孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  プーチン支配体制を揺るがす可能性があるものは・・・ロシアの軍閥割拠の現状

2023-06-06 23:36:31 | ロシア

(【2022年10月20日 NHK】)

【反体制派指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める抗議行動 しかし、締め付けは強化される状況】
ウクライナの反転攻勢が始まっているのかどうか・・・各地で動きが報じられていますが、ウクライナ側・ロシア側の情報が錯綜し、情報合戦の様相も呈するなかで、実際のところはよくわかりません。

一方、「特別軍事作戦」を展開するロシア・プーチン体制の苦境・混乱などもよく報じられていますが、プーチン体制への批判・攻撃の主体としては三つほどあります。

ひとつは、拘束されているナワリヌイ氏などの国内の反プーチン勢力。

****ロシア20都市以上で100人超を拘束 ナワリヌイ氏の釈放求め****
ロシアの20以上の都市で4日、収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)の釈放を求める抗議の声が上がり、100人以上が拘束された。ロシアの人権団体「OVDインフォ」が発表した。最近のロシアでは抗議活動が厳しく取り締まられており、拘束者数は2022年秋以降で最多規模となった。

ナワリヌイ氏は横領罪などで懲役11年6月の実刑判決を受けて服役中。4日が誕生日だったことから、ロシア各地で同氏の収監に対する抗議活動が起きた。

OVDインフォによると、5日午前の時点で109人が拘束されたという。OVDインフォのウェブサイトには「ナワリヌイ氏に自由を」「政治犯の釈放を」などと書かれた紙を掲げた人の写真が掲載されている。

ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは4月、カフェが爆発して著名な軍事ブロガーが死亡する事件が起きた。捜査当局はナワリヌイ氏が爆発に関与したとの報告書を発表。同氏が新たな罪状に問われ、刑期が大幅に延長されるとの観測も浮上している。4日の抗議活動では、このような動きに反対する声も上がったとみられる。

ロシア政府は22年3月、ウクライナで始めた「特別軍事作戦」に絡んで法律を改正。ロシア軍を中傷したり、虚偽情報を流したりしたとみなす言動を罰する規定も盛り込んだ。そのため現在のロシアでは、特別軍事作戦に抗議することが難しくなっている。

それでも4日の抗議活動の参加者には、特別軍事作戦への反対を表明した人もいたようだ。OVDインフォがサイトに上げた拘束者の写真の中には、英語で「ストップ」と書かれた紙を掲げる男性の姿も見られた。

OVDインフォによると、22年2月に特別軍事作戦が始まって以降、延べ1万9500人以上が拘束されてきた。同年9月には「部分的動員令」への抗議活動が相次ぎ、直後には千数百人以上が拘束された。4日の拘束者数はそれ以降で最も多い規模となった模様だ。【6月5日 毎日】
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刑法の改正により国家反逆罪の最高刑が終身刑(ロシアでは死刑はありません)になりました。これまでは禁錮12~20年と50万ルーブル(約80万円)以下の罰金だったことからすれば、相当に厳しくなっています。

国家反逆罪の裁判は非公開で、具体的な罪状や審理のやりとりも公表されていません。今後侵攻に反対する反政権派らへの弾圧が一段と厳しくなる恐れがあるなかでの、今回の抗議行動。

具体的な成果が見込めないだけに、行動を呼び掛ける側近は安全な国外にいることもあって、ナワリヌイ氏陣営内部からも「危険過ぎる」との批判もあるようです。

****ナワリヌイ氏釈放要求、45人拘束=侵攻下で異例デモ、「危険」と異論―ロシア****
(中略)デモを計画した側近らは既に国外脱出している。強制排除や拘束の対象となるのは一般国民だとして、ナワリヌイ氏陣営内部から異論も出た。

陣営の極東ハバロフスク支部の元トップは「(側近らが)国外にいながら国内のロシア人に参加を呼び掛けるのは、非倫理的であるだけでなく危険だ」と苦言を呈した。【6月4日 時事】 
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このような状況で、反政府勢力の活動が体制を揺るがすほどに拡散することは想像できません。

【パルチザン的な武装反政府組織の破壊活動・テロ 一定に混乱させる効果はあるものの、それ以上のものでもない】
プーチン体制への脅威として考えられる二つ目の主体は、ウクライナと連動していると思われる、ロシア人義勇兵の団体「自由ロシア軍」などのパルチザン的な武装反政府組織の存在。最近国境付近での破壊活動をおこなっているようにも報じられています。

****ロシア特殊作戦軍がベルゴロド州に派遣、パルチザン警戒 ウクライナ主張****
ウクライナの公的機関「国民レジスタンスセンター」は2日、ロシア特殊作戦軍の部隊がウクライナと国境を接するベルゴロド州に派遣されているとの見解を示した。「パルチザン」活動を警戒しての動きだという。

同センターは「パルチザン運動に対抗する必要性から、ロシア特殊作戦軍第322センター『セネシュ』の部隊がベルゴロド州に到着した」と述べた。

そのうえで「ロシアはパルチザンを恐れるあまり、この精鋭部隊の全活動を緊急停止させ、ベルゴロド州の国境地帯にある集落に配置した。部隊の任務はロシア国境地帯での破壊行為に対抗する活動を実施することにある」としている。

CNNはこの主張を独自に確認できていない。

ロシア国防省はこれに先立ち、ベルゴロド州の目標を攻撃する場面とされる映像を公開。ロシアの戦闘用航空機が「後退するウクライナの陣形や敵の予備部隊に9回の攻撃を加えた」と述べていた。

ベルゴロド州ではグラドコフ知事が2日、SNSテレグラムへの投稿で、砲撃により女性2人が死亡したと明らかにした。

グラドコフ氏はウクライナ軍が砲撃を実施したと非難している。ウクライナ側はこの主張についてコメントしていない。【6月3日 CNN】
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ウクライナ側の反転攻勢に連動して、ロシアの後方攪乱の役割があるのでしょう。

より直接的には、5月30日未明、8機の自爆ドローンがモスクワ南西部を攻撃、うち2機がモスクワ郊外ノボオガリョボの大統領公邸近くで撃墜された件について、反政府組織によるプーチン暗殺を狙ったものとの指摘もあります。

ロシア側の自作自演説を含めて真相ははっきりしませんが、反政府組織による攻撃であった可能性は大きいものの、実際に「暗殺」を意識したものとも思えません。そこまで簡単に「暗殺」できるような状況でも、それを可能にするほどの攻撃でもないでしょう。

ただ、プーチン体制、プーチン大統領自身に対する「攻撃できるぞ!」とアピールし、その権威を失墜させる効果は期待できるかも。

いずれにしても、こうしたパルチザン的な反政府組織の破壊活動・攻撃でロシアの軍事作戦、プーチン支配体制が混乱をきたすことがあっても、それ以上に大きく揺らぐこともないでしょう。

【ワグネル・プリゴジン氏やチェチェン共和国のカディロフ首長など“私兵”を擁する「軍閥」の動向】
プーチン体制にとっての脅威の三つ目は、権力内部の抗争。
その象徴ともなっているのが民間軍事会社ワグネル、その創設者のプリゴジン氏の言動です。

プリゴジン氏はこれまでも、びっくりするぐらいに激しい言葉を使ってショイグ国防相やロシア軍幹部を批判・・・というより罵倒してきましたが、ロシア正規軍によって爆弾を仕掛けられたも主張しています。

****ロシア軍、ワグネル部隊に対し爆弾仕掛ける=プリゴジン氏****
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は2日、ロシア軍がワグネル部隊に対し爆発物を仕掛けたと非難した。

プリゴジン氏はメッセージアプリ「テレグラム」に対し、同氏の隊員が、ロシア国防省当局者が後方地域に数百個の対戦車地雷を含む様々な爆発物を仕掛けた場所を数十カ所発見したと述べた。なぜ仕掛けたのかという質問に対し、職員は上官の命令だと答えたという。

プリゴジン氏によると、仕掛けられた場所は後方地域であるため、敵に向けた爆弾ではなかった。つまり、これらはワグネルの先頭部隊を迎え撃つためのものであったと考えられる。ただ、いずれも爆発せず、けが人も出なかったという。

その上でプリゴジン氏は「これは公開むち打ち刑のようなものだったと推測している」とした。【6月3日 ロイター】
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更には、ロシア軍により攻撃を受け、ロシア軍兵士を拘束したとも。

****ワグネル、ロシア兵を拘束 正規軍に砲撃受けたと主張****
ロシアの民間軍事会社ワグネルは4日、ウクライナの占領地でロシア正規軍に同社の部隊が攻撃を受けた後、正規兵1人を拘束したと明らかにした。

ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏はここ数か月、ウクライナ侵攻に伴う過剰な戦死については正規軍上層部に責任があると非難してきたが、正規兵の拘束を発表するのは初めて。

4日夜にプリゴジン氏が投稿した5月17日付のワグネルの「報告書」によると、ウクライナ東部の占領地で正規軍が「ワグネル部隊の後方の道路に地雷を敷設」した。ワグネルの戦闘員が地雷を除去していたところ、「ロシア国防省(正規軍)の拠点から砲撃された」という。

プリゴジン氏はその後、拘束した正規兵とされる男性を映した動画をテレグラムに投稿。鼻に打撲の痕が見える男性は画面外の人物から尋問を受け、ロシア軍第72旅団の中尉と名乗り、「ワグネルの車両を撃った」「個人的に気に入らないからだ」と話している。

男性の拘束期間や解放条件は明らかにされていない。 【6月6日 AFP】
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実際にワグネルとロシア正規軍の間でそのような具体的な衝突があるのかわかりません。また、ロシア軍・プーチン氏周辺は、いつまでこのようなプリゴジン氏の「勝手な言動」を放置するのか・・・という疑問も。
これが実力者プリゴジン氏でなければ、確実に国家反逆罪で終身刑でしょうし、その前に“消される”でしょう。

こうした権力内部の闘争がどこまでいくのか。

前出の反政府組織の活動が活発化しているベルゴロド州に関して、プリゴジン氏は「ワグネルが守る」とも発言していますが、ロシア軍内部にはワグネルがベルゴロド州から更にモスクワに軍を進めるのでは・・・という、「クーデター」に対する危機感もあるようです。

****プリゴジン氏「ワグネルがベルゴロド州守る」発言で波紋 ロシア軍関係者は警戒****
敵対勢力による攻撃が続くウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州を巡り、プリゴジン氏が「ワグネルが守る」と発言し波紋が広がっています。

民間軍事会社「ワグネル」を率いるプリゴジン氏は3日、SNSで「我々は招待も許可も待たずにベルゴロドに行き、ロシア国民を守るつもりだ」と述べました。

これに対してプリゴジン氏と対立関係にあるロシア軍の元大佐イーゴリ・ストレルコフ氏は5日、ワグネルがロシア軍の許可も得ずにベルゴルドに部隊を進めれば、さらに「ドローンから守るため」と称して、モスクワまでやってくる可能性があると警戒感をあらわにしました。

また、チェチェン共和国のカディロフ首長は4日、SNSにベルゴロド州の状況を懸念していると投稿し、「国民を守るために最高司令官のいかなる命令に対しても準備ができている」とプーチン大統領に訴えました。【6月5日 テレ朝news】
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軍事力を有するチェチェン共和国のカディロフ首長の動きも注目されるところです。
まるで、軍閥割拠するような状況にも。

今のところはワグネル・プリゴジン氏とチェチェン共和国のカディロフ首長は対抗関係にあるようで、そうした関係はクレムリンの意図したものとの指摘も。

****ロシア軍事機構に亀裂 軍閥リーダーの確執あらわ****
ワグネルとチェチェンの指導者が対立、クレムリンの策略との見方も

ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトからロシアの民間軍事会社ワグネルが撤退し始めたことで、同国の最も強力な軍閥リーダー2人の間で高まる確執が明るみに出た。予想されるウクライナの反攻作戦を前にしてウラジーミル・プーチン大統領の軍事機構に亀裂が生じていることが露呈した。

ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏とロシア南部チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフ首長の対立は、ロシア政府にとって大きなトゲであるプリゴジン氏に初めて公の場で向けられた批判の一部を浮き彫りにした。

ワグネルの部隊はこの数カ月間でロシアのためにバフムトを徐々に占領し、プリゴジン氏の評判は高まったが、その間も同氏はロシア国防省が適切な弾薬を提供していないと非難し続けた。

今週に入ってワグネルはバフムトからの撤退を開始。カディロフ氏の軍隊と入れ替わる中で、プリゴジン氏はドネツク州全体をチェチェン軍が支配する能力にケチを付けた。ロシアは同州を「ドネツク人民共和国(DNR)」と呼び、自国の支配下にあるとして一体性を主張する。だが領土をまだ完全に掌握したわけではない。

「個々の町や村の解放について言えば、彼らにやり遂げる戦力はあると思う。だがDNRを全部解放できるほどの戦力ではない」。プリゴジンはテレグラム・チャンネルで流した声明の中でそう述べた。「彼らが占領するのは一定の地域だろう」

この発言に対し、カディロフ氏の忠実な支持者の間から非難が巻き起こった。例えば、長年協力関係にあるアダム・デリムハノフ氏だ。同氏は自分たちの能力に関する誤解を解くため、プリゴジン氏と直接会うことも辞さないとした。

「エフゲニー(・プリゴジン)よ、言うまでもなく、お前は分かっていないし、分かる必要もない」。デリムハノフ氏はテレグラムに投稿した動画でそう述べた。「いつでも連絡をよこせ。場所を指定しろ。直接会って何が分かっていないのか説明してやる」

カディロフ氏のもう1人の忠実な支持者であるマゴメド・ダウドフ氏は、プリゴジン氏はロシア国防省に不満をぶちまけ、住民のパニックを引き起こしていると批判した。

カディロフ氏の軍隊(正式には国家警備隊の一部だが、同氏が直接指揮する)が配備されることにより、プリゴジン氏は戦場でも、より広い意味ではロシア社会においても、立場が弱まる可能性がある。

ワグネルの部隊を交代させるのにカディロフ氏の戦力を用いるのは、2人の軍閥リーダーの対立をエスカレートさせるロシアの策略だとも考えられる。昨年ロシア正規軍が前線の強化に繰り返し失敗し、ウクライナ軍の大幅な前進を許した際には、2人が協調してロシア国防省を批判していた。

「クレムリン(ロシア政府)には次のような狙いもあるかもしれない。カディロフ氏とワグネルを率いる資本家エフゲニー・プリゴジン氏の関係にくさびを打ち、チェチェン軍に対するロシア連邦政府の権威を改めて強調することだ」。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は今週そう指摘した。

2007年にチェチェン指導者に就いたカディロフ氏は、プーチン氏からの支持に完全に依存している。今回明るみに出た確執は、プーチン氏の忠実な歩兵という自身の立場を取り戻すチャンスとなる。(中略)

ウクライナが南部と東部のロシア支配地域の奪還を目指す大規模な反攻作戦に出ると予想されるさなかに、今回の確執が浮上した。 カディロフ氏の軍隊が前線で活動するのはほぼ1年ぶりとなる。【6月2日 WSJ】
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上記記事でカディロフ氏に関し“プーチン氏の忠実な歩兵”という表現をしていますが、これは疑問。
確かにカディロフ氏はこれまで露骨なぐらいにプーチン氏を称賛していますが、それは一方でチェチェン内部は自分に任せろ、ロシア軍にも手出しはさせないという一種の「契約関係」を示すもので、カディロフ氏が内心プーチン氏をどのように思っているかは定かではないですし、ロシア軍とは明らかに一線を画しています。

仮に、現在ワグネル・プリゴジン氏とチェチェン共和国のカディロフ首長が対抗関係にあったとしても、「軍閥」の常として、いつでも状況は変わります。両者は反ロシア軍ということでは共通点があります。

両者が協調してモスクワに向かえば・・・・そこまで、プーチン支配体制及びアメリカに対抗する核戦力を有するロシア軍は空洞化しているのか・・・というのは、今のところは“想像上のドラマ”ですが、そんなドラマのようなことを想像したくもなるような軍閥割拠の現状でもあります。

ドラマついでに、もしそういったことが起きたときのことを考えると、ワグネル・プリゴジン氏にしてもチェチェン共和国のカディロフ首長にしても、プーチン大統領はロシア統治のための「神輿」として担ぎ続けるのでしょう。 排除するのは、あくまでも主戦強硬派と敵対するプーチン周辺の政治勢力やロシア軍幹部でしょう。

もちろん、プーチン大統領が同意すれば、あるいは、プーチン大統領に利用価値がある限り・・・という前提での話ですが。

そして主戦強硬派の両者とも、ウクライナに関しては“核兵器使用の自制”といったことにはあまり関心なさそう。ロシア勝利のためなら何でもあり・・・といった感じも。

話がどんどん“想像力豊か”なものになってきましたので、これくらいに。
一番目のナワリヌイ氏などの反政府勢力、二番目のパルチザン的な武装反政府組織よりは、三番目の軍閥の割拠・確執といったあたりが、プーチン支配体制にとっては一番の脅威となりうるものでしょう。
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