(パキスタンの首都イスラマバードでは11月24日、収監中のイムラン・カーン元首相の釈放を求める大規模な抗議デモに備え、警察が街を封鎖した。写真はバイクで準備する警官ら【11月25日 ロイター】 すごい警備ですね・・・この守備隊と不満を募らせるデモ隊が直接ぶつかったら相当な混乱になりそう)
【首都イスラマバード カーン元首相の釈放を求める大規模な抗議デモに備え、警察・軍が街を封鎖した】
****パキスタン首都封鎖、カーン元首相の釈放求める抗議デモに備え****
パキスタンの首都イスラマバードでは24日、収監中のイムラン・カーン元首相の釈放を求める大規模な抗議デモに備え、警察が街を封鎖した。
カーン氏の政党、パキスタン正義運動(PTI)を中心とする支持者らが市内の国会周辺に集まると予想されるため、イスラマバードに通じる高速道路の大半が封鎖された。
市内の主要道路も政府によって輸送用コンテナで封鎖され、重装備した警察と軍関係者が配置された。携帯電話の通信サービスは停止されている。
イスラマバード警察は声明で、いかなる集会も法律で禁止されていると警告した。インターネット監視団体ネットブロックスによると、ワッツアップ使用が制限されているという。
抗議行動を率いるアリ・アミン・ガンダプール氏はデモ参加者に対し、市内の議会や政府機関、大使館などが集まるレッドゾーンと呼ばれる地域に集結するよう呼びかけた。
PTIは、カーン氏を含む指導者らの釈放と、不正な選挙を行ったとして現政権の退陣を求めている。
カーン氏は2022年の政権追放後、汚職や暴力扇動など多くの罪に問われ、昨年8月に収監された。【11月25日 ロイター】
カーン氏の政党、パキスタン正義運動(PTI)を中心とする支持者らが市内の国会周辺に集まると予想されるため、イスラマバードに通じる高速道路の大半が封鎖された。
市内の主要道路も政府によって輸送用コンテナで封鎖され、重装備した警察と軍関係者が配置された。携帯電話の通信サービスは停止されている。
イスラマバード警察は声明で、いかなる集会も法律で禁止されていると警告した。インターネット監視団体ネットブロックスによると、ワッツアップ使用が制限されているという。
抗議行動を率いるアリ・アミン・ガンダプール氏はデモ参加者に対し、市内の議会や政府機関、大使館などが集まるレッドゾーンと呼ばれる地域に集結するよう呼びかけた。
PTIは、カーン氏を含む指導者らの釈放と、不正な選挙を行ったとして現政権の退陣を求めている。
カーン氏は2022年の政権追放後、汚職や暴力扇動など多くの罪に問われ、昨年8月に収監された。【11月25日 ロイター】
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上記ニュースの意味合いを理解するためには、少なくともここ1年ほどのパキスタン政治の動きを追う必要があります。
なお、“汚職や暴力扇動など多くの罪に問われ”ということで、一体どの罪状で収監されているのかよくわからないところもあります。
【軍の支持を失ったカーン元首相 失職・逮捕】
元クリケット有名選手であり、軍部の後ろ盾を得て首相の座を獲得したカーン氏の失職に至る経緯は以下のようにも。
****カーン元首相****
首相就任後は、外貨準備の枯渇や物価の高騰など経済を低迷させたとして批判が高まり、2022年4月には野党が下院議会に内閣不信任決議案を提出。
与党の一部もこれに同調する動きを見せたため可決される可能性が高まっていたが、カーン寄りの下院議長が採決直前で却下。
カーンは解散総選挙に打って出る方針を表明し、2022年4月3日に議会は解散されたが、野党は最高裁判所に提訴。4月7日、最高裁は議会解散を違憲と判断し、4月10日に内閣不信任決議案の採決が行われ、賛成多数で可決されたため、カーンは即時失職した。
なお、首相を解任されたことについてカーンはアフガニスタンやロシア、中国に対する外交政策上の姿勢を理由に、野党がアメリカと結託して自分を排除したと主張を続けている。【ウィキペディア】
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機密漏洩や汚職など、いろんな罪に問われていますが、かなり強引な感じも。
例えば機密漏洩に関しては、以下のようにも。
****国家機密漏えいの疑惑とは****
訴追の原因となったいわゆる「暗号事件」では、カーン氏が首相在任中、米ワシントンのパキスタン大使から送られた外交機密文書を漏えいしたとされる。
これは、元首相が2022年3月にあった集会のステージ上で、自らに対する外国の陰謀を示すものだとして、文書を振りかざしたのを受けたもの。元首相は国名は挙げなかったが、その後、アメリカを強く批判した。
検察側は、カーン元首相の行為は機密文書の漏えいと外交関係の毀損(きそん)に当たると主張していた。【6月4日 BBC】
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一連の政治・司法の動きの背後には軍部の意向があると推測されます。
パキスタンでは最も強い権限を持つのは軍部であり、首相も軍部の意向で決まることが多いようです。カーン元首相は当初は軍部と良好な関係で政権を獲得しましたが、その後軍部の支持を失い、一連の失職・起訴に至っているとも見られます。
****パキスタンのカーン元首相、汚職罪で禁錮14年 前日にも禁錮10年判決****
パキスタンのイムラン・カーン元首相と妻ブシュラ・ビビ氏が31日、汚職の罪で禁錮14年の有罪判決を受けた。カーン氏は前日、国家機密を漏えいさせた罪に問われた裁判で、禁錮10年の有罪判決を受けていた。
カーン氏は2022年に反対派によって首相の座を追われた。今回の裁判の前にも汚職の罪で禁錮3年の有罪判決を受けており、現在服役中。
カーン氏は、自身に対する訴追はすべて政治的動機に基づくものだとしている。
秘密保持に関する法律に基づく今回の有罪判決は、カーン氏が立候補を禁じられている総選挙を2月8日に控えたタイミングで出された。
カーン氏は言い渡された複数の禁錮刑に同時に服すると考えられている。カーンは昨年8月に拘束されて以来、主にアディアラ刑務所で収監されている。(中略)
カーン氏が率いる政党パキスタン正義運動(PTI)の広報担当は31日、この日の判決により、カーン氏は公職に就く資格を10年間失うことになると説明。「私たちの国の司法制度が解体されつつあるなか、また新たに悲しい日がその歴史に刻まれた」とした。
クリケットの国際的選手だったカーン氏は判決後、自身のX(旧ツイッター)のアカウントに声明を投稿。「平和を保ちながら、2月8日にあなたの一票であらゆる不正に仕返しをする」よう呼びかけた。
さらに、「私たちは棒で追い立てられるようなヒツジではないと示そう」と続けた。(中略)
訴追の原因となったいわゆる暗号事件では、カーン氏が首相在任中、米ワシントンのパキスタン大使から送られた外交機密文書を漏えいしたとされる。(中略)
今回の特別法廷は数カ月間続いたが、国際メディアは法廷に入ることを認められなかった。(中略)
カーン氏の別の側近によると、裁判では弁護団が弁護したり、証人を反対尋問したりすることはできなかったという。(中略)
パキスタンでは2月8日に総選挙が予定されている。この選挙をめぐっては、PTIが公正な選挙運動の機会を与えられていないとしている。
当局はPTIを弾圧してはいないとしているが、同党の指導者の多くは収監されているか亡命している。同党の候補者は無所属で立候補しなければならず、多くが逃亡している。
カーン氏が最初に拘束された昨年5月、警察はPTIの支持者数千人を、場合によっては暴力を使って検挙した。
同党はまた、クリケットのバットのシンボルマークも剥奪された。パキスタンは識字率が低く、有権者が投票先を選ぶうえで、このマークは欠かせないものだった。
今も高い人気を誇るカーン氏とその政党を除外して実施される総選挙については、その信頼性を疑う向きも多い。
勝利が有力視されているのが、昨秋亡命から帰国したナワズ・シャリフ元首相だ。シャリフ氏は、その長いキャリアの大半において強力な軍部の悩みの種となり、カーン氏が勝利した2018年の選挙の前に汚職の罪で収監された。
現在、その立場は逆転している。シャリフ氏の裁判は立ち消えとなり、多くの国民の目には、同市が有力者らに支持されていると映っている。一方で、かつて軍部と良好な関係だとみられていたカーン氏は人気を失っている。【1月31日 BBC】
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【2月の総選挙 カーン氏のPTIは党としては参加できなかったものの、無所属立候補で最大勢力に】
選挙に関するメディアの見立ては往々にして間違うものですが、上記BBCの“勝利が有力視されているのが、昨秋亡命から帰国したナワズ・シャリフ元首相だ”“カーン氏は人気を失っている”という見立ても大きく狂いました。
2月に行われた総選挙では、カーン氏率いるPTIは政党としては参加出来ませんので、党員が無所属として立候補した結果、最大勢力を獲得する結果となりました。ただ、過半数には至らず、PTI系無所属と与党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)、更に爆殺された故ベナジル・ブット元首相の息子ビラワル氏が率いるパキスタン人民党(PPP)の三者の三つ巴の形になりました。
****与野党「勝利」で混乱拡大=双方とも新政権樹立を主張―パキスタン****
パキスタンで8日行われた国民議会(下院、定数336)選挙で、与野党がいずれも「勝利」を宣言し、混乱が広がっている。双方がそれぞれ新政権樹立を主張する構えで、誰が首相となり国のかじ取りを担うのかは見通せない。
「30議席差がついているにもかかわらず勝利演説したナワズ・シャリフは卑しい人間だ。国民は受け入れないだろう」。最大野党パキスタン正義運動(PTI)が9日公開した動画の中で、同党設立者カーン元首相は与党トップをそう批判した。カーン氏は汚職の罪で収監中。声は人工知能(AI)を活用して合成したという。
選管は11日午後(日本時間同)、小選挙区の最終集計結果を公表。獲得議席数は、PTI系が候補の大半を占める無所属が101、与党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)が75、故ベナジル・ブット元首相の息子ビラワル氏が率いるパキスタン人民党(PPP)が54などとなった。選管は、投票用紙の盗難といった問題があった一部の投票所で再投票を命じた。
実質的にPTIが最大勢力となったものの、公式の政党として第1党になったのはPML―Nだったことが混乱の要因だ。
PTIは今回、党内の手続き上の問題を理由に選管から政党としての参加を認められなかった。PTIは同国で絶大な力を握る軍と対立。選管の決定には、軍や軍と比較的近い与党からの圧力があったとみられている。(後略)【2月11日 時事】
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最終集計では、カーン元首相が支持する無所属候補者が264議席中93議席を獲得して首位、シャリフ元首相の与党「パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派」(PML─N)は75議席で2位でした。
【連立交渉の結果、PTIは政権を得られず】
いろんな連立交渉が行われましたが、結局イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)と総選挙で3位につけたパキスタン人民党(PPP)が連立政権を継続することに。首相にはナワズ・シャリフ元首相の弟シャバズ氏が。
****パキスタン与党、連立継続で正式合意 最大勢力の野党政権阻止、支持者反発も****
(2月)8日に国民議会(下院)総選挙が行われたパキスタンで20日、イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)とパキスタン人民党(PPP)が連立政権を継続すると正式発表した。
選挙では国民の人気が高いカーン元首相が創設した野党のパキスタン正義運動(PTI)が弾圧されながらも最大勢力に躍進したが、多数派工作で政権樹立を阻止された。PTI支持者の反発が拡大しそうだ。(中略)
カーン氏は首相在任中、政治に強い影響力を持つ軍と対立し、今回の選挙前には複数回にわたり刑事訴追され、出馬を阻止された。PTIも政権側の弾圧で政党活動を制限された結果、多くの議員が無所属で立候補した。
一連のPTI側への圧力や今回の連立合意には、PTI政権誕生を阻止したい軍の意向が働いているとされる。
PTIは21日、連立合意を巡り、X(旧ツイッター)への投稿で「有権者はカーン氏がリーダーになることを望んだ。このままではパキスタンは闇に包まれる」と反発した。【2月21日 産経】
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首相にナワズ・シャリフ元首相ではなく弟シャバズ氏が立てれたのは、ナワズ氏率いる「パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派」(PML─N)の選挙で伸び悩んだことの責任と、軍部と対立を繰り返してきた兄ナワズ氏に対し、弟シャバズ氏の方が軍部と関係が良いことによるもの。
いすれにせよ、総選挙で最大勢力を獲得したカーン氏のパキスタン正義運動(PTI)は政権参加を阻止されることになり、支持者の不満は募ることに。
【無罪判決が出ても、別件で逮捕され、収監が続く】
7月には、再婚禁止期間に違反して現在の妻と結婚した罪に問われ、一審で有罪判決を受けたカーン元首相と妻に対する二審で、裁判所は逆転無罪判決を言い渡しました。カーン氏には6月にも別事件で逆転無罪判決が出ており、この判決によりカーン氏が釈放されるのかどうかが注目されました・・・・が、結局、別件で逮捕されて拘束が続くことに。
****パキスタンのカーン元首相を逮捕 逆転無罪直後、拘束続く****
パキスタンの汚職捜査機関は13日、カーン元首相を逮捕した。
逮捕直前、イスラム法が定めた再婚禁止期間に違反して現在の妻と結婚した罪に問われた事件の二審判決で逆転無罪となり、釈放の可能性が出ていたが、拘束が続くこととなった。地元メディアが報じた。
カーン氏はパキスタンの国民的スポーツ、クリケットの元スター選手で、野党パキスタン正義運動(PTI)を設立し、支持は厚い。支持者は新たな逮捕に反発しており、デモなどに訴えれば政情に影響が出る可能性もある。
詳しい逮捕容疑は不明だが、地元メディアによるとカーン氏が公職に就いていた際の寄贈品に関する捜査とみられる。【7月14日 共同】
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以上のように、そもそもカーン氏が拘束されているのも支持者からすれば政治的な言いがかりであるのに加え、軍の圧力で総選挙に党としては参加出来ず、無所属立候補で最大勢力になったにもかかわらず政権を得られず、裁判で無罪になってもすぐに別件で逮捕される・・・・ということで支持者の怒り・不満が募っている状況での冒頭のカーン元首相の釈放を求める大規模な抗議デモです。
相当に荒れそうだということで、警察、更には軍が首都イスラマバードを封鎖するという厳戒態勢となっています。