孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ガザ地区の窮状 ラファ検問所は開放合意とのことだが・・・ 病院爆撃をめぐる情報戦など

2023-10-20 23:08:32 | パレスチナ

(ラファ検問所の外で開放を待つ救援物資を積んだトラック【10月20日 FNNプライムオンライン】)

【イスラエル軍の侵攻を前に電気・水も止まり、食糧・燃料も底をつくガザ】
南アフリカ・ジンバブエの旅行を終えて10日ぶりに帰宅しましたが、国際関係ニュースはほぼパレスチナ・イスラエル問題一色の様相。

10日前もイスラエルのガザ侵攻の地上戦は不可避の状況と見られていましたが、現在でもイスラエルは地上戦に突入はしていないものの、状況自体は変わっていません。イスラエルのガラント国防相は19日、ガザとの境界に集結するイスラエル軍に「(ガザを)もうすぐ内側から見ることになる」と演説しています。

この間に犠牲者は、特にイスラエル軍の空爆に曝されているガザ地区で増え続けています。

****ガザ、イスラエルの死者計5500人以上に****
パレスチナ自治区ガザの保健当局は20日、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘によるガザ側の死者が4137人となったと発表した。イスラエル側と合わせると死者は5500人以上となる。【10月20日 共同】
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おびただしい情報をまとめると4点。ガザ地区の窮状、それを救うためのエジプト側ラファ検問所がいつ開くのか、そして今後の展開に大きく影響する、多くの犠牲者を出した病院爆撃の影響と情報戦及びヒズボラの動向・・・といったところ。

第1点目。イスラエルの包囲下にあり、イスラエルの地上戦実施に息をひそめるガザ地区では攻撃の舞台となる北部から約50万人の住民が南部へ避難していますが、その生活は電気も途絶え、水・食料・燃料も底をつく極限状態にあります。

****「水の供給量は5%以下に」ガザ地区の人道状況はさらに悪化 9日連続の停電で病院も“崩壊寸前”***
イスラエルとイスラム組織ハマスの大規模な戦闘をめぐり、国連人道問題調整事務所はパレスチナ自治区ガザの水の供給量が平常時の5%以下になっていると明らかにしました。

イスラエル軍はハマスによる攻撃への報復として、ハマスが実効支配するガザ地区の包囲を続け、水や燃料の供給を停止しています。

国連人道問題調整事務所によりますと、19日の時点でガザは9日連続で停電。地域の病院は一部の手術を中止したり、暗闇での作業を強いられたりしていて、崩壊寸前の状況だということです。

また、地下水源を利用した水の供給が平常時の5%以下に低下した一方で、燃料不足や道路の損傷により、ほとんどの地域で給水トラックが運行できなくなっていると指摘しました。【10月20日 TBS NEW SDIG】
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****ガザへの支援搬入行われず 国連機関「物が底つく」 トラック待機も開かぬ検問所****
バイデン大統領が合意したと表明したガザ地区への支援物資搬入。ただ、エジプトとの境界にある検問所は現時点でも開かれておらず、現地の状況は刻一刻と悪化しています。

■ガザへの“支援搬入”行われず
約3785人は今月7日以降、パレスチナ自治区ガザで命を奪われた人の数です。ガザの人々に降り掛かるのは空爆だけではありません。

避難をしている女性:「普通の生活、食べるもの、飲むものがありません。子どもをトイレに連れて行っても100人も並んでいます」

イスラエルの遮断により、ガザ地区には電力も物資も一切入っていません。国連の機関も、もはや支援ができない状況です。

国連パレスチナ難民救済事業機関 吉田美紀さん:「こういう緊急事態に備えて食料とか、それ以外の蓄えがあります。ただ最大15万人が避難してくるという想定で、そのキャパを超えているので本当にものが底をつくような状況です」(後略)【10月20日 テレ朝news】
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****病院は廊下まで負傷者、ガザ避難民「どうしたら生き残れるか」…パン購入に4時間待ち****
パレスチナ自治区ガザの北部から南部ハンユニスに逃れた約50万人とされる避難民の人道状況が深刻さを増している。イスラエルによるガザ封鎖で日常生活に欠かせない住居や食料、電気が足りない日々が続き、空爆で安全も脅かされている。

南部ハンユニス
読売新聞通信員によると、病院では負傷者が廊下まであふれている。避難先で家を確保できなかった数万人が学校や病院の軒下で夜露をしのぐ。ごみ収集車はガソリンがないため動かず、道にはごみが散乱し、異臭が漂う。市場の棚は空っぽだ。

まきで焼くパン店には、朝から人々が殺到している。ガザ北部から家族5人で逃れてきたイマード・ナジャラさん(30)は嘆く。「ここでは人間が生きていくだけの最低限のものすら得られない。家族は今、命の危機に瀕ひんしている」

ガザ北部の家がイスラエル軍の空爆で破壊され、約30キロ南のハンユニスに家族と逃れてきた中学生イスラム・マドフーム君(14)は連日、開店前のパン店に並ぶ。いとこのムハンマド君(14)と4時間ほど並んで買えたのは、「ホッブス」と呼ばれる丸く平たいパン数個だけ。家族や親戚30人が食べるには不十分だ。

2人は1日2、3回、5キロほど離れた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校まで水もくみにいく。(中略)

(家族・知人とともに避難してきたガラバウワイさんは)2部屋の小さな家を借りたが、15人では狭すぎる。床に縮こまり、重なり合うようにして眠る。水が出ないため、トイレの水も流せない。ガラバウワイさんは「想像を絶する生活が続いている。どうしたら生き残れるか」と嘆いた。【10月20日 読売】
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ついでに言えば、この状況を作り出している一方の当事者であるハマス指導者は海外で優雅なホテル生活とか。

****総資産6000億円 ハマスのトップ「5つ星豪華生活」 優雅な“安全圏”から攻撃見守る?****
■ハマスのトップ「5つ星豪華生活」
戦局の鍵を握るハマスのトップ。その居場所に批判が集まっています。(中略)

■優雅な暮らし?総資産6000億円
軍事衝突の発端となったハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃。その様子をテレビで見つめる男性。微笑んでいるように見えます。イスマイル・ハニヤはガザを実効支配するハマスの最高指導者です。

海外メディアは、こう批判しています。
英・テレグラム:「ハマスの指導者たちはカタールで5つ星の豪華な生活をしている」
タイムズ・オブ・イスラエル:「カタールの首都ドーハにある優雅な事務室で残忍な攻撃を見守っていた」(中略)
 
組織のトップなだけに具体的な生活ぶりは分かりませんが、ハニヤ氏の推定資産は約40億ドル、日本円で約6000億円と報じられています。海外の要人ともカタールで会談を行っていることから、歓迎されているのは間違いなさそうです。(後略)【10月19日 テレ朝news】
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もちろん、ハマス中枢がイスラエルの攻撃に曝されるガザを避けて海外に拠点を持つというのは「道理」ではありますが、現在のガザ住民の窮状を思えば、割り切れないものもも。

【20日に開放合意とのラファ検問所 ただし、トラック20台・・・】
第2点目。こうした窮状を救う一筋の希望となっているのが、イスラエルと良好な関係を持ち、ハマスなどのイスラム過激派に厳しい姿勢を取るエジプトが管理するラファ検問所。

ガザ住民らを救おうと、各地から集まったトラック数百台が救援物資を積んで検問所前に列を作り、開門の時を待っていますが、(日本時間20日22時の時点で)未だ検問所は閉じたままです。

アメリカはイスラエルを支持するものの、ガザ地区でのパレスチナ人の犠牲・惨状は国際世論を考えると極力避けたいところ。イスラエルを訪問したアメリカのバイデン大統領は、帰国時に機内からエジプト・シシ大統領とも電話会談、ガザ地区へ支援物資を搬入する合意をイスラエルとエジプトから得たと発表しています。

****米エジプト合意、20日にも人道支援=ガザへ水、食料など搬入へ―戦闘続き死者5200人****
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突を巡り、イスラエルによる封鎖の影響で滞っていたパレスチナ自治区ガザへの支援物資搬入が実施されることになった。

バイデン米大統領が18日、エジプトのシシ大統領との電話会談後、記者団に明らかにした。最短で20日開始の見通しで、7日の戦闘開始後に水や食料、燃料などが極度に不足していたガザ住民への支援にようやく道が開かれた。ただ、人道状況の改善は限定的となりそうだ。(後略)【10月19日 時事】 
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イスラエル首相府は18日、ガザへの人道支援物資の搬入を認めるとの声明を出しましたが、実施時期は明らかにしていません。

ただ、合意によれば、ラファ検問所からガザ地区への搬入が認められたのはトラック20台分とのこと。

****米とエジプト ラファ検問所からトラック20台の人道支援物資搬入で合意****
パレスチナ自治区ガザへの人道支援について、アメリカのバイデン大統領はエジプトとの境界の検問所からトラック20台分の支援物資を運び入れることで、エジプトのシシ大統領と合意したと明らかにしました。(中略)

検問所の道路の補修に時間がかかることから、支援物資の運び入れは20日以降になるとの見通しを示しています。

ガザ側では国連が物資の受け取りや配給を担当するとしていて、「ハマスが物資を押収したり配給を邪魔したりしたら支援は終わる」と話しました。

一方、ラファ検問所からの外国人らの退避については、今回の合意に含まれていないということです。

バイデン大統領は「我々は人々を救い出すが詳細は言えない」と話しています。【10月19日 TBS NEW SDIG】
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開門は21日にずれ込むかもとの情報もありますが、なぜ速やかに開門しないのかも疑問ですし、トラック20~30台の支援物資では、現在の窮状を救うにはあまりにも少ないようにも思えます。
更に、ハマスへ物資が流れたと判断されれば、それも止まります。イスラエル・エジプトの判断でいかようにも。

基本的な問題は、今回合意はあくまでも物資搬入であって、外国籍を持たない一般住民の避難ではありません。外国人にしても、アメリカ人の避難さえ明らかになっていません。イスラム過激派が混じる危険がある住民避難はエジプトは認めないのでしょう。

一方ハマスも外国人等を「人質」としてガザに止めおきたい思惑もあるとも。
“中東ジャーナリストの池滝和秀氏は、「外国人とか外国籍保有者、そういった方々が(ガザ)南部にいた方が、南部へのイスラエルの攻撃を抑止できると。(退避活動を)ハマスが妨害しないとも限らない。(検問所の)人の通過については、まだ流動的」と述べた。”【10月19日 FNNプライムオンライン】

****国連総長がガザ検問所訪問、再開時期触れず****
国連のグテレス事務総長は20日、パレスチナ自治区ガザと境界を接するエジプト側の検問所前を訪れ、一刻も早くガザに物資を届けなければいけないと記者団に訴えた。検問所再開の時期には触れなかった。【20日 共同】
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【ガザ病院爆撃をめぐる情報戦】
第3点目。ガザ北部ガザ市の病院で17日、大きな爆発があり、500人とも言われる膨大な犠牲者が出たとされる件は、今後の国際世論の動向に大きく影響します。

アラブ世界ではすでにイスラエル批判が大きなうねりとなっており、アラブ諸国は対応を硬化させています。もしイスラエルの攻撃によるものとなれば、国際世論はイスラエルに厳しいものに変化します。

“米大統領、イスラエルへ出発 パレスチナ議長、会談拒否”【10月18日 共同】
“バイデン米大統領、ヨルダン訪問を延期 ガザ病院爆発受け”【10月18日 ロイター】
“病院攻撃は「国際法違反」 EU大統領が非難”【10月18日 共同】

問題はイスラエルによる攻撃か、それともガザ地区過激派に誤射によるものか・・・その実態がよくわからないこと。犠牲者についても、ガザの保健当局が発表した471人よりはるかに小さいとの情報も。

****ガザ病院爆発、死者は最大300人 「イスラエルに責任なし」=米機密文書****
パレスチナ自治区ガザの病院で17日に起きた爆発による死者の数について、米情報機関が「100─300人の幅のうち下限に近い水準」と推定していることが、ロイターが入手した米機密情報報告書で分かった。

ガザ市にあるアル・アハリ病院で起きた爆発を巡っては、イスラム組織ハマスが実効支配するガザの保健当局はイスラエル軍の空爆で引き起こされたと主張。ガザ保健当局は18日、死者数は471人と発表した。これに対し、イスラエルはパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。

ロイターが19日に入手した米機密文書は、インテリジェンス活動やミサイル動向のほか、オープンソースの映像や画像を含む入手可能な報告に基づき「イスラエルに責任はないと判断している」としている。

死者数については「100─300人の範囲の下限に近い水準と推定している」とし、まだ評価中であるため推定は変化する可能性があるとしながらも、「驚異的な人命の損失を反映している」とした。

また「(現場となった)病院では軽度の構造的な損傷しか確認されていない」とし、「病院の主要な建物には確認できる損傷はなく、衝撃によるクレーターも確認されていない」と指摘した。【10月20日 ロイター】
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欧州では「死者は最大50人」との分析も出ていますが、真相不明のまま、イスラム圏では反イスラエル感情が激しさを増しています。

当然のようにハマス側は、この事件を最大限に活用て、アラブ世界にイスラエル・アメリカの非道を訴えたい思惑があります。

****ガザ病院攻撃は「新たな転換点」、責任は米国に=ハマス最高指導者****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの最高指導者、イスマイル・ハニヤ氏は17日、ガザ市内の病院に対する空爆で数百人のパレスチナ人が死亡したことについて、この攻撃の責任は米国にあると述べた。

ハニヤ氏はテレビ放映された演説で、米国がイスラエルに「侵略の隠れみの」を与えていると非難。「病院で起きた大虐殺は、敵の残忍さと敗北感の大きさを裏付けている」と述べ、今回の攻撃は「新たな転換点」になるとの見方を示した。

その上で、全てのパレスチナ人に対し占領者と入植者に立ち向かうよう促すと同時に、全てのアラブ人とイスラム教徒に対しイスラエルに対する抗議行動を起こすよう呼びかけた。【10月18日 ロイター】
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イスラエル側は、衝撃によるクレーターも確認されていない事に加え、ハマス戦闘員の音声なども公開し、過激派側の誤射をアピールしています。まさに情報戦の様相。

****病院爆撃めぐりイスラエル軍が「ハマス側」音声を公開 「イスラム聖戦のものだと言われている」「なんだって?」****
パレスチナ自治区ガザにある病院への爆撃をうけ、イスラエルへの非難が周辺の中東諸国に広がり、緊張が高まっています。中東各地に広がるイスラエルに対する抗議活動。抗議はエジプトやトルコ、そしてイランでも。レバノンでは、イスラエルに連帯を示すアメリカの大使館近くでも抗議活動が。(中略)

ガザを支配するイスラム組織ハマスは「イスラエル軍に空爆された」と主張していますが、イスラエル軍はガザの武装勢力「イスラム聖戦の誤発射」だとして、「ハマス側」の会話だとする音声を公開しました。

「ハマス側の会話」とする音声
「こんなミサイルが落ちるのを見るのは初めてだ。『イスラム聖戦』のものだと言われている」
「なんだって?」 「イスラム聖戦のものらしい」 「我々のものなのか?」 「そうらしい」(後略)【10月19日 TBS NEWS DIG】
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更に、住民が避難するガザのキリスト教教会も被害に。こちらはイスラエル側の攻撃の巻き添えのようです。

****ガザのギリシャ正教教会、イスラエルが空爆 正教会が非難****
エルサレム正教会総主教庁とパレスチナの保健当局によると、パレスチナ自治区ガザにあるギリシャ正教の教会が夜間にイスラエル軍に空爆された。教会には行き場を失ったパレスチナ人数百人が避難していたという。

ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが運営する政府メディア局によると、キリスト教徒のパレスチナ人18人が死亡。

イスラエル軍は過激派の司令部を攻撃した際に教会の一部が損傷したとし、現在、調査を進めていることを明らかにした。

パレスチナ当局によると、教会にはイスラエルの攻撃から逃れるために少なくとも500人のイスラム教徒とキリスト教徒が避難していた。

エルサレム正教会総主教庁は「ガザ市の教会を破壊したイスラエルの空爆を最も強い言葉で非難する」との声明を発表。(中略)

ガザには230万人が暮らしているが、キリスト教徒は推定1000人で大半がギリシャ正教の信者。【10月20日 ロイター】
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いずれにしても、昔と違って「戦争で民間人が死ぬのは当たり前」という世界では(少なくとも建前としては)なくなっています。今後イスラエル軍がガザ地区への地上部隊を含む侵攻を行う場合、世界が注視するなか、民間人犠牲を極力避ける必要があり、大きな制約になるかも。一方、ハマスは「人間の盾」に住民を使うことも。

【ヒズボラ動向】
イスラエルの軍事作戦に直接的に影響するのが第4点目のハマス以上の戦闘力を有するレバノン・ヒズボラの動向。シーア派ヒズボラは、イランにとっては「外様」的なスンニ派・ハマスと違って、イランとの関係が格段に強い組織ですので、イランの参戦にまで影響が及びます。

ヒズボラが本格参戦すれば、イスラエルは南北2面に戦線を持つことになり、更にイランもとなれば・・・イスラエル対ハマスとは次元が違う「中東戦争」にもなってきますが(日本を含めた世界経済への影響も)、すでに話が長くなったので、そのあたりはまた別機会に。
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