現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

剣岳 2

2009-07-03 11:12:14 | 虚無僧日記
映画『剣岳』で、日本地図作成の苦労を知る。
山頂に三角点を置いて、山の高さを測る、ということは
理解できるが、谷や尾根の複雑に入り組んだ等高線は
どうやって測量したのだろう。

また、中村トオルが演じていた小島烏水が、日本山岳会の
創設者と知る。ネットで検索すると、横浜正銀行に勤務し、
浮世絵や絵画の収集家でもあったとのこと。

「小島烏水-山の風流使者伝」を書いた近藤信行氏は、
実は私の妻の叔父にあたる。妻の父の妹、蜂谷緑さんの
夫君。

中央公論の編集長を辞め、日本山岳会の理事として「日本
山岳会史」はじめ数々の書を編纂執筆し、「大仏次郎賞」を
取得している。当時は脱サラなんて、大変勇気のいる行為。
近藤信行氏の脱サラは私にも少なからず影響を与えた。
現在は、山梨県勝沼に住み、「山梨県文学館館長」として、
講演や執筆活動をされている。


『剣岳』

2009-07-03 09:52:41 | 虚無僧日記
『剣岳』を観た。世間の評判はいいようだが、私は失望。

「軍の威信を賭けて、剣岳初登頂を目指す」というから、
軍隊が総出で登るのかと、思っていたら、実際には、測量手
の3人が、地元の強力や案内役の人たちの助けを借りて、
登ったのだった。

測量手の柴崎芳太郎役の浅野忠信も、軍の命令に、やる気が
あるのかないのか、「測量が目的で初登頂争いなんて関係ない」
とさめた様子。『黒部の太陽』のような、苦労の末の成功談を
期待したが、結末は「過去に行者が登っていたので初登頂とは
認められず。また四等三角点では、軍の記録の『点の記』にも
記録されない」。これでは達成感も感動も無いではないか。

「閣下」役が笹野高史。この人は笑いと哀れを誘う脇役。とても
「閣下」の器ではない。

案内人の「宇治長次郎」役が香川照之。60kg以上の資材を担いで
登る強力の逞しさはない。

『篤姫』で人気を得た宮崎あおいも軍人の妻らしからぬ。

陸軍省測量部の建物が、ペンキも剥げボロボロ。明治の世には
新築なったばかりで、ピカピカに輝いていたはず。それが、
現在残る古い建物を使用しているから、窓枠も机などの什器類も
古色蒼然。誰もおかしいと思わないのかな?

その陸軍省の門脇に立つ衛兵。銃を捧げて立つ姿勢がだらし
ない。もっと軍人らしくキリッとできないものか。

行者役の夏八木勲。役を務めるなら、本物の山伏に会って、
見習うくらいの努力は必要だと思うのだが、本物にはほど遠い。

日本山岳会の中村トオル。なんで化粧した顔で、スーツに
コート姿。ハイキングに行くような気楽さで、いともカンタンに
頂上に登ってくれた。これでは、剣岳の登山がいかに大変なもの
だったかのひしひしさが伝わらない。

風雪もどしゃぶりの雨もリアリティがない。

と、辛口批評で申し訳ないが、この映画は、撮影に尽力したカメラ
マンはじめスタッフにこそ「賞」が贈られるべきか。