テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 走るひと ~

2023-11-26 22:08:50 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 まふゆにィ~なッちゃッたでス!」

「がるる!ぐるがるぐる!」(←訳:虎です!除雪列車起動!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 日本では全国的な寒さでブルブル震えているのに、

 南半球からは気温40℃超えのニュースも……!

 安穏な秋の気候を懐かしく思いながら、

 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

           ―― 脱走王と呼ばれた男 ――

 

 

 著者はディヴィッド・M・ガスさん、

 日本語版は2019年3月に発行されました。

 英語原題は『THE 21 ESCAPES OF LT ALASTAIR CRAM』、

 『第二次世界大戦中21回脱走した捕虜の半生』と日本語副題が付されています。

 

「……しらいしィ?」

「ぐる~!」(←訳:白石~!)

 

 ええ、私ネーさも連想してしまいましたよ。

 脱獄王・白石!

 映画公開も予定されている『ゴールデンカムイ』のトリックスター、

 脱獄王こと白石由竹さんを。

 

 けれど、

 こちらは脱獄王ではなくて、脱走王さんです。

 そして、何から脱走したかといえば……

 

「ほりょォしゅうようじょッ?」

「がるるるぐる!」(←訳:鉄条網の牢獄!)

 

 時代は、1941年――

 スコットランド生まれの

 アレスター・クラム中尉は、

 英国陸軍砲兵連隊に所属する将校として

 第二次世界大戦に出征していました。

 

 英国軍が向かったのは、北アフリカ戦線。

 欧州列強国の戦争の、最前線に投入されたクラムさんは

 激闘の末に負傷して

 ドイツ・アフリカ軍団に捕らえられます。

 

 そして、身柄をイタリアへ送られる途中で。

 

 クラムさん、2度ほど逃亡を試みました。

 

「すッ、すばやいィ~!」

「ぐるっるがるぐる??」(←訳:捕まってすぐ脱走??)

 

 なぜ、脱走するのか。

 

 その答えは、

 収容所の塀の中に閉じ込められているのが不満だから、

 ではなく、

 敵軍のヤツらが気に食わないから、

 でもなく。

 

 将校にとって、

 脱走は軍人としての義務だから。

 

「ぎむゥ……!」

「がるるる???」(←訳:そうなの???)

 

 私たち日本人には馴染みの薄い考え方ですが、

 西洋人・クラムさんの思考は、↓こんな具合でしょうか。

 

   捕虜となって、

   どれほど肉体的、精神的ダメージをこうむっていようとも。

   このままでいいのか? 負け犬のままで?

   いいや、御免だ!

   すべてを取り戻してやろうじゃないか。

   《脱走》という、

   残された最後の手段を使って。

 

 故国スコットランドでのお仕事は、弁護士。

 が、実はクラムさん、幼い頃から登山に夢中で、

 エヴェレスト遠征隊に加わることを目標にしていたほどの、

 登山家さんだったのです。

 

 クラムさんにとって《脱走》は、

 いわば、登山のようなもの?

 山岳登攀の技術を応用した、ごく自然&当然の行動?

 

「ふわわァ~…やまのぼりィでスかァ~?」

「ぐるぅがるぐるるるがるるる!」(←訳:そりゃ塀を越えたくなるよね!)

 

 トンネルを掘って。

 綱渡りをして。

 列車から飛び下りて。

 病気と偽って。

 仲間と一緒に、

 或いは独りで、

 “外“を目指して。

 

 イタリア、ドイツの収容所を、

 脱走して捕まっては、またも脱走し、

 心身を擦り減らす日々のはて、

 やがて迎えたのは、

 “もう脱走しなくてもいい日々”。

 

「せんそうゥ、おわりましたでス!」

「がるぐるるるがる!」(←訳:でもこれからが大変!)

 

 著者・ガスさんは、クラムさんが遺したメモをもとに、

 クラムさんの戦時下と戦後を辿ってゆきます。

 巻末の『謝辞』では、

 クラムさんと行動をともにした

 捕虜さんたちの“その後”にも触れてあって、

 戦争とは何なのか、あらためて考えざるを得ません。

 

 塀の外へ、外へと走り続けた

 ひとりの将校さんの記録を、

 ノンフィクション好きな活字マニアさんは

 ぜひ、一読してみてくださいね~♪

 

 

コメント
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