「こんにちわッ、テディちゃでス!
まふゆにィ~なッちゃッたでス!」
「がるる!ぐるがるぐる!」(←訳:虎です!除雪列車起動!)
こんにちは、ネーさです。
日本では全国的な寒さでブルブル震えているのに、
南半球からは気温40℃超えのニュースも……!
安穏な秋の気候を懐かしく思いながら、
さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― 脱走王と呼ばれた男 ――
著者はディヴィッド・M・ガスさん、
日本語版は2019年3月に発行されました。
英語原題は『THE 21 ESCAPES OF LT ALASTAIR CRAM』、
『第二次世界大戦中21回脱走した捕虜の半生』と日本語副題が付されています。
「……しらいしィ?」
「ぐる~!」(←訳:白石~!)
ええ、私ネーさも連想してしまいましたよ。
脱獄王・白石!
映画公開も予定されている『ゴールデンカムイ』のトリックスター、
脱獄王こと白石由竹さんを。
けれど、
こちらは脱獄王ではなくて、脱走王さんです。
そして、何から脱走したかといえば……
「ほりょォしゅうようじょッ?」
「がるるるぐる!」(←訳:鉄条網の牢獄!)
時代は、1941年――
スコットランド生まれの
アレスター・クラム中尉は、
英国陸軍砲兵連隊に所属する将校として
第二次世界大戦に出征していました。
英国軍が向かったのは、北アフリカ戦線。
欧州列強国の戦争の、最前線に投入されたクラムさんは
激闘の末に負傷して
ドイツ・アフリカ軍団に捕らえられます。
そして、身柄をイタリアへ送られる途中で。
クラムさん、2度ほど逃亡を試みました。
「すッ、すばやいィ~!」
「ぐるっるがるぐる??」(←訳:捕まってすぐ脱走??)
なぜ、脱走するのか。
その答えは、
収容所の塀の中に閉じ込められているのが不満だから、
ではなく、
敵軍のヤツらが気に食わないから、
でもなく。
将校にとって、
脱走は軍人としての義務だから。
「ぎむゥ……!」
「がるるる???」(←訳:そうなの???)
私たち日本人には馴染みの薄い考え方ですが、
西洋人・クラムさんの思考は、↓こんな具合でしょうか。
捕虜となって、
どれほど肉体的、精神的ダメージをこうむっていようとも。
このままでいいのか? 負け犬のままで?
いいや、御免だ!
すべてを取り戻してやろうじゃないか。
《脱走》という、
残された最後の手段を使って。
故国スコットランドでのお仕事は、弁護士。
が、実はクラムさん、幼い頃から登山に夢中で、
エヴェレスト遠征隊に加わることを目標にしていたほどの、
登山家さんだったのです。
クラムさんにとって《脱走》は、
いわば、登山のようなもの?
山岳登攀の技術を応用した、ごく自然&当然の行動?
「ふわわァ~…やまのぼりィでスかァ~?」
「ぐるぅがるぐるるるがるるる!」(←訳:そりゃ塀を越えたくなるよね!)
トンネルを掘って。
綱渡りをして。
列車から飛び下りて。
病気と偽って。
仲間と一緒に、
或いは独りで、
“外“を目指して。
イタリア、ドイツの収容所を、
脱走して捕まっては、またも脱走し、
心身を擦り減らす日々のはて、
やがて迎えたのは、
“もう脱走しなくてもいい日々”。
「せんそうゥ、おわりましたでス!」
「がるぐるるるがる!」(←訳:でもこれからが大変!)
著者・ガスさんは、クラムさんが遺したメモをもとに、
クラムさんの戦時下と戦後を辿ってゆきます。
巻末の『謝辞』では、
クラムさんと行動をともにした
捕虜さんたちの“その後”にも触れてあって、
戦争とは何なのか、あらためて考えざるを得ません。
塀の外へ、外へと走り続けた
ひとりの将校さんの記録を、
ノンフィクション好きな活字マニアさんは
ぜひ、一読してみてくださいね~♪