ラブリーＦＩＡＴ♪ふたたび？

　きゃー♪　テディちゃ、ほらほらほらっ、ＦＩＡＴよ！
　以前にも御紹介したイタリアの名車ＦＩＡＴちゃんよっ！　きゃーっ♪

「ふァ～……ネーさのォ、すきなァ、おくるまァ、でスねッ？」

　そうなんです！
　小さな可愛いＦＩＡＴ！
　このモデルは、ＦＩＡＴのアバルトチューンっていうんですって。
　正面のエンブレム脇にあるサソリのマークがアバルトのしるし――
　なのだと、ネーさ弟が申しておりましたよ。

　でもね、『ルパンⅢ　カリオストロの城』放送翌日に会ったＦＩＡＴちゃんが
　サビだらけでボロい外見の割りに元気一杯だったのに、
　今日お会いしたこのＦＩＡＴちゃんは……
　内装はきれいだし、外側も丁寧にメンテナンスされていて、
　大切にされているんだなあ～と通りすがりのネーさにも分かるのに……。

「ふェ？　どしたのでスかァ？」

　エンジンが不調らしくて、
　道端でお休み中だったんです……。

「ふァ～、おーばーひーとォ、かなッ？」

　ああ、どうしよう！
　貴重なＦＩＡＴちゃんがまた一台、壊れちゃったりしたら……！
　廃車になっちゃったりしたら……！

「ネーさ、おちつくのでスよゥ～」

　スタッフ～！スタッフ～！じゃなくて！ＪＡＦ～！ＪＡＦ～！！
　ＪＡＦのおにいさ～ん！
　たすけてあげて～！

「ふあァァ……くるまのォ、えんじんよりもォ、
　ネーさのォ、のうみそォ、
　めんてなんすゥがァ、ひつよゥ、なのでスゥ……」　

哀愁の《唐獅子》ファンタジー？

「はてッ？
　にんきょゥ？　がくえんン？
　ネーさ、これはァ、せいしゅんがくえんどらまァ、なのでスかッ？？」

　そこが微妙なんですよ、テディちゃ。
　先日ご紹介しました『果断　隠蔽捜査２』と同じ作者さんによる、
　こちらの作品は……学園もの？　学校小説？　それとも……任侠モノ？
　どれでもあって、どれでもなくて？
　ともあれ、あらためまして、こちらをどうぞ！



　　　　　　　　　　　　　　　　　――　任侠学園　――


　
　著者は今野敏さん、’０７年９月に発行されました。

　《任侠》と聞いて思い浮かべるのは、まず映画でしょうか。
　鶴田浩二さん、高倉健さん……
　大スターさんたちによって銀幕に織り上げられた、
　義理と人情のドラマ、でした。

「うゥ～？　テディちゃ、みたことォないィでスゥ……」

　そうですね。古風な任侠映画は、今はもう制作されていません。
　社会環境があまりにも変わってしまったのです。
　『任侠』なる言葉は、死語の世界へ――

　しかし、滅亡寸前の《任侠》を何とか現世に繋ぎ留めようとするのが、
　この物語の主人公、日村さん。

「うむッ？　もしかしてェ……？」

　はい、日村さん、阿岐本組の幹部さんです。
　いわゆる、そのぅ、ヤクザ、なんですね。

「みぴゃッ、こわいィ～ッ！」

　こわいヒトの筈の日村さん……なんですが、
　組長の阿岐本さんが古風な気質であるために、困ったことになりました。
　経営難の学校を預けられちゃった、のです。
　素人さんには手を出すな！
　暴力は振るうな！　
　乱暴な口をきくな！
　その上で、この荒れ果てた学校を立て直すんだよ。
　
「えェッ、そんなことォできるゥのォッ？」

　日村さん自身もそう考えます。
　無茶ってもんですよ、オヤッサン！
　でも、《親》の言うことに《子》は逆らえません。
　理事の一員にされてしまった日村さんが、当の学校に赴いてみれば、
　修理したばかりの窓ガラスはまたも割られ、
　壁には落書き、廊下はゴミだらけ……。

　学校というものに、楽しい思い出など皆無の日村さん、
　イマドキの高校生の心理を想像する術もなく、
　オヤッサンの言うまま、エイヤっと
　『学校経営』に飛び込んでみるのですが……。

「ふわァ～、なんぎょゥ～、でスねェ。かわいそォ……」

　ファンタジーでもパロディでもない《任侠》ドラマを、
　現代を舞台にどう語り、読み手に信じさせるのか？
　『花も実もある』美しい嘘は、成立するのか、それとも？

　日村さん、いい味出してます！
　このキャラさんと出会うため、
　そのためだけにでも、この物語を！ぜひ！
　
「ふむむッ。
　がんばるゥおじさんにィ、いッぴょう！なのでス♪」