(ソマリアの首都モガディシオ郊外で、栄養失調の子どもを抱く母親=2022年6月(AP=共同)【6月3日 共同】)
【世界気象機関(WMO) 「気候変動は2022年も世界中でその進行を続けている」】
気候変動に伴う地球規模の異常現象・危機については日々報じられているところですが、世界気象機関(WMO)は年次報告書『2022年 地球気候の現状に関するWMO報告書』で「気候変動は2022年も世界中でその進行を続けている」と報告しています。
****世界気象機関(WMO)年次報告書:気候変動は進行し続けている(2023年4月21日付 WMO プレスリリース・日本語訳)****
『2022年 地球気候の現状に関するWMO報告書(The WMO State of the Global Climate report 2022)』は、主要な気候指標である温室効果ガス、気温、海面上昇、海洋熱と海洋酸性化、海氷と氷河に焦点を当てています。また、気候変動と異常気象の影響についても強調しています。
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干ばつ、洪水、熱波が世界の大部分に影響を与え、損失額が増加している
過去8年間の世界の平均気温が最高を記録した
海面上昇と海洋熱が記録的な水準にあり、この傾向は今後何世紀も続くと予想される
南極の海氷域が史上最小にまで減少した
欧州では氷河の融解記録が更新された
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ジュネーブ、2023年4月21日(WMO) — 世界気象機関(WMO)の年次報告書によると、山頂から深海に至るまで、気候変動は2022年も世界中でその進行を続けました。
干ばつ、洪水、熱波があらゆる大陸のコミュニティーに影響を与え、何十億ドルもの損失をもたらしました。南極の海氷域が史上最少にまで減少し、欧州の氷河のいくつかは、文字通りグラフに収まりきらないほどの勢いで融解しました。
『2022年 地球気候の現状に関するWMO報告書』は、記録的水準にある温室効果ガスが、地上、海洋、大気中で引き起こしている地球規模の変化を明らかにしています。
2015年から2022年の世界の気温は、過去3年間のラニーニャ現象による冷却効果があったにもかかわらず、記録上最も温暖な8年間でした。2022年に再び過去最高水準に達した氷河の融解と海面上昇は、今後最大で数千年にわたって続くと考えられます。
「温室効果ガスの排出量が増加を続け、気候変動が続く中、世界中の人々が異常気象と気候現象の深刻な影響を受け続けています。例えば2022年の、東アフリカで続いた干ばつ、パキスタンでの記録的な豪雨、中国とヨーロッパにおける過去に例を見ない熱波によって数千万人が影響を受け、食料供給が不安定化し、集団移住が加速し、数十億ドルの損失と損害が発生しました」WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、このように述べています。(中略)
報告書によると、有害な気候および気象関連事象が一年を通じて新たな強制移住をもたらし、年初時点ですでに移住生活を送っていた9,500万人のうち、その多くの人々の状況をさらに悪化させました。(後略)【5月24日 国際連合広報センター】
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【東アフリカ 過去40年で最長となる干ばつ 深刻な食料不安 ソマリアの危機的状況】
上記報告書は東アフリカに関しては以下のようにも。
****干ばつに襲われた東アフリカ****
雨季の降水量が5年連続で平年を下回りました。これは過去40年で最長となる期間です。2023年1月現在、干ばつその他のショックの影響によって東アフリカ全域で推定2,000万人以上が深刻な食料不安に直面しています。【同上】
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“過去40年で最長となる干ばつ”の一方で、極端な豪雨も。こうした極端な異常気象が“気候変動”の特徴でしょうか。
****豪雨で川が氾濫、20万人退避 ソマリア****
アフリカ東部ソマリアの中部で、豪雨に伴う河川の氾濫のため約20万人の住民が避難を余儀なくされた。当局者が13日、AFPに語った。
中部ヒラン州でシェベリ川の堤防が決壊。ベレドウェインでは、退避を余儀なくされ、荷物を頭に載せて冠水した道路をたどり避難場所を探す住民の姿が見られた。
同州のアリ・オスマン・フセイン社会問題担当副知事は、「約20万人が避難した」と説明。数字は暫定集計で、退避者の数はさらに増える可能性があるとしている。
ハッサン・イブラヒム・アブドゥル副知事によると、12日時点で洪水のため3人が死亡した。
ソマリアはこれまで記録的な干ばつに見舞われており、数百万人が飢饉(ききん)寸前の状態に置かれていた。また、政府は数十年にわたってイスラム過激派組織の武装闘争に手を焼くなど、さまざまな問題を抱えている。
ソマリアだけでなく、アフリカ東・中部では雨期に極端な天候に見舞われることが多い。ルワンダでは今月初め、大雨に伴う洪水や土砂災害で135人が死亡、コンゴ民主共和国でも土石流のため400人以上が犠牲になっている。【5月14日 AFP】
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ロンドン大衛生熱帯医学大学院やユニセフ(国連児童基金)などの共同研究チームの発表によれば、ソマリアでは干ばつによる死者が2022年だけで4万3千人に上るとの推計され、このうち半数が5歳に満たない子どもたちだとのことです。
ユニセフは、ソマリアなどアフリカ東部で5歳未満の子ども190万人超が食料不足に伴う重度の栄養失調で死亡する恐れがあると発表しています。
****190万人の子に命の危機 アフリカ干ばつで食料不足****
国連児童基金(ユニセフ)は3日までに、ソマリアなどアフリカ東部で約3年間にわたり干ばつが続き、5歳未満の子ども190万人超が食料不足に伴う重度の栄養失調で死亡する恐れがあると発表した。「前例がない規模の危機」が起きていると懸念を表明し、国際社会に早急な対応を求めた。
ソマリアに隣接するケニアとエチオピアでも干ばつの被害が広がった。牛やヤギなどの家畜も死に、多くの住民が避難生活を余儀なくされている。ユニセフによると、重度ではない症例も含め700万人以上の子どもが栄養失調に陥っている。
今年3月以降に降雨が確認されるようになり、干ばつ収束への期待が出てきた。だが、財産である家畜や耕作地を失った被災者が経済的に自立できるまでには年月がかかり、干ばつが終わったとしても手厚い復興支援が欠かせない。
アフリカ大陸では、気候変動の影響で異常気象が起きやすくなったとの見方がある。5月にはソマリアで豪雨による洪水が起き、新たに20万人以上が避難した。【6月3日 共同】
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ソマリアではイスラム過激派「シャバブ」のテロ活動などによって人道援助が妨げられており、飢餓・病気の被害を拡大しています。
そうした状況はスーダンでも同様です。
【スーダン 止まない戦闘 深刻化する飢餓の恐怖】
東アフリカのひとつスーダンでは、停戦が合意された。でも、戦闘は続いている“といった“よくわからない”状況が繰り返されています。
****スーダン首都で再び衝突、停戦協定違反で協議中断****
スーダン正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の衝突を巡り、米とサウジビアが仲介する停戦交渉が決裂したことを受け、首都ハルツームでは再び軍事衝突が起きている。
ハルツーム近郊の住民によると、正規軍は空爆を再開し大砲を使用するなどしているが、RSFが占拠した場所から退却する兆候は見られない。
米とサウジは1日、両国の仲介による停戦交渉が決裂したため、協議を中断。両者が協定に違反して軍事行動を行っているなどと非難した。
正規軍は2日、停戦協定の実施に向けた提案をしたにも関わらず米とサウジが交渉を中断したことに「驚いた」と述べた。また、協定違反を行ったのはRSF側だとした。RSFは軍を非難している。【6月3日 ロイター】
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戦闘状態はよくわかりませんが、定かなのはこの国が深刻な飢饉に見舞われているということ、そして内戦によって難民の発生、支援活動の停滞といった混乱を引き起こしていることです。
****「スーダン、内戦により1900万人が飢饉に追い込まれる」WFP局長の訴え****
「今後3~6カ月以内にスーダンで飢餓に直面した人々は1900万人に達する可能性があります」
内戦中のスーダンで援助活動を行っている国連世界食糧計画(WFP)のマイケル・ダンフォード東アフリカ地域局長は8日、中央日報との書面インタビューで、現地の雰囲気をこのように伝えてきた。
ダンフォード局長は「内戦によりスーダンから近隣諸国への難民流出がすでに始まっている」とし「これが進めば、スーダンの不安定な状況が『アフリカの角』の地域全般に拡散しかねない」と懸念を示した。
内戦中のスーダンで援助活動を行っている国連世界食糧計画(WFP)のマイケル・ダンフォード東アフリカ地域局長は8日、中央日報との書面インタビューで、現地の雰囲気をこのように伝えてきた。
ダンフォード局長は「内戦によりスーダンから近隣諸国への難民流出がすでに始まっている」とし「これが進めば、スーダンの不安定な状況が『アフリカの角』の地域全般に拡散しかねない」と懸念を示した。
アフリカの角地域はアデン湾の南部にまたがる東アフリカ地域で、サイの角のように突出している地域を指す。エチオピア・ソマリア・ジブチなどが属している。
先月スーダンでは、政府軍側のアブデル・ファタハ・ブルハン将軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」のモハメド・ハムダン・ダガロ司令官の間で武力衝突が起き、血なまぐさい交戦が続いている。(中略)
内戦以降、外国人はもちろんスーダン人も「必死のエクソダス」に乗り出して難民が最大86万人発生するという悲観的見通しが出てきている(中略)
スーダン内の状況が統制不能状態に陥り、国連のような国際救援団体の活動はますます厳しくなっている。一線の救護団体職員たちは文字通りに命懸けで活動している。WFPも先月16日、スーダンの北ダルフール地域で救護活動中に職員3人が交戦に巻き込まれて命を落とした。WFPはこの事件で活動をしばらく中断したが、今月1日、WFPのシンディ・ヘンスリー・マケイン事務局長が救護を臨時に再開すると伝えた。(中略)
東アフリカは長い政治不安で慢性的な食糧危機を経験しているが、最近になって40年ぶりに最も乾燥した気候に直面し、食糧難が最悪に達しているという。
ダンフォード局長は「エチオピア、ケニア、ソマリアなどでは生計手段である家畜が干ばつや気象異変による洪水などで1300万頭が死亡し、最大8000万人が飢えに追い込まれている」と述べた。(後略)【5月9日 中央日報】
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【世界食料価格は2年ぶり低水準】
飢餓に苦しむ人々にとって数少ない朗報は、食料価格が落ち着いてきたことでしょうか。
****世界食料価格、5月は2年ぶり低水準=国連食糧機関****
国連食糧機関(FAO)が2日発表した5月の世界の食料価格指数は、植物油、穀物、乳製品の価格が急落し2年ぶりの低水準となった。砂糖と肉類の価格は上昇した。
5月の同指数は平均124.3と2021年4月以来の低水準で、ロシアのウクライナ侵攻開始後の2022年3月に記録した過去最高水準を22%下回っている。4月は127.7だった。
FAOは穀物需給に関する別の報告書で、今年の世界の穀物生産量を前年比1%増の28億1300万トンと予想した。トウモロコシの生産増加が主な要因としている。【6月2日 ロイター】
5月の同指数は平均124.3と2021年4月以来の低水準で、ロシアのウクライナ侵攻開始後の2022年3月に記録した過去最高水準を22%下回っている。4月は127.7だった。
FAOは穀物需給に関する別の報告書で、今年の世界の穀物生産量を前年比1%増の28億1300万トンと予想した。トウモロコシの生産増加が主な要因としている。【6月2日 ロイター】
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国際支援も多少はやりやすくなったとも思えますが、そうした支援を妨げているのが、飢餓地域における内戦・治安の不安です。