(ブルネイの親子 ブルネイは立憲君主制ではありますが、国王の権限が強く、絶対君主制の一種であるとされています。“死刑制度は存在しているが、1957年以降、執行が行われていないため事実上廃止の状態となっている。”【ウィキペディア】とのことですが・・・・ 写真は“flickr”より By H.L. TAM https://www.flickr.com/photos/hltam/6111876691/in/photolist-bEvswN-m3jCG2-mdKEDu-7dR33E-nozDFw-akXhYZ-bjUeZS-hitDjR-8Jg2ps-iatUhL-hnucts-khA1nk-bKPBLP-9YRLbT-3tgEZ-nca6TL-hpYHH5-aSy2ee-hLcSDM-hnvpXF-ab33Ut-54Nrf9-fu7S1v-bTq94k-aj5Y1k-noKBBE-41u6Vy-iejvMS-8cw1yF-hvgsEq-hpYcC6-mSdSST-5HFQAN-2RgMn-7HHtVH-aiQS5Q-bxoiXJ-fofRLK-79VbTw-7HMpH9-bxodTC-6xGTGP-5PsHAA-asbFQG-efJVE7-7HHugV-aSy1SX-5PsHoG-fpJEW1-brwcPj)
【死刑制度の現況】
【ウィキペディア】によれば、2012年1月時点において
あらゆる犯罪に対する死刑を廃止 ・・・97か国
戦時の逃走、反逆罪などの犯罪は死刑あり。それ以外は死刑を廃止 ・・・7か国
法律上は死刑制度を維持。ただし、死刑を過去10年以上実施していない。もしくは、死刑を執行しないという公約をしている国・・・48か国
過去10年の間に死刑の執行を行ったことのある国・・・42か国
となっています。
国別にみると、“西洋文化圏であるヨーロッパ、南米、カナダやオーストラリアなどの国で死刑は廃止され、またこれらの国が中心になって自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)が国際連合総会で採択された。
一方で、日本を含むアジア諸国や宗教的に応報が原則とされる中東およびアフリカ諸国の大部分、そして欧米文化圏では例外となるアメリカ合衆国の32州などで死刑制度が存置されている。”【ウィキペディア】となっています。
日本は死刑制度を維持し、実際に刑を執行している少数派になりますが、国連では日本など死刑制度がある国に執行の一時停止や死刑に関する情報公開を求める決議案が採択され、圧力も強まっています。
もっとも、内戦などで日常的に犠牲者が出ているアフリカの国が“死刑を過去10年以上実施していない。もしくは、死刑を執行しないという公約をしている国”に入っていたり、犯罪による犠牲者が多い南米諸国が死刑廃止国になっていたりと、その社会における命の重さと死刑制度の現状とは必ずしもリンクしていないようです。
日本などで死刑が支持されている理由としては、犯罪の抑止効果、罪に対して等しい責任を取らせる応報、被害者遺族の感情などが挙げられます。
死刑制度の是非については多くの議論があるところですから、最近見たトルコの死刑制度復活に関する記事だけあげて、それ以上はここではパスします。
なお、死刑の犯罪抑止効果については統計上証明されていないとされています。
****子どもの殺害事件増、死刑復活を求める声 トルコ****
トルコでは子どもが犠牲となる残虐な殺人事件が相次いだことを受け、廃止された死刑制度の復活を求める声が強まっており、子どもを殺害した犯人に対する刑の厳罰化に政府が乗り出している。
トルコでは欧州連合(EU)加盟を目指し、加盟条件の1つとして求められていた死刑廃止を10年以上前に決定し、その2年後に憲法に反映させたが、残虐な殺人事件が続いていることからその復活を望む声が上がっている。
同国のイスラム系政党、至福党(のユスフ・イギタルプ副党首は、死刑を廃止したことによって犯罪が急増しており、死刑制度の復活は「絶対必要」だと語った。(後略)【5月6日 AFP】
****************
【薬物注射による死刑執行の失敗の背景に欧州製薬会社の輸出規制】
今日取り上げるのは、死刑の方法に関する話題です。
****死刑執行の薬物注射に失敗、40分もだえ苦しみ死亡 米国****
米オクラホマ州で29日、死刑執行の薬物注射に失敗したため刑の執行中止が命じられたが、死刑囚は苦しみながら約40分後に心臓発作で死亡した。
殺人と強姦の罪を犯したクレイトン・ロケット死刑囚に対する刑の執行は、3種類の薬物を段階的に注射する方法で行われたが、試験が行われていなかった新しい薬物の組み合わせが用いられていた。
同州矯正局の報道官によれば、注射は29日午後6時23分に開始されたが、その3、4分後「静脈に障害」が起きたため、矯正局のロバート・パットン局長が執行中止を命じた。
しかしロケット死刑囚は、約40分後の午後7時6分に「ひどい心臓発作」によって死亡した。
薬物は鎮静剤、麻酔剤、致死量の塩化カリウムの3種類すべてが注射されたが、体内に吸収されていかなかったという。
現場にいた地元紙タルサ・ワールドの編集者によると、すでに意識不明となったことが宣言されていた執行開始から約13分後、ロケット死刑囚はもだえ苦しみ始め、時に理解できない言葉を発し、死刑用の担架に縛られた体が動くなどした。
「非常に苦しんでいるように見えた。時々、担架から逃げ出そうとするかのように、頭や肩が担架から起き上がっていた」という。その後、死刑執行室のブラインドは閉められたという。
この日はオクラホマ州で80年ぶりに1日2回の死刑が執行される予定だったが、ロケット死刑囚の刑執行の失敗を受け、次に控えていたチャールズ・ワーナー死刑囚の刑の執行は14日後に延期された。
ワーナー死刑囚を担当するマデリン・コーエン弁護士は声明を発表し「クレイトン・ロケット氏は拷問されて死んだ。今夜起きた事態が究明されるまで、オクラホマ州では死刑の執行は許可されない」と述べ、独自調査と検視による原因究明を訴えた。【4月30日 AFP】
**************
この事態を受け、オクラホマ州最高裁は5月8日、死刑執行を今後6か月間、停止することに同意しました。
この判断に、州当局も同意しています。
アメリカでは、死刑執行の失敗例が数多く報告されています。
****米国の死刑、執行失敗例では中世並みの悶絶****
米国の死刑といえば、医学処置による人道面にも配慮したものだと思われているが、ときに中世の拷問とも違わぬ陰惨な最期を悶絶しながら遂げる死刑囚もいる。
絶叫、体が焦げる匂い、あまりの残酷さに立会人たちは気絶する・・・「犬猫の殺処分のほうがもっと人道的です」。1992年にアリゾナ州で死刑に立ち会った記者カーラ・マックレーンは語った。
このとき刑を執行されたドナルド・ユージーン・ハーディング死刑囚は、ガス室のなかで死ぬまで10分以上、のたうちまわり、もがき苦しんだ。(中略)
デービス死刑囚は、約160キロの彼の体躯(たいく)にあわせてしつらえられた特製の電気椅子にくくりつけられていた。処刑が執行され死を宣告されるまでに、口からあふれ出した血が白いシャツにぐっしょりとこぼれ、電気椅子に彼を縛り付けていたストラップのバックルの穴からもしたたっていた。(中略)
「それじゃ、効かないよ!効かないって」。ジョセフ・クラーク死刑囚は2006年5月、執行官が22分かけて探し出した静脈が、注射が始まったとたんに破裂すると、すすり泣きながら叫んだ。(後略)【2009年10月18日 AFP】
***************
この話題を取り上げたのは、その非人道性云々の話ではなく、薬物注射による死刑執行が最近失敗した背景に、意外な理由があるとの記事を見たからです。
****死刑大国アメリカをEUが締め上げる****
死刑反対のEUが死刑用薬物を輸出規制 その場しのぎの薬で死刑囚が苦しむ事態に
相手国の政権に政策変更を迫るため、経済制裁という手段に出るのは果たして有効か・・・ロシアやシリア、イラン情勢のおかげで、最近そんな議論が盛んだ。
こうした制裁を発動する側であるアメリカだが、死刑という人権問題に関してはアメリカもある意味「制裁下」に置かれている。
それは先週オクラホマ州で死刑が執行された際に起きたひどい失態のせいで、自明のものとなった。
クレイトン・ロケット死刑因に薬物注射が行われたが、薬物が効かなかったために中断された。だがロケットはもだえ苦しみながら40分後に心臓発作で死亡。注射には前例のない薬物の組み合わせが用いられていた。
同州が新たな薬物を使用したのは、ここ数力月でアメリカのさまざまな州が、薬物の供給先確保に苦心しているせいだとの指摘もある。
というのも、死刑反対を叫ぶ製薬会社(多くが欧州の企業)が販売を拒否しているためだ。薬物の人手が難しく
なり、銃殺やガス室など昔の処刑方法を検討する州まで現れた。
足並みがそろわないことも多いEU諸国だが、死刑反対では結束している。死刑に用いられる薬物に対し、EUは05年に輸出規制を開始した。(中略)
こうした輸出規制がアメリカの死刑の現状に影響を及ぼしているのは確かだ。何しろ数々の州が、効果にばらつきのある新たな混合薬物に頼らざるを得ない危険な状況に追い込まれているのだから。
一方でこの規制が、アメリカでの死刑制度廃止という最終目標のために効果を挙げているかは疑問が残る。(中略)
アメリカは今でも世界の民主主義国の中では執行数トップの死刑大国だが、年間の執行数は99年以来おおむね減少を続けている。国民の問では死刑支持が多数派を占めるものの、その支持率は死刑制度が復活した76年以降で最低に落ち込んでいる。
そんななか、死刑を廃止するべく打ち出された輸出規制のせいで各州が未試験の危険な混合薬物を使わざるを得なくなり、これまで以上に残酷な死刑を招いているというのは、なんとも皮肉なことだ。(中略)
欧州に倣い、アメリカが近々死刑廃止の道を選ぶ可能性は低い。それでも、EUの規制で結果的に「残酷な死刑」への注目が高まったことで、死刑減少に向けた動きは加速しそうだ。【5月13日号 Newsweek日本版】
****************
アメリカの薬物注射による死刑の失敗が、欧州製薬会社の輸出規制の影響・・・実に意外な話です。
【ブルネイ国王 シャリアに基づく刑法を導入】
死刑方法に関して、世界の注目を集めている国があります。
ボルネオ島の小国ブルネイです。
****ブルネイがイスラム刑法施行、手足切断や石打ちも****
ブルネイは東アジアの国として初めて、イスラム教のシャリア法に基づく刑法を導入した。
強姦や姦通、同性間の性行為などの罪に問われた者に対し、むち打ちや手足切断、石打ちによる死刑などの厳罰を定めている。
シャリア法に基づく刑法は、ボルキア国王が4月30日の式典で第1段階の施行を宣言した。同国ではこれまでにも、アルコールの販売禁止などイスラム教の厳格な教えに基づく民法が施行されていた。
新しい刑法の大部分は、イスラム教徒だけでなくキリスト教徒や仏教徒にも適用される。ブルネイは人口の約70%をマレー系のイスラム教徒が占める。
同法は2013年10月に発表され、各国の人権団体や同性愛者団体が強く反発してきた。国連難民高等弁務官事務所の広報は先月ジュネーブで開いた記者会見で、「国際法の下では石打ちによる死刑は拷問などの残虐な処罰に当たるとして禁止されている」と指摘した。
さらに「女性に対する根深い差別や偏見のため、石打ちによる死刑を言い渡されるのは女性の方が多いことが分かっている」との懸念も示した。【5月2日 CNN】
***************
イスラム社会でのシャリアに基づく石打ち刑は、しばしば問題になります。
特に、姦通罪に問われた女性が対象になることが多いためでもあります。
****ブルネイ系ホテルをボイコット、イスラム法導入に著名人ら反発****
・・・・原油産出で潤うブルネイの財務省傘下の政府系ファンド「ブルネイ投資庁」は、英ロンドンなどで展開する高級ホテルグループ、ドーチェスター・コレクションを所有しているとされるが、ヴァージン・グループのブランソン会長は前週末、スルタンが基本的人権を尊重するようになるまで、自社の従業員はドーチェスター系列のホテルを利用しないと宣言した。
また英俳優スティーブン・フライ氏や米国のコメディアンでテレビ司会者のエレン・デジェネレス氏も、ドーチェスター系ホテルの利用のボイコットを呼び掛けている。
女性の権利団体フェミニスト・マジョリティ財団も、ブルネイ王家が事実上所有する米ロサンゼルスのビバリーヒルズホテルで予定していた国際賞の授賞式をキャンセルすると発表した。(中略)
イスラム法の施行については第1段階として、わいせつ行為や金曜礼拝の欠席、婚外関係で妊娠した場合などに罰金または禁固刑を科すとしている。
また第2段階として年内に、泥棒や強盗などに対する刑の厳罰化を予定している。この中には手足の切断や公開むち打ち刑が含まれている。
さらに同性間の性行為や不倫をした者に対し、石打ちによる死刑を科すことを含む刑罰を来年末までに導入するとしている。【5月6日 AFP】
******************
なお、ブルネイ国内においてもソーシャルメディア上ではまれな激しい批判の声も上がっていましたが、ボルキア国王がそうした批判の中止を命じた後、批判の声はほぼなくなったそうです。
なお、日本のネット上では、ブルネイの石打ち刑を支持して「日本もこれぐらいやるべきだ」との声が溢れています。
西部劇で「吊るせ!吊るせ!」とリンチを求めて叫ぶ群衆のようです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます