中田島に自転車で行くようになって気になることがあった。
それはユンボだ。
これは通常道路工事や建築現場で活躍するのを見ることが多い。
だが川原に置いてあって日によって、その置き場が変わっている。
どうやってあそこまで持って行ったのか、ということが気になり始めた。
あんなに重い重機を船に積めないだろうし、その都度キャリアカーに乗せていくことも難しいことだろうし、だいいち下す場所もない。
散歩で馬込川の堤防を歩く。
馬込川河口から上流に向かって浚渫(しゅんせつ)工事をしている。
その工事状況を見ることができるのだ。
いつものようにカメラ片手に堤防を歩いていると前からユンボの運転手らしき人物が通った。
すかさず声を掛けた。
やはりそうだった。
「あのー、このユンボは水に浮くのですか」
「はい浮きます。
「どのように水の上を進むのですか」
「ブームとアームを使って水上でバケットを川底にあてがい、ひっかく状態で進みます」
「なるほど」と簡単に答えが出たことに感激して散歩に戻った。
川の反対側に出ると先ほどのユンボが何やら動き出した。
見ているとまさに先ほど聞いたように川に出てドボンドボンとブームとアームを動かしバケットを水の中に付けて泳いでいる。
私は興奮して動画を撮り続けた。
「そうだ橋の上から正面に泳いでくるユンボを撮りたいな」と思い走り始めた。
ユンボが川を下る速度は私の歩く速度と同じくらいだから走れば回り込める。
まんまと橋の中央でユンボの泳ぎを撮影した。
橋の反対側に行ってみるとそこには川底から上げた砂を運ぶ船がいた。
どうやら、その船がそこに閊(つか)えてしまってにっちもさっちも状態だったらしい。
先ほど私と話しているときに運転手が気にしていたのは船が来なくなってしまって、その状態を確かめたかったのだ、と理解した。
ユンボが船を助けるという特殊な状況を目の当たりにできたし、それを撮影もできた。
「船酔いするから、この重機は乗りたかねぇ」という言葉を思い出した。