短期居候していたヴァイオリニストのヒナはコンサート出演を終えて帰っていった。
コンサート会場を前日に見に行った時のこと。
ホール管理人が楽屋からホールの裏側を案内してくれた。
ヒナは舞台に乗るとすぐに手を叩いて歩いた。
お払いや呪いの類ではない。
音の反響を調べているのだ。
「ちょっと音を出させていただいても良いですか?」と伺いを立てると
「いいですよ」との答え。
早速ケースからヴァイオリンを取り出した。
私は音の響きの違いをみるため客席に移り前席から後の席まで移動して聴く。
ヒナは音階をザッと弾いた後和音を出してみた。
不完全ではあったが響きと立ち位置の関係がある程度つかめた。
帰ろうとすると管理人が
「いいもんですねえ」と感激を口にする。
柔らかくて艶やかな生ヴァイオリンの音色が、この管理人たる中年男性の心を瞬時に捉えていたことを知った。
音楽ではない段階でも、すでに人の心は喜びの反応をする。
音楽家がなぜ身を粉にして練習に打ち込むのか、その答えを少しだけ垣間見られたような気がする。
コンサート会場を前日に見に行った時のこと。
ホール管理人が楽屋からホールの裏側を案内してくれた。
ヒナは舞台に乗るとすぐに手を叩いて歩いた。
お払いや呪いの類ではない。
音の反響を調べているのだ。
「ちょっと音を出させていただいても良いですか?」と伺いを立てると
「いいですよ」との答え。
早速ケースからヴァイオリンを取り出した。
私は音の響きの違いをみるため客席に移り前席から後の席まで移動して聴く。
ヒナは音階をザッと弾いた後和音を出してみた。
不完全ではあったが響きと立ち位置の関係がある程度つかめた。
帰ろうとすると管理人が
「いいもんですねえ」と感激を口にする。
柔らかくて艶やかな生ヴァイオリンの音色が、この管理人たる中年男性の心を瞬時に捉えていたことを知った。
音楽ではない段階でも、すでに人の心は喜びの反応をする。
音楽家がなぜ身を粉にして練習に打ち込むのか、その答えを少しだけ垣間見られたような気がする。