テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ それは、100年前の。 ~

2023-11-02 22:08:41 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 あしたからァ~れんきゅうゥでスよゥ!」

「がるる!ぐるるるがる!」(←訳:虎です!秋旅日和だよ!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 お天気に恵まれそうな秋の連休……

 紅葉狩りに行こうか、おイモ掘りなんんてどうだろう?

 いや!僕は/私はインドア派だぞ!混雑時のお出かけはパス!

 という御方は、さあ、読書タイムですよ。

 本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~!

  

 

 

         ―― 文豪たちの『九月一日』 ――

 

 

 編著者は石井正己(いしい・まさみ)さん、

 2023年7月に発行されました。

 『関東大震災百年――』と副題が付されています。

 

 1923年(大正12年)の9月1日、

 相模湾西北部を震源地とする

 マグニチュード7.9の巨大地震が発生しました

 (相模湾沿岸での震度は7)。

 死者・行方不明者は10万5千人、

 全壊・焼失家屋は57万戸、

 被災者総数は340万人……

 

 ”被災者“の中には、

 小説家さん、詩人さん、評論家さん、画家さんもいて、

 この御本では、“被災者“となった彼らの

 体験談や目撃譚が紹介されています。

 

「あくたがわァりゅうのすけェさんッ!」

「ぐるるるるるるがるるるる!」(←訳:志賀直哉さんに菊池寛さん!)

 

 今年、夏から秋にかけて注目されたのは、

 竹久夢二さんが『東京災難画信』で報じた被災者さんの姿や、

 映画『福田村事件』に描かれた残虐な事件など、

 関東大震災が生んだ悲劇的な事象でした。

 

 天災と、人災。

 

 文豪さんたちはそれぞれの視点から、

 “私の見た震災“レポートを綴ってゆきます。

 

「ゆれるゥだいちィ!」

「がるるぐる!」(←訳:混乱と焦燥!)

 

 以下は飽くまで私ネーさの個人的な感想ですが、

 この御本の中で、最も冷静に、

 最もジャーナリストに等しい立ち位置から、

 “現場で何が起きたか“

 を詳しく書き記したのは、

 泉鏡花さんではないでしょうか。

 

 現代では《幻想と怪奇》の作家として知られる鏡花さん、

 大正12年10月に発表した『露宿』に、

 地震発生時の地鳴りや、

 隣家の者たちと裸足で外へ飛び出したこと、

 火事を警戒して火の元の始末をしたこと、

 台所から葡萄酒を2本持ち出して

 近所の人たちと分けあって飲んだこと等を

 時間の経過に沿って記述してゆきました。

 

「みんなでェ、たすけあいィ!」

「ぐるるるるるがるる!」(←訳:ご近所さんの有難さ!)

 

 一方、鏡花さんとは異なる目線で

 震災を眺めた作家さんもいます。

 

 軍隊が無かったら安寧秩序が保てなかったろう、

 礼賛すべきものはやはり威光燦たるサーベルではあるまいか、

 と著したのは、佐藤春夫さん。

 

 震災後の荒んだ東京の街に

 悪夢を読み取る夢野久作さん。

 

 思想家・大杉栄さんを襲った惨禍に

 愕然とする内田魯庵(うちだ・ろあん)さん。

 

 未曾有の災害は、

 そこに居合わせたすべての人びとのこころを

 波立たせずにはおきません。

 

「ひゃくねんまえッ、のできごとォだけどォ~…」

「がるるぐぅるるるる!」(←訳:他人事じゃないよう!)

 

 どうか、こんな悲劇が

 繰り返されることがありませんように、

 とただ祈りながら。

 

 全活字マニアさんにおすすめしたい災害の記録です。

 本屋さんで、図書館で、ぜひ、探してみてくださいね。

 

 

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