現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

壬生義士伝

2009-07-26 23:49:31 | 虚無僧日記
2002年に放映された『壬生義士伝』、You-Tubで全巻見る。
南部藩の下級武士で、困窮生活から妻子(の生活)を守る
ために、脱藩して新撰組隊士となり、銭のために命を懸けて
働いたという吉村貫一郎の話だ。

中井貴一で映画化されているが、テレビの渡辺謙の方が
全然いい。TVの再放送も見ており、ビデオにも撮って、
もう何回も見ている。何回見ても泣ける。

泣けるのは、むしろ貫一郎が死んだ後の話。上役の大野
次郎左衛門(内藤剛志)と、貫一郎の息子の生き様にだ。

さんざん泣かされた。ところがところがである。調べてみたら、
南部藩に大野次郎左衛門という人物はいなかった。戊辰戦争の
責任を負って死罪となったのは家老の楢山佐渡だ。
今まで新撰組の本を数多く読んでいるが、「吉村貫一朗」なる
人物は聞いたことがない。副題には「新撰組で一番強かった男」と
ある。「浅田次郎が丹念に調べて書いた初めての時代物小説」
とも書かれている。

ネットで検索して判った。吉村貫一郎(本名は嘉村権太郎)は
いることはいるが、斬り合いの場面にはほとんど登場して
いない。むしろ交渉ごとに重用されていたようだ。鳥羽伏見で
戦死している。が妻子はいない。

すべては浅田次郎の創作だった。いや、その前に子母澤寛が
創作して、それを元に浅田次郎が小説にしたとのこと。
数多く書かれている新撰組を、「忠、義に殉じた“誠”」から
「家族愛」に視点を移したのが現代的テーマでうけた。

そうした視点で創作する作家の想像力のたくましさには脱帽。
私はどうしても歴史家としての実証にこだわってしまう。

新撰組自体虚構なのだ。でも、虚構の中に真実がある。それを
作家は創作する。史家はその虚構を暴くか。「事実を暴いて
何になる」。これもドラマの中で語られていた。


「尺八と一休語りの虚無僧一路」のホームページも見てください。


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