現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

世阿弥の名言「離見の見」

2017-01-10 05:44:57 | 虚無僧日記

「離見の見」とは、「演者は、観客の立場で自分を見なければならない」ということ。

コンサートに行って失望するのは、ひとりよがりの演奏をしている場合だ。

それでも身内のファンがいて、「アンコール!」などと叫ぶものだから、

演奏者は、それで悦に入って、にこにこ笑顔で、よく知られた曲などを

演奏する。だから、最後のアンコールの曲だけが良かったりする。

それは、そこでようやく、お客の心に入ったからだ。

 ではどうやって、自分を第三者的に見ればいいのか。

世阿弥は、「目前心後(もくぜんしんご)」という言葉を用いている。

「眼は前を見ていても、心は後ろにおいておけ」ということ。

「後ろ姿を覚えねば、姿の俗なるところをわきまえず」。

後姿を見ないと、自分では見えない後姿に“卑しさ”が 出ていることに

気付かない。

歳を重ねれば重ねるほど、位が上に行けば行くほど、自分の後姿を

見ることを忘れてしまいがち。自分が卑しくならないためには、

自分を突き放して見ることが必要と。

 

私の場合は、親しいファンが、公演の後、私のトークや演奏姿勢について、

あれこれ評価してくれる。私としては、言われなくとも、自覚していることが

大抵だが、私の気づきと、指摘されたことが同じだと、より心を強くすることが

できる。こうしたアドバイスをしてくれるファンがいることが幸せである。

 


世阿弥の名言「上手は下手からも学ぶ」

2017-01-10 05:44:30 | 虚無僧日記

 『風姿花伝』 問答条々

問う。「下手な演者でも、何か一つは上手に勝った所があるものだ。                                              これを上手がしないのは、できないからなのだろうか。それとも、                                                        してはならないことだからしないのだろうか。

それに対する答え 
本当に技能と工夫とを極めた上手は、下手の真似もできる。ただし、
本当に技能と工夫とを極めた演者は、万人の中に一人もいない。                                              ただの上手は、慢心しているから、下手から学ぼうとはしないのだ。

上手にも悪い所があり、下手にも良い所は必ずあるものだ。しかし                                              それぞれの長所短所を、見きわめる人はいない。

上手は名声に安住し、悪い所に気がつかない。下手は、悪い所にも                                             気がつかないし、良い所もわからない。
だから、上手も下手も、互いに人に(自分の長所短所を)尋ねるべきだ。

稽古は厳しくやれ。(自分に悪い所はないと思う)強情心であってはならない。

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私も今、下手な人の演奏を聞いて、それを真似してみて、何がどう違うのか、                                                      どう工夫すれば、もっと上手に表現できるのかを考えるようになった。                                              だが、下手の人から学ぶべき長所、良い点を見つけるのはなかなか難しい。

 

 

 

 

 

 


世阿弥の名言「住する所なきを」

2017-01-10 05:43:36 | 虚無僧日記
住する所なきを、まず花と知るべし

「住するところなき」とは、「留(とどまら)ない」という意味。

停滞することなく、変化することこそが芸術の中心である。

尺八本曲に「無住心」という曲がある。「住むところが無い」

ではなく、「とどまらざる心」。意味は同じ。

 

よき劫の住して、悪き劫になる所を用心すべし

劫とは「功績」の意で、「良いとされてきたことに安住すると、

それがむしろ悪い結果になってしまうことに用心せよ」という意味。

世の中の変化と関わりあっていくのが人間であり、芸術である。

世の中の変化の中で、変化することを恐れず、「停滞しない」

ものこそが「花」であると、世阿弥は喝破している。

 

尺八もそうだ。時代とともに変化してこそ、伝承される。

昨今、尺八界は富みに変貌を遂げている。

童(わらわ)も、今年は変貌するべい。

「あっと驚く為五郎!」  (やっぱ古いね)