孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加申請 “一つの中国”が絡む悩ましい問題

2015-04-03 21:34:28 | 東アジア

(3月30日 台北 馬英九総統のAIIB参加表明に総統府前で抗議する人々 【https://twitter.com/yunhanwang1/status/583069239923216384】)

AIIB参加国50超 国際金融機関として一定の存在感を示す可能性
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の話は、3月29日ブログ「中国主導のアジアインフラ投資銀行への“参加ドミノ” 日米の意向にかかわらず「世界は止まらない」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150329 でも取り上げました。

その後も、創設メンバー国として扱われる期限の3月末に向けて“駆け込み”が相次ぎ、51の国と地域に膨らんだようです。

日本とアメリカは、銀行の運営に不透明な点が残るなどとして参加の申請をしていません。

こうした対応については、単にアジアでのインフラ建設におけるビジネスチャンスを失う云々という話だけでなく、今後ますます国際的影響力を強めていく隣国・中国にどのように向き合っていくかという、日本の基本的な立ち位置を考えた際に、また、主要なプレーヤーとしての中国をどのように国際社会に受け入れるかということを考えた際に、いかがなものか・・・、時計の針が10年か15年前ぐらいで止まっているのではないか・・・という個人的な印象は前回ブログで触れたところです。

****戦わずして日米に勝つ」中国が狙う21世紀の“孫子の兵法” 雪崩を打って各国参加****
中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、日米を尻目に、アジアや欧州の国々が雪崩を打って参加を申請した。上海の大学教授は、「(日米に対抗する)21世紀の『孫子の兵法』だ」と評した。

米ドルを基軸通貨とする既存の国際金融秩序とは別に、自国に有利なルールを作り上げたい中国は、潤沢な資金力を武器に多くの国々を陣営に引き入れ、「戦わずして日米に勝つ」との策を実行に移しつつあるからだ。【3月31日 産経】
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****外交敗北」ではない=アジア投資銀の参加見送り―麻生財務相****
麻生太郎財務相は3日の閣議後記者会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加判断を日本政府が先送りしたことに関し「日本政府や民間銀行が(金融面から)支援しているので、特にマイナスになるということはない」と強調した。

野党が政府の対応を「外交の敗北」と批判していることには「敗北なんて思ったことは全くない」と反論した。(後略)【4月3日 時事】
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勝つとか負けるとか、そういう話ではなく・・・・と思うのですが、その話は今回パスします。

【「台湾が適当な名義で参加することを歓迎する」】
今回は台湾の話。
台湾もAIIBへの参加を申請していますが、日本以上に悩ましい選択です。

****台湾、AIIBへの参加を表明 習近平氏と前副総統が会談****
台湾の蕭万長前副総統は28日、海南省ボアオ(博鰲)で中国の習近平国家主席と会談し、中国が主導する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に台湾が参加する方針を伝えた。「ボアオアジアフォーラム」年次総会に出席中の台湾当局者が明らかにした。

会談は年次総会の開幕式前に行われた。AIIBへの参加について、台湾側では「中台両岸の産業協力」をはじめ、台湾の地域関与を進める上で有利だと説明している。

さらに蕭氏は、中国がユーラシア大陸の内陸と沿岸で進めるインフラ整備構想にも、台湾が積極的にかかわる考えを伝えた。

会談を前に、蕭氏は台湾メディアにAIIB参加に積極的な姿勢を取る馬英九政権の方針を表明していた。これに対し、中国の張志軍・台湾事務弁公室主任は、「台湾側の具体的な考えを聞きたい」と述べていた。会談には張氏も同席した。【3月28日 産経】
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台湾側は、“昨年10月に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の財務担当閣僚会合で、中国側から非公式に提案があった”(張盛和財政部長)【3月19日 産経】とも説明しています。

北朝鮮の参加希望を“北朝鮮の財政状況や経済の実態が不透明で、情報開示も不十分だとして、要請を断ったという。融資を踏み倒す可能性を懸念したとみられる。”【3月31日 時事】と断った中国ですが、“一つの中国”を巡って曖昧・微妙な関係にある台湾については“歓迎”の姿勢です。

(それにしても、北朝鮮について“融資を踏み倒す可能性を懸念”というのも辛辣な表現です。「血で固められた友誼」はすでに過去のものになったようです。)

****台湾の参加を「歓迎」=アジア投資銀―中国****
中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は1日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に対する台湾の参加申請について「(AIIBは)開放、包容的であり、台湾が適当な名義で参加することを歓迎する」との談話を発表した。「一つの中国」原則の下、名称や資格について調整した上で、参加を受け入れるとみられる。【4月1日 時事】 
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いうまでもなく、台湾にとっては中国との距離の取り方が最重要問題です。
政治的に中国に統合されることは絶対に認められませんが、経済的には中国なしには立ち行かないのも現実です。

そうした事情から、“ひとつの中国”という大問題は棚上げにして、とにかく経済的関係を・・・という台湾ではありますが、原則的には互いに相手を独自の“国家”としては認めていない“一つの中国”も絡むのが「適当な名義」という問題であり、台湾の扱いです。

****駆け込みでもなければブラックボックスでもない」参加の台湾苦しい釈明 「名称『中国台北』は受け入れられない****
中国が主導する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明した台湾の馬英九政権が、苦しい立場に立たされている。

期限の3月31日に正式申請したことで野党から“駆け込み”批判を受けたほか参加の名称なども微妙な問題で、今後さらなる反発を招く可能性もある。

「駆け込みでもなければブラックボックスでもない」
張盛和財政部長(財務相に相当)は1日、海外メディアとの懇談で、こう釈明した。

台湾の蕭万長前副総統が中国の習近平国家主席に参加の意向を伝えたのは先月28日。正式な意向書送付は31日夜にずれ込んだ。

張氏は、AIIBの創設基本合意書が昨年10月、北京で署名されてから約2週間後に検討を始め、先月4日には中台関係の改善や投資機会の増加など「加入は利益が多い」との結論を得ていたと強調した。
一方で、米国の方針も「慎重に考慮した」と述べ、対米配慮から意向表明が遅れたことを示唆した。

野党、民主進歩党は加入自体には反対していないものの、31日の声明で、立法院(国会)での審議などを経ず手続きが「ブラックボックス」で「奇襲」だと批判。同日深夜には学生数十人が総統府前で抗議デモを行い、一部が警官隊との衝突で身柄を拘束された。

参加資格や名称も課題だ。中国の王毅外相は28日、加入表明を歓迎し「名称は国際慣例に従って処理される」と述べた。

だが、「一つの中国」の原則を掲げ、台湾を自国の領土とみなす中国は、台湾の国際組織への加盟を妨害してきた経緯がある。

台湾側は、原加盟国だったアジア開発銀行(ADB)で、1986年の中国加盟後、名称を「中国台北」に変更されたことを不服としており、AIIBでもこの名称は「受け入れられない」(外交部幹部)としている。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)などでの「中華台北」が妥協点になるとみられるが、台湾が求める「対等かつ尊厳ある原則での加入」を中国がどの程度認めるかは、予断を許さない。【4月3日 産経】
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アジア開発銀行(ADB)については、中国の加盟後も台湾はとどまっていますが、「中国台北」の名称に変わっており、台湾側はこの名は受け入れられないと抗議を続けています。

夏立言・大陸委員会主任委員は「尊厳が守られなければ参加を取りやめる」とも。【4月1日 朝日より】

中国も、どれだけ公正で透明性のある運営をするのかが国際的に注視されているAIIBですから、あまり台湾をめぐる政治問題で深追いはしないのでは・・・とも思われます。

それにしても、台湾にとっては、中国との難しい交渉、その国内的な反響が今後待ち受けています。

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