孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州  拡大する反移民の流れ

2024-09-14 22:27:07 | 難民・移民

(英中部ロザラムにも広がった反移民暴動(8月4日)【8月28日 Newsweek】)

【反移民・右傾化の流れ】
欧州で失業や生活苦への不満の受け皿となる形で反移民・右傾化のうねりが広がっています。

****反移民、欧州で強まる右傾化 独仏英、結束に影****
ドイツ東部の2州の州議会選で排外主義を掲げる右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。欧州では、欧州議会選で欧州連合(EU)に批判的な極右や右派が議席を増やし、フランスや英国では極右や右派ポピュリスト政党が台頭するなど右傾化が強まる。特に欧州をけん引する大国に顕著な動きで、結束の弱体化が懸念される。

ドイツやフランス、英国で躍進した右派や極右政党は反移民を掲げる。移民流入が高い失業率や労働賃金の引き下げなどを招いたとする声も少なくなく、不満の受け皿となって支持を拡大した。

6〜7月のフランス国民議会総選挙では、反移民、反EUを掲げる極右「国民連合(RN)」が第3勢力にとどまったものの党史上最多の議席を獲得。7月の英下院総選挙では、反移民の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」が二大政党に次ぐ得票率で初めて議席を獲得し、存在感を示した。

6月の欧州議会選でドイツやフランスの与党が大敗を喫する中、イタリアのメローニ首相率いる右派政党は伸長した。【9月2日 共同】
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【イギリス 反移民暴動】
反移民の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」が総選挙で躍進したイギリスでは、少女3人が刺殺された事件がイスラム教徒移民による犯行との誤情報に扇動された反移民暴動が発生。反移民・極右暴動に対抗してカウンターデモも行われ、社会を揺るがせました。

****英暴動の逮捕者1000人超に、少女刺殺事件巡るデマ発端****
英国では、放火、略奪、イスラム教徒など移民を標的とする人種差別的攻撃を伴う暴動が続いており、警察当局によるとこれまでに1000人以上が逮捕された。

暴動は、7月29日にイングランド北部サウスポートで少女3人が刺殺された事件がイスラム教徒移民による犯行との誤情報がインターネット上で流れたのを発端に始まり、イングランド各地と北アイルランドに波及した。その後、暴動関与者を特定する取り組みが強化されたことで、先週以後は収束しつつある。

当局によると、英国全土で1024人が逮捕、575人が起訴された。【8月14日 ロイター】
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イギリスでは保守党前政権時代の移民ルワンダ移送計画を労働党政権が中止するなど、移民対応が政治の中心課題となっています。

【ドイツ 国境管理強化】
ドイツでは冒頭記事にあるように、東部の2州の州議会選で排外主義を掲げる右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進しましたが、中道左派・社民党を軸とする連立政府もAfD躍進の背景にある反移民の空気を考慮せざるを得ず、移民対応を強化しています。

****ドイツ、全ての陸上国境管理で不法移民に対応 16日から6カ月間*****
ドイツ政府は9日、不法移民に対応し、イスラム過激主義などの脅威から国民を守るため、全ての陸上国境で管理を強化すると発表した。16日に開始し、少なくとも6カ月継続する。

フェーザー内相は「国内の治安を強化し、不法移民に対する厳格な姿勢を維持する」と表明。政府が欧州委員会と隣接国に国境管理計画を通知した述べた。

政府は当局が国境で直接、より多くの移民を拒否できるようにする制度も設計したという。

ドイツではこのところ、反移民を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を拡大。政府は主導権を取り戻すため、移民問題への姿勢を強めている。

8月に西部で起きた刃物による襲撃事件の容疑者が難民施設に所属していたことを受け、移民を巡る懸念が高まっている。同事件では3人が死亡。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。

ドイツは昨年、初回の難民申請の急増に対応し、ポーランド、チェコ、スイスとの国境で管理を厳格化した。

これら3カ国およびオーストリアとの国境の管理により、2023年10月以降3万人の移民送還が可能になったという。

フェーザー氏は新たな制度により政府はさらに多くの移民を送還できるようになるが、保守派との非公開協議を控えているとし、内容への言及を避けた。

ドイツは前出の4カ国のほか、デンマーク、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランスと国境を接している。【9月10日 ロイター】
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メルケル前首相は中道右派ながら移民に寛容な姿勢でしたが、流れは変化しつつあります。

【スウェーデン 帰国すれば最大480万円】
北欧・スェーデンも、反移民を掲げる極右の野党、民主党の閣外協力を受ける右派連立政権が移民帰還を促す方向に向かっています。

****帰国すれば最大480万円、スウェーデンの新たな移民抑制策****
戦争や迫害を逃れた人々の安息の地となってきた北欧スウェーデンの右派連立政権は12日、自主帰還する移民に支給する給付金を最大35万クローナ(約480万円)に増額する計画だと明らかにした。

スウェーデンは数十年にわたり「人道大国」と見なされてきた。だが近年、移民の社会的統合を進めているにもかかわらず、多くは溶け込めていない。

反移民を掲げる極右の野党、民主党の閣外協力を受ける政権は記者会見で、2026年から自由意志に基づき出身国に帰還する移民は、最大35万クローナを受け取ることができると述べた。

ヨハン・フォシェル移民相は最新の移民抑制策を発表する際、「われわれは移民政策におけるパラダイムシフトの真っただ中にある」と述べた。

現在、帰国する移民に支給される金額は、成人1人当たり最大1万クローナ(約14万円)、子ども1人当たり5000クローナ(約7万円)で、1家族当たり4万クローナ(約55万円)までとなっている。

この措置について移民団体にコメントを求めたが、コメントは得られていない。 

欧州で帰国する移民に給付金を支給している国はスウェーデンだけではない。デンマークは1人当たり1万5000ドル(約210万円)以上、ノルウェーは約1400ドル(約20万円)、フランスは2800ドル(約40万円)、ドイツは2000ドル(約28万円)を支給している

スウェーデンは1970年代から多額の外国に開発援助を惜しみなく行い、1990年代からは主に旧ユーゴスラビアやシリア、アフガニスタン、ソマリア、イラン、イラクなどの紛争地帯から多数の移民を受け入れてきた。

欧州移民危機のピークを迎えた2015年だけでも、スウェーデンは庇護希望者16万人を受け入れ、人口当たりで欧州連合最多となった。

スウェーデンでは、外国出身者の失業率が極めて高いために経済格差が拡大し、「揺り籠から墓場まで」と呼ばれるほど充実した社会保障制度にとって重荷となった。

欧州移民危機が転換点となり、当時の与党・社会民主党は、移民への門戸開放政策をこれ以上続けることはできないと表明。

以来、歴代政権は左右を問わず移民抑制策を講じてきた。それには、難民認定申請者の在留資格を短期滞在に限定したり、家族を呼び寄せる条件を厳格化したり、欧州連合域外出身者の就労ビザの申請に必要な収入基準を引き上げたりするなどの措置が含まれる。

ウルフ・クリステション政権はさらに、薬物乱用、犯罪組織への関与、スウェーデンの価値観を脅かす発言などを行った移民の強制送還の容易化も計画している。 【9月13日 AFP】AFPBB News
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帰国すれば最大480万円・・・・現在の“1家族当たり4万クローナ(約55万円)まで”と比べても破格の金額ですが、それだけ支払っても移民を受け入れるコストの方が大きいということでしょう。

失業手当などを考えるとそうなるのでしょう。外国出身者の雇用を促進して、税負担も自国民と同じようにしてもらえれば、そういう問題もでないのでしょうが。問題の根っこは、なぜ外国出身者の失業率が極めて高いのか、それはどうにもならないのか?というあたりでしょう。

なお、移民受け入れで以前は寛容とされていたスウェーデンですが、ヘニング・マンケルのミステリーなど読むと、2000年代の頃から移民に反対する勢力の活動で陰鬱な空気が社会に漂っていたことが窺えます。反移民感情は決して昨今のものではありません。

【オランダ EU共通難民庇護制度から離脱申請】
オランダはウィルダース党首率いる極右、自由党主導の4党連立政権ですが、そうした政権の性格を反映して移民政策も厳格化し、EU共通の難民庇護制度からの離脱を要請する方針を示しています。

****オランダ、厳格な移民政策発表 EU共通難民庇護制度から離脱へ****
2オランダのディック・スホーフ首相は13日、同国史上最も厳格な移民政策を発表するとともに、来週には欧州連合共通の難民庇護制度からの離脱を要請する方針を示した。

ヘルト・ウィルダース党首率いる極右、自由党主導の4党連立政権は、「難民危機」を宣言し、国境管理をはじめとする一連の厳格な措置によって移民の流入を抑制する意向を明らかにしている。

スホーフ氏はハーグでの記者会見で、今後3年間の政府計画を発表。「わが国は大規模な移民の流入に耐え続けることはできない」「国民は難民危機に直面している」とし、「よって近々、移民・難民の受け入れ厳格化などの緊急措置を講じる」と表明した。

昨年11月の下院総選挙から約7カ月を経て成立した連立政権は、難民認定申請者や不法移民の入国阻止に向けて強硬姿勢を取ると明言している。

しかし、法律の専門家だけでなくウィルダース氏自身も、EU共通の難民庇護制度からの離脱には数年かかると認めている。

ウィルダース氏は5月、AFPに対し、「デンマークが実施しているように、わが国も難民庇護制度からのいわゆる離脱を試みていく。成功するとしても、数年かかるだろう」と述べた。

デンマークはEU共通の難民庇護制度からの離脱を交渉しており、オランダ政府もそれに続く方針だ。 【9月14日 AFP】
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【先進国の人出不足で移民増加】
移民対応厳格化に舵を切る欧州各国ですが、欧州など先進国で移民流入が増加したのは先進国側の都合もあってのことです。

****昨年の移民、過去最多=先進国の人手不足背景―OECD****
経済協力開発機構(OECD)は23日、日米欧など加盟38カ国への2022年の新規移民が推計610万人に上り、過去最多を記録したと発表した。難民認定者の増加や先進国での人手不足が背景で、前年比で26%、コロナ禍前の19年比でも14%増えた。

不法移民や短期就労者、ロシアによる侵攻で国外へ避難したウクライナ人らは除いて集計した。国別の移住先は米国が前年比25%増の105万人と最多で、次いでドイツが21%増の64万人、英国が35%増の52万人。日本は58%増の10万6000人だった。

OECD加盟国に逃れたウクライナ人は、23年6月時点で約470万人。このうちドイツが100万人強、ポーランドが100万人弱、米国とチェコが各40万人弱を受け入れている。【2023年10月24日 時事】 
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【強気のハンガリー・オルバン首相】
上記のような反移民・難民の流れが強まる欧州で、以前から反難民姿勢を貫くハンガリー・オルバン首相は強気。

****ハンガリー、難民対応巡り欧州委と対立 「境界守った」逆提訴の構え****
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会と加盟国のハンガリーが、難民申請者への対応を巡り対立を深めている。

EUの欧州司法裁判所は6月、ハンガリーが難民申請者の権利を保護しなかったとして制裁金2億ユーロ(約313億円)の支払いを命じた。だが、ハンガリーは応じず、欧州委に対し、EUの境界を「守った」費用として、逆に20億ユーロの支払いを求める訴訟を起こす構えを見せている。

ハンガリーのグヤーシュ首相府長官は9月12日、「ハンガリーは近年、(域内の自由な移動を可能にする)シェンゲン協定の域外との境界の防御に約20億ユーロを費やしたが、EUから補償金を受け取っていない」として、「欧州委を相手取り、費用を回収するため訴訟を起こす用意がある」と述べた。

欧州司法裁は6月13日、欧州委の提訴を受け、ハンガリーが難民申請者を不法に留め置いたり、申請手続き中の滞在を認めず国外に追放したりするなど、EUの難民保護のルールに違反し続けているとして、2億ユーロの制裁金の支払いなどを命じた。

これに対し、ハンガリーのオルバン首相は「EUの境界を守る我が国への制裁金は言語道断で容認できない」と反発し、支払いを拒否した。欧州司法裁はハンガリーが是正措置を講じるまでの間、1日100万ユーロの追加制裁も科しており、制裁金の総額は膨らんでいる。

ハンガリーは強硬姿勢を見せることで、制裁金の支払いを巡り、欧州委の譲歩を引き出す戦術とみられる。AP通信によると、ハンガリー政府は9月12日、欧州担当相に問題解決に向けて欧州委と協議するよう指示した。

ハンガリーは6日にも、難民申請者を対象に、セルビアとの国境地帯からEU本部のあるベルギーの首都ブリュッセルまでの片道バス利用券を提供する方針を明らかにし、EUに圧力をかけている。

これに対してベルギー政府は9日、「EUの結束と協力を損ねる」と批判し、ハンガリーからのバスによる難民申請者を受け入れない方針を発表した。

欧州委員会の報道官は10日、「もしハンガリーが(バスによる移送を)実行すれば、明らかなEU法違反であり、加盟国の協力や相互信頼の原則に反する」と非難。欧州委は通過ルートとなる可能性がある加盟国と対応を協議した。

近年、中東やウクライナなどからのEUへの難民申請者は増加し、2023年は計約114万人に達した。受け入れに必要な公的費用の増加などから、加盟国が対応に苦慮している側面もある。

こうした中、ドイツ政府は9月9日に国境での検問を強化する方針を発表し、10日には難民申請者の受け入れを厳格化した。オルバン氏はX(ツイッター)で、ドイツに対して「ようこそ移民停止クラブへ」と皮肉を込めた投稿をした。

ハンガリーは7月から、EUの加盟国で構成する欧州理事会の議長国(任期6カ月)を務めている。ウクライナ支援への消極姿勢やロシアとの友好関係が目立つなど、他の加盟国との摩擦が続いている。【9月13日 毎日】
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【外国人労働者の社会統合】
移民問題の根幹は社会統合が進まず、雇用が不安定で、失業したり、なかには犯罪に走ったり・・・ということでしょう。

日本は正確には“移民・難民”ではなくあくまでも技能実習制度や育成就労制度に基づく外国人労働者ですが、コンビニ・飲食店でよく見かける外国人については、「不愛想な日本人店員より外国人のほうが感じがいい」という声もよく聞きます。

もちろん、日本における外国人労働者についても差別・人権侵害、劣悪な雇用環境など問題は多々あります。ただ、その一方で、上記のような“とけ込んでいる”ようにも見える部分も。そのあたり、工作機械・ロボットにすら名前をつけて愛着を寄せる日本社会は欧米社会とはまた違う側面もあるのかも・・・というのは期待しすぎでしょうか。
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