を裏付けた。
「日中関係は重要」と考える中国人が4人に3人に上る一方、日本人は調査が始まった2005年以来初めて7割を切った。
言論NPOの工藤泰志代表は「日本は尖閣問題や新型コロナウイルスでの中国の対応に疑念を深めている。一方、中国は米中対立を受け対日関係改善に期待を寄せているようだ」と分析した。
中国に「良い」印象を持つ日本人は5.0ポイント減の10.0%にとどまった。この1年で中国の印象が「悪くなった」との回答は14.2ポイント増え37.0%。中国に良くない印象を持つ理由(複数回答)として最も多かったのは「沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海、領空の侵犯」(57.4%)だった。
日本への印象を「良い」とした中国人は45.2%、「良くない」としたのは52.9%で昨年とほぼ同水準。良くない印象を持つ理由としては「侵略の歴史を謝罪、反省していない」(74.1%)が最も多かった。
「日中関係を重要」とする中国人は74.7%と7.7ポイント増えた一方、日本人は8.5ポイント減の64.2%。「なるべく早く首脳の相互訪問を実現すべきだ」と回答した日本人は18.8%で、延期された習近平国家主席訪日への期待感が低いことを示した。
調査は今回で16回目。9~10月に日本で千人、中国で1571人から回答を得た。【2020年11月17日 日経】
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上記は昨年9~10月の調査ですが、今も概ね同様の傾向でしょう。
中国人の日本への感情には、評価する傾向が増えているものの、「侵略の歴史」を忘れてはならないというネガティブな感情も根深くあって微妙であるという話は、7月2日ブログ“中国人の日本に対する微妙な感情・・・最近の話題から”でも取り上げました。
中国人自身が、日本へ好印象を抱く国民が多いことをどのように整理したらいいかとまどっているようにも見えます。
【批判・戸惑いも】
先ず、対日感情の現状を見ると、中国ネットでも対日感情の好転は見て取れるようです。
****中国ネット民「日本人のことをどう思う?」 対日感情の「改善」示す声****
近年、訪日中国人の増加と共に中国では対日感情が改善してきた。過去の歴史問題ゆえに日本に対してネガティブな見方をしている中国人もまだ多いとも言われるが、実際のところはどうなのだろうか。
中国のQ&Aサイトである知乎にこのほど、「日本人のことをどう思う?」と問いかけるスレッドが立ち、多くの中国人が日本や日本人に対して率直に議論を交わしている。
中国では近年、歴史問題などで憎むべきは「日本の軍国主義」であり、現代の日本人とは切り離して考えるべきだという声が多く聞かれるようになったが、スレッドに寄せられたコメントをみてみると、「一口で日本人と言っても色々な人がいるので分けて考えるべきだ」というコメントが多く見られた。
中国のQ&Aサイトである知乎にこのほど、「日本人のことをどう思う?」と問いかけるスレッドが立ち、多くの中国人が日本や日本人に対して率直に議論を交わしている。
中国では近年、歴史問題などで憎むべきは「日本の軍国主義」であり、現代の日本人とは切り離して考えるべきだという声が多く聞かれるようになったが、スレッドに寄せられたコメントをみてみると、「一口で日本人と言っても色々な人がいるので分けて考えるべきだ」というコメントが多く見られた。
「良い人も悪い人もいて、良い人だけが日本人全体を代表しているわけではなく、悪い人だけが日本人全体を代表しているわけでもない」と指摘し、それゆえ日本人全体を一括りにして論じることには意味がないと指摘している。
同様の意見はほかにもあり「同じ日本人でも細かく分けるべきだ。地域や国で好き嫌いを区別すべきではない」、「日本は1億人以上の人口で、千差万別だ。好きとか嫌いとかでまとめて論じるべきではないと思う」などの冷静なコメントが多かった。
なかには、明確に「日本人は嫌い」という声もあったが比較的少数で、「善良な日本人もいるし、悪人もいる」、「右翼分子やファシスト主義者は嫌いだが、その他の日本人が嫌いなわけではない。ほとんどの日本人の先祖はファシスト主義者の犠牲者だ」などのコメントが多く、反日感情をむき出しにする人はほとんどいなかった。やはり対日感情はずいぶんと改善していると言えそうだ。【7月5日 Searchina】
同様の意見はほかにもあり「同じ日本人でも細かく分けるべきだ。地域や国で好き嫌いを区別すべきではない」、「日本は1億人以上の人口で、千差万別だ。好きとか嫌いとかでまとめて論じるべきではないと思う」などの冷静なコメントが多かった。
なかには、明確に「日本人は嫌い」という声もあったが比較的少数で、「善良な日本人もいるし、悪人もいる」、「右翼分子やファシスト主義者は嫌いだが、その他の日本人が嫌いなわけではない。ほとんどの日本人の先祖はファシスト主義者の犠牲者だ」などのコメントが多く、反日感情をむき出しにする人はほとんどいなかった。やはり対日感情はずいぶんと改善していると言えそうだ。【7月5日 Searchina】
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別に「日本人は良い人だ」と言ってもらう必要はなく、「一口で日本人と言っても色々な人がいる」という当たり前のことを理解してもらえれば、今後の関係を構築していくうえで日本としても十分でしょう。
もちろん、日本に好印象を抱くのは「侵略の歴史」を軽視しているからではないか・・・といったネガティブな意見もあります。
****2000年代生まれの中国人は、日本との歴史を知らないのか?=中国メディア****
中国のポータルサイト・百度に9日、日本による文化輸出の影響を強く受けている中国の「00後」すなわち2000年代生まれの青少年が近代の日中関係史を忘れていしまっているのではないかとする記事が掲載された。
記事は、日本のアニメが中国の市場を席巻する状況がすでに長きに渡って続いており「たしかに日本のアニメは国産アニメより質が高く、ストーリーも魅力的であることは、認めざるを得ない」とした。そして、聞き覚えのあるアニメタイトルの大部分は日本からやってきた作品であり、特にスタジオジブリ作品は中国でも非常に人気が高いと伝えた。
また、青少年は特に日本の文化を受け入れやすく、日本の女子高生の制服をイメージしたJKファッションや、日本の二次元文化を代表するロリータファッションを好んで身につける若者も少なくないと指摘。「人は総じて、新しいものに興味を感じ、日常にありふれたものに対してはあまり興味を示さないものなのだ」とした。
その上で「だからといって、かつて日本が中国に対して犯した罪の行いを忘れるようなことはあってはならない」と主張。歴史はたしかに「過ぎ去ったもの」ではあるものの、その記憶をないものにして良いはずはないとしたほか「ましてや日本が中国侵略の歴史を認めようとしない状況ではなおのことだ」と論じている。
記事は、日本のアニメが中国の市場を席巻する状況がすでに長きに渡って続いており「たしかに日本のアニメは国産アニメより質が高く、ストーリーも魅力的であることは、認めざるを得ない」とした。そして、聞き覚えのあるアニメタイトルの大部分は日本からやってきた作品であり、特にスタジオジブリ作品は中国でも非常に人気が高いと伝えた。
また、青少年は特に日本の文化を受け入れやすく、日本の女子高生の制服をイメージしたJKファッションや、日本の二次元文化を代表するロリータファッションを好んで身につける若者も少なくないと指摘。「人は総じて、新しいものに興味を感じ、日常にありふれたものに対してはあまり興味を示さないものなのだ」とした。
その上で「だからといって、かつて日本が中国に対して犯した罪の行いを忘れるようなことはあってはならない」と主張。歴史はたしかに「過ぎ去ったもの」ではあるものの、その記憶をないものにして良いはずはないとしたほか「ましてや日本が中国侵略の歴史を認めようとしない状況ではなおのことだ」と論じている。
記事は、若い世代が日本の文化を愛好するということは、異文化どうしが化学反応を起こしてさらなる良い文化を生み出す可能性を秘めていることを意味し、それ自体は決して悪いことではないとする一方で「しかし同時に子どもたちは、過去の悲惨な歴史を葬り去ってはならない。自分が今生活している幸福な環境は、前の世代の人たちが命と引き換えにして得たものであることを、永遠に忘れてはならないのである」と結んだ。【7月11日 Searchina】
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上記論調も、若い世代が日本の文化を愛好する自体は否定しておらず、従来の紋切型の反日論調に比べたら随分改善しているようにも見えます。
また、日本へ好印象を持つ国民が多いことに戸惑う声も。
****なぜだ! 中国人はどうして日本を褒めてばかりいるのか=中国ネット****
(中略)中国のQ&Aサイト知乎にこのほど、「日本人の対中イメージは非常に悪いというのに、なぜ中国人は日本を褒めてばかりいるのか」と疑問を投げかけるスレッドが立てられ、中国人が議論を交わしている。
寄せられた意見で最も多かったのが「メディアの影響」だとするコメントだ。中国では大手メディアが日中友好を強調する傾向にあると主張する一方、日本では大手メディアは中国のネガティブな情報ばかりを強調しているからだとの主張があった。
また、「トラはネコがそばにいるとかわいいと思うが、ネコはトラをかわいいとは思わない。トラがどんどん大きくなって自分の場所を取られていったらなおさらだ」と、例えで説明する人もいたが、それだけ中国が強大になったと言いたいのだろう。
ほかには、「大部分の中国人は日本のことは褒めてなどいない」と、スレ主の意見そのものに異議を唱える人も少なくなかった。日本を称賛している中国人はごく一部に限られると主張している。どのコメントを見ても、中国の印象が悪いのは自らに問題があると考えている中国人は皆無と言ってよく、日本が称賛されるのは日本が本当に良いところだからという意見もほとんどなかったのが少々残念なところだ。【7月4日 Searchina】
寄せられた意見で最も多かったのが「メディアの影響」だとするコメントだ。中国では大手メディアが日中友好を強調する傾向にあると主張する一方、日本では大手メディアは中国のネガティブな情報ばかりを強調しているからだとの主張があった。
また、「トラはネコがそばにいるとかわいいと思うが、ネコはトラをかわいいとは思わない。トラがどんどん大きくなって自分の場所を取られていったらなおさらだ」と、例えで説明する人もいたが、それだけ中国が強大になったと言いたいのだろう。
ほかには、「大部分の中国人は日本のことは褒めてなどいない」と、スレ主の意見そのものに異議を唱える人も少なくなかった。日本を称賛している中国人はごく一部に限られると主張している。どのコメントを見ても、中国の印象が悪いのは自らに問題があると考えている中国人は皆無と言ってよく、日本が称賛されるのは日本が本当に良いところだからという意見もほとんどなかったのが少々残念なところだ。【7月4日 Searchina】
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トラとネコの例えは、あながち的外れでもないでしょう。
中国側の日本への好印象は、自分たちへの一定の自信がもたらす「余裕」がもたらすものでもあるでしょうし、日本の中国へのネガティブ感情の背後には、どんどん大きくなる中国の存在への恐怖・不安もあってのものでしょう。
そのあたりは日本側の問題です。
こうしたネガティブな声も多く存在するため、日本文化が好きな中国人が日本に対する好印象を語るときは必ず「ある言葉」を最後に付け加えるとか。
****「日本文化が好き」と語る中国ネット民が必ず付け加える「ある言葉」とは****
中国のネット上では、日本に関係する話題も多く存在するが、特に最近多く見かけるのが「日本文化は好きだけど、日本の過去の悪行は絶対に許せない」といった類の言い回しだ。中国のQ&Aサイト知乎にこのほど、この言い回しについて考察するスレッドが立てられた。
スレ主によれば、最近はこの種の言い方をする中国人が「非常に多くなった」という。あえて「日本の過去の悪行は絶対に許せない」と一言付け加えるのは一体なぜなのだろうか。
スレ主の疑問に対し、中国人ネットユーザーからさまざまな回答が寄せられた。ある中国人は「別に横並びで言っているわけではない」と主張し、日中関係の発展は「歴史を忘れない」ことが大前提であるため、正しい言い回しだと述べている。
スレ主によれば、最近はこの種の言い方をする中国人が「非常に多くなった」という。あえて「日本の過去の悪行は絶対に許せない」と一言付け加えるのは一体なぜなのだろうか。
スレ主の疑問に対し、中国人ネットユーザーからさまざまな回答が寄せられた。ある中国人は「別に横並びで言っているわけではない」と主張し、日中関係の発展は「歴史を忘れない」ことが大前提であるため、正しい言い回しだと述べている。
そして、中国国内の考え方の主流は今でもマルクス主義(唯物史観)であり、日本文化のポジティブな面を認めると同時に、かつてのファシズムを批判すべきであるため、この言い回しをするのは「良いことだ」と主張した。
一方、別の中国人ユーザーは「これは前半部分の『日本文化が好き』というのがあくまでも主旨」であり、「後半の『日本の悪行は許せない』は中国の他のネットユーザーに向けて言っている」と強調し、つまり、前半が本心で後半は保身のためと説明した。
一方、別の中国人ユーザーは「これは前半部分の『日本文化が好き』というのがあくまでも主旨」であり、「後半の『日本の悪行は許せない』は中国の他のネットユーザーに向けて言っている」と強調し、つまり、前半が本心で後半は保身のためと説明した。
これは核心を突いたコメントと言えるだろう。一言付け加えずに「日本文化が好き」だと言えば、愛国青年たちから批判されてしまう可能性があるためだ。
同様の回答は比較的多く寄せられており、「日本文化が好きとしか言わなかったら、精神日本人と見なされてしまう。だから後半の言葉を付け足すことでそれを否定しているのだ」というコメントもあった。それだけ中国のネット上では、日本についての肯定的な意見を述べることはリスクが伴うということだろう。【7月4日 Searchina】
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【日本に対する態度や見方は中国人自身にとっても悩ましい問題】
中国人にとって、日本との向き合い方はなかなか悩ましいもののようです。
****頭を悩ます中国ネット民「我々は日本にどのような態度を取るべきなのか」*****
日本と中国の間には戦争という悲しい過去もあるのは事実だが、今では国交正常化から約50年が経過し、経済的な結びつきは非常に強くなっている。中国のQ&Aサイト・悟空問答にこのほど、中国人は「日本に対してどのような態度を取るのが正しいのか」と題するスレッドが立てられ、中国人が議論を交わしている。
日本に対する態度や見方は中国人自身にとっても悩ましい問題のようで、意見が分かれる結果となった。最も多かった回答は「両極端を避ける」というものだった。ある中国人ユーザーは、日本を盲目的に崇拝して「精神日本人」になるのも、「異常なほどの反日」になるのも両極端だと指摘した。「日本の良いところを学ぶことと感情は切り離すべきだ」と訴えるユーザーもいた。
もちろん、「極端」な考え方のユーザーも一部いて、「日本が中国に友好的になっても一時的なので、信用してはいけない」と強い警戒感を示していた。また、日本を「永遠の敵」と断定したユーザーもおり、反日感情の強い中国人ユーザーもやはり一定数いるようだ。
他には、そもそも「正しい見方や態度というものはない」、とスレ主の前提に異議を唱えるユーザーもいた。この中国人ユーザーは教師としていろいろな学校で教鞭をとってきた経験から、中国の教育に疑問を持ち、「子どもたちには、自分で考える力を身につけて欲しい」と伝えている。中国のエリート校の生徒たちは、みんな異口同音に「日本はかつて軍国主義だった」と言うが、軍国主義とは何か本当に分かって言っているのかと疑問に思うそうだ。実際の日本を知るには、「百聞は一見に如かず」で一度日本に行ってみるのが一番だと意見を述べている。
いろいろな意見はあるものの、極論は比較的少ないようだった。大抵の中国人ユーザーが「過去の歴史は忘れないが、それとは切り離して日本と友好関係を築き、学べることは学びたい」と思っていることが感じられた。反日活動があった2012年頃と比べれば、中国人の対日感情は明らかに好転していると言えそうだ。【7月10日 Searchina】
日本に対する態度や見方は中国人自身にとっても悩ましい問題のようで、意見が分かれる結果となった。最も多かった回答は「両極端を避ける」というものだった。ある中国人ユーザーは、日本を盲目的に崇拝して「精神日本人」になるのも、「異常なほどの反日」になるのも両極端だと指摘した。「日本の良いところを学ぶことと感情は切り離すべきだ」と訴えるユーザーもいた。
もちろん、「極端」な考え方のユーザーも一部いて、「日本が中国に友好的になっても一時的なので、信用してはいけない」と強い警戒感を示していた。また、日本を「永遠の敵」と断定したユーザーもおり、反日感情の強い中国人ユーザーもやはり一定数いるようだ。
他には、そもそも「正しい見方や態度というものはない」、とスレ主の前提に異議を唱えるユーザーもいた。この中国人ユーザーは教師としていろいろな学校で教鞭をとってきた経験から、中国の教育に疑問を持ち、「子どもたちには、自分で考える力を身につけて欲しい」と伝えている。中国のエリート校の生徒たちは、みんな異口同音に「日本はかつて軍国主義だった」と言うが、軍国主義とは何か本当に分かって言っているのかと疑問に思うそうだ。実際の日本を知るには、「百聞は一見に如かず」で一度日本に行ってみるのが一番だと意見を述べている。
いろいろな意見はあるものの、極論は比較的少ないようだった。大抵の中国人ユーザーが「過去の歴史は忘れないが、それとは切り離して日本と友好関係を築き、学べることは学びたい」と思っていることが感じられた。反日活動があった2012年頃と比べれば、中国人の対日感情は明らかに好転していると言えそうだ。【7月10日 Searchina】
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やや政治的な問題にも触れるようなものとしては、以下のような記事も
“中国ネット民「これを見てくれ! 日本はODAでこんなに援助してくれていた」”【7月6日 Searchina】
“「福島産農産品は安全」と発言の中国人研究者、「日本人のような精神」ネットで批判集中”【7月9日 読売】
“日本と中国が「同盟」を組む可能性ってあると思う? 中国ネット民の見方は”【7月10日 Searchina】