「こんにちわッ、テディちゃでス!
こよいはァ、ひこぼしィさまとォおりひめさまァ~」
「がるる!ぐるるるがるる!」(←訳:虎です!会えるといいね!)
こんにちは、ネーさです。
はるか銀河宇宙の彼方の
オシャレで静かなカフェの片隅で、
恋人たちが楽しい時間を過ごせるよう願いつつ、
さあ、地上の我々は読書タイムですよ。
本日は、こちらの御本を、どうぞ~♫
―― 吸血鬼ラスヴァン ――
著者はG・G・バイロンさん、J・W・ポリドリさん他、
編訳は夏来健次さん、平戸懐古さん、
2022年5月に発行されました。
英語題名は『THE VAMPYRE and other classic vampire masterpieces』、
『英米古典吸血鬼小説傑作集』と
日本語副題が付されています。
「あわわわッ!」
「ぐるがるるぐるぅ!」(←訳:怖いお話が来たぁ!)
昔むかし、その昔……
今から200年以上も昔の、1816年5月。
スイス・レマン湖畔のディオダディ荘に、
5人の男女が集いました。
冷夏のその年、連日の雨に外出もままならず、
退屈しきった彼らは、
ある種のゲームを始めます。
《皆で一つずつ怪談(ghost story)を書いてみよう》
提案したのは、ジョージ・ゴードン・バイロン卿。
提案に乗ったのは、
詩人のシェリーさん、
シェリーさんの妻メアリーさん、
バイロン卿の主治医ジョン・ポリドリさん、でした。
「むむむゥ! それはァ、だいじけんでスゥ!」
「がるるるるぐるる!」(←訳:文学史上の大事件!)
《ディオダディ荘の怪奇談義》
と呼ばれるこの出来事から、
メアリー・シェリーさん著
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』
が誕生したことは、
活字マニアの皆さまはよく御存知ですよね。
一方、メアリーさんと違って
詩人のシェリーさんは途中で投げ出してしまい、
バイロン卿と、ポリドリ医師は……?
「がんばりィましたでス!」
「ぐるるるがるるる!」(←訳:なんとかしようと!)
この御本には、
バイロン卿とポリドリさんによる
『ゴーストストーリー』が収録されています。
バイロン卿著『吸血鬼ダ―ヴェル』(1819)は、
断章――つまり、未完の、
ほぼ下書きに近い状態の作品です。
そして、ポリドリさんは――
「おわおッ?」
「がるぐるるぅ!」(←訳:完成してるぅ!)
完成しました。
ただし。
そもそも、作品のアイディアは
バイロン卿の原稿から得たものでした。
それを無断借用&応用するような形で、
ポリドリさんは
『吸血鬼ラスヴァン』(1819)を
書き上げたのです。
こうしたややこしい経緯はあったものの、
吸血鬼小説の嚆矢ともされるこの作品は、
ブラム・ストーカーさん著『ドラキュラ』の
誕生を予言するかのような
完成度の高いゴーストストーリーとなりました。
正体不明の、怪しい人物。
警戒し、嫌悪しつつも、
彼の魔の手から逃れられぬ者たち――
「ひげきてきィ、なのでス!」
「ぐるがるぐるる!」(←訳:現実でも悲劇が!)
奇しくも、《ディオダディ荘の怪談談義》から誕生した
ふたつの作品――
『フランケンシュタイン』『吸血鬼ラスヴァン』は
ともに受難の運命を辿ります。
19世紀は、
女性が小説を書いて出版するなど、
有り得ない、看過されない時代でした。
そのため、
メアリーさんは匿名での発表を余儀なくされます。
ポリドリさんの『吸血鬼ラスヴァン』は、
完成度の高さが災いとなりました。
大きな評判を呼び、演劇化もされた作品の著者は、
“あのバイロン卿だ!“と人々は考えたのです。
「はァ~…」
「がるぅ~…」
《怪談》が呼び起こす、
現実の悲喜劇と、
空想世界の悲劇。
この御本では
『ドラキュラ』に先んじて人気を博した
吸血鬼小説10篇が妍を競っています。
怪談が好きな方々も、
吸血鬼モノが好きな方々も、
ぜひ、“怖さ”の源流を味わってみてくださいね~♪