フェルメールの透視画法
(3) 視点 (=消失点と距離点の間の距離)
初期の作品、例えば「#10/グラスのワイン」(c.1658 - 60)や「#11/ワイングラスを持つ女」(1659 - 60)では、手前のフロアータイルの両端に「ひずみ」があるが、これは視点が近すぎる(=消失点と距離点が近い)為である。
しかし、「#14/ミュージック・レッスン」(1662 - 64)では、視点がキャンバスから77 cmあり、「ひずみ」は目立たない。
フェルメールは時代とともに、視点を遠ざけると共に、消失点を画面の中央から端の方へ動かしている。
例えば、
(#08) 「笑う女と役人」(c.1658)の視角は 約53度
(#24) 「画家のアトリエ」(c.1666 - 67)は 約30度
(#30) 「ラブレター」(1669 - 70)は 約28度
(#35) 「ヴァージナルの前に座る婦人」(c.1675)では 22度しかない。
(4) 水平線
水平線も初期の作品では、相対的に高い位置にあった。
例えば、「#02/マルサとマリアの家のキリスト」(c。1655)、「#05/開けた窓辺で手紙を読む少女」(c,1657)、「#06/居眠りをする女」(c.1657)の水平線は、絵を上下に半分にするように置かれている。
それが、例えば「#09/牛乳を注ぐ女」(1658 - 60)や「#29/レースを編む女」(1669 - 70)では水平線が低く、下から見上げる形になっており、従って人物が大きく見えるように描かれている。
(5) 暗箱 (Camera Obscura)
構図上の助けとして フェルメールが 「暗箱」も使用した事が、 下記の4作品で確認されている。
(#12)「デルフト眺望」 (#21) 「赤い帽子の少女」
(#24)「画家のアトリエ」 (#29)「レースを編む女」