テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 源流の怪談 ~

2022-07-07 22:32:16 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 こよいはァ、ひこぼしィさまとォおりひめさまァ~」

「がるる!ぐるるるがるる!」(←訳:虎です!会えるといいね!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 はるか銀河宇宙の彼方の

 オシャレで静かなカフェの片隅で、

 恋人たちが楽しい時間を過ごせるよう願いつつ、

 さあ、地上の我々は読書タイムですよ。

 本日は、こちらの御本を、どうぞ~♫

  

 

 

      ―― 吸血鬼ラスヴァン ――

 

 

 著者はG・G・バイロンさん、J・W・ポリドリさん他、

 編訳は夏来健次さん、平戸懐古さん、

 2022年5月に発行されました。

 英語題名は『THE VAMPYRE and other classic vampire masterpieces』、

 『英米古典吸血鬼小説傑作集』と

 日本語副題が付されています。

 

「あわわわッ!」

「ぐるがるるぐるぅ!」(←訳:怖いお話が来たぁ!)

 

 昔むかし、その昔……

 今から200年以上も昔の、1816年5月。

 スイス・レマン湖畔のディオダディ荘に、

 5人の男女が集いました。

 

 冷夏のその年、連日の雨に外出もままならず、

 退屈しきった彼らは、

 ある種のゲームを始めます。

 

  《皆で一つずつ怪談(ghost story)を書いてみよう》

 

 提案したのは、ジョージ・ゴードン・バイロン卿。

 提案に乗ったのは、

 詩人のシェリーさん、

 シェリーさんの妻メアリーさん、

 バイロン卿の主治医ジョン・ポリドリさん、でした。

 

「むむむゥ! それはァ、だいじけんでスゥ!」

「がるるるるぐるる!」(←訳:文学史上の大事件!)

 

 《ディオダディ荘の怪奇談義》

 と呼ばれるこの出来事から、

 メアリー・シェリーさん著

 『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』

 が誕生したことは、

 活字マニアの皆さまはよく御存知ですよね。

 

 一方、メアリーさんと違って

 詩人のシェリーさんは途中で投げ出してしまい、

 バイロン卿と、ポリドリ医師は……?

 

「がんばりィましたでス!」

「ぐるるるがるるる!」(←訳:なんとかしようと!)

 

 この御本には、

 バイロン卿とポリドリさんによる

 『ゴーストストーリー』が収録されています。

 

 バイロン卿著『吸血鬼ダ―ヴェル』(1819)は、

 断章――つまり、未完の、

 ほぼ下書きに近い状態の作品です。

 

 そして、ポリドリさんは――

 

「おわおッ?」

「がるぐるるぅ!」(←訳:完成してるぅ!)

 

 完成しました。

 ただし。

 

 そもそも、作品のアイディアは

 バイロン卿の原稿から得たものでした。

 それを無断借用&応用するような形で、

 ポリドリさんは

 『吸血鬼ラスヴァン』(1819)を

 書き上げたのです。

 

 こうしたややこしい経緯はあったものの、

 吸血鬼小説の嚆矢ともされるこの作品は、

 ブラム・ストーカーさん著『ドラキュラ』の

 誕生を予言するかのような

 完成度の高いゴーストストーリーとなりました。

 

 正体不明の、怪しい人物。

 警戒し、嫌悪しつつも、

 彼の魔の手から逃れられぬ者たち――

 

「ひげきてきィ、なのでス!」

「ぐるがるぐるる!」(←訳:現実でも悲劇が!)

 

 奇しくも、《ディオダディ荘の怪談談義》から誕生した

 ふたつの作品――

 『フランケンシュタイン』『吸血鬼ラスヴァン』は

 ともに受難の運命を辿ります。

 

 19世紀は、

 女性が小説を書いて出版するなど、

 有り得ない、看過されない時代でした。

 そのため、

 メアリーさんは匿名での発表を余儀なくされます。

 

 ポリドリさんの『吸血鬼ラスヴァン』は、

 完成度の高さが災いとなりました。

 大きな評判を呼び、演劇化もされた作品の著者は、

 “あのバイロン卿だ!“と人々は考えたのです。

 

「はァ~…」

「がるぅ~…」

 

 《怪談》が呼び起こす、

 現実の悲喜劇と、

 空想世界の悲劇。

 

 この御本では

 『ドラキュラ』に先んじて人気を博した

 吸血鬼小説10篇が妍を競っています。

 怪談が好きな方々も、

 吸血鬼モノが好きな方々も、

 ぜひ、“怖さ”の源流を味わってみてくださいね~♪

 

 

 

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