『徒然草』
・ 第百五十段
能をつかんとする人、「内々よく習ひ得てさし出でたらむこそ、
いと心にくからめ」と常にいふめれど、かくいふ人、一藝もならひ
得ることなし。(以下略)
現代語訳すると、
芸事を身につけようとする人は、とかく 「ヘタなうちは 誰にも
見せたくない。こっそり練習して、ある程度上達してから、人前で
披露したい」 と 言うけれど、そういうことを言っている人で
最終的にモノになった例はひとつもない。
まだ未熟でヘタクソな頃から、ベテランに混ざって、バカにされて
笑われて、それでも恥ずかしがらずに頑張っていれば、やがて
バカにしていた人たちを遙かに超えて、達人になっていく。
いま「天下に並ぶ者なし」と言われている人でも、最初は笑われ、
けなされ、屈辱を味わった。それでもその人が正しく学び、その道を
一歩一歩進み続けてきたおかげで、多くの人がその教えを授かることが
出来るようになった。どんな世界でも、同じである。
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はい、私もそう思います。とかく初心者は、「独りで練習して、少し
上達してから(習いに)来ます」なんて云うが、それで上達したタメシは
ありません。私など、15歳の時から舞台に立ち、本番で恥をかきながら
プロの技を身につけてきました。つたない芸でも、温かく見守り
拍手してくださった観客のみなさんこそ、私の師匠です。
まだまだ、今でもそうです。