ケイの読書日記

個人が書く書評

「たべる生活」 群ようこ 朝日新聞出版

2022-11-13 15:35:05 | 群ようこ
 群ようこって、こういう人だったっけ?! もっとゴーイングマイウェイというか、自分の事に口を出されたくないから、他の人の事にも口を出さないといったタイプの人だと思っていたが…。このエッセイ集の中で群ようこ自身が「思考回路が姑と化している私」と書いていたが、その通り!!! 自分の周囲にいる親子連れ、友人知人から話を聞いた親子連れの食習慣にイチャモンを付けまくる!!

 1954年生まれの群ようこが、自分の健康に気をつかって食習慣もちゃんとしている事は知っている。もともと料理が苦手だけど、仕事での付き合いや友人とのランチで、月に数回外食する以外、自炊しているのは立派。1人暮らしだから、ついつい自炊は面倒になってしまうだろうに、スゴイ!とは思う。
 でも、自分がやれているんだから「子どもがいる母親は料理して当然」と考えるのは、ちょっと違うような…。

 子どもを育てながらフルタイムで働いて、その上、食事の支度までってすごく大変。総菜やレトルトを使うのは当然じゃない?と私は思うけど。
 もちろん人間は食べたもので出来ているので、外食や中食で少ない野菜料理をパパっと作って1品加えるとか、どうしても肉料理の方が多くなるから意識して魚の缶詰を使うとか、工夫しなければならないとは思うが、クタクタに疲れて帰って来て、ギョーザを手作りなんて出来ないよ。冷凍で十分だと思うよ。(そうそう、冷凍食品のクオリティって最近ものすごく上がって来てる。お店で食べるよりおいしいじゃん!!という冷凍食品もある)

 一番やるべきなのは、家族みんなで食卓を囲むこと。まあ、会社員のお父さんが平日の夕食の席にいないのは仕方ないが、お母さんや子どもたちはTVを見ながらでいいから一緒にご飯を食べてほしいな。
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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 早川書房

2022-11-02 15:30:51 | 翻訳もの
 最初のページで「介護人」とか「提供者」という単語が出てくるので、なんとなく、ああ臓器移植の話か…という事が分かる。でも「4度目の提供」なんて文章も出てくるので、その臓器移植が一般的なものではなさそうだという事も分かる。
 提供される方が4度目ならまだしも、提供する方が4度目なんておかしいよ。

 優秀な介護人キャシーは、提供者と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムで一緒に育ったトミーやルースも提供者になっていた。キャシーもそのうち提供者になるだろうと思われる。
 この施設ヘールシャムが、すごく奇妙な場所なんだ。普通の孤児院ではなくて、保護官とよばれる教師たちが、実に熱心に授業をする。なかでも、美術や文学に力を入れ、素晴らしい絵画や工芸品、詩などを生徒に作り出すようにうながし、特別に優れた作品は、どこか遠くの展示館に展示されるらしい。
 ただ、芸術に力を入れるにしては音楽の授業は少ない。なぜか? その理由は想像できる。ピアノやヴァイオリンの演奏や声楽などは、展示館では発表できない。なぜなら、彼らはヘールシャムから出ることを許されないから。
 彼らが一定の年齢になって出て行ける場所はコテージで、そこで彼らは介護人や提供者になるための準備をする。

 そう、彼らには「介護人」や「提供者」になる未来しかない。どんなに頭が良くても、容姿が優れていても、素晴らしい絵が描けても、美しい歌が歌えても、彼らには学者やモデルや女優や画家や歌手になる未来はない。

 この小説はミステリ小説ではないからネタバレでも書くけど、ヘールシャムでは、人間を養殖しているんだ。臓器を取り出すために。そのために作られたクローン人間だから、最初のうちは劣悪な環境で育てられていたが、あまりにも酷いと声を上げる人がいたので、待遇を良くし教育に力を入れるようになった。素晴らしい美術品や詩は生徒たちの作品ですと言って、金持ちや有力者から寄付を集めた。

 しかし、声を上げるべきは劣悪な環境改善ではなくて、人間を養殖するな!!!って事だろうと思う。でも、大多数の人たちは、クローン人間は人間ではないって考えなんだろうね。
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屋敷康蔵 「住宅営業マン ペコペコ日記」 三五館シンシャ

2022-10-23 16:20:13 | その他
 先回の「出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記」がとても面白かったので、同じシリーズの「住宅営業マン ペコペコ日記」を読んでみる。
 昔から、私は思っていた。不動産業でも、賃貸アパートの部屋を案内するぐらいの仕事だったら、私でもできるかもしれないが、何千万何億という土地や建物を売る人って、どういう人だろう? どういうタイプの人が、そんなスゴイ事をやれるんだろうって。

 この本の筆者の屋敷さんは、大手消費者金融に就職し、すごく羽振りの良かった時期もあったらしいが、グレーゾーン金利撤廃後の業界縮小をうけて退職。35歳の時、ローコスト住宅メーカーでブラック企業として有名なタマゴホームに就職。(木村拓哉のCMで話題になったタ〇ホームのことだろう)10年間勤務する。その時、経験した悲喜劇を本書に綴っている。私としては、大手消費者金融勤務時代の体験も読んでみたいが。

 いやいや、このタ〇ホームに10年間在籍していたってことは、それなりの能力があったってことだろう。同僚は次々に辞めていくらしい。最短で止めた人は、朝、店長から「今日から一緒に働くことになった〇〇さんです」と挨拶があり、本人も「〇〇です。よろしくお願いします」と挨拶したのに、よっぽど合わないと思ったのか「お昼ご飯に行ってきます」と出て行ったまま帰らず、そのまま退職した人がいたらしい。つまり在籍半日。
 それに店長になっても、辞める人は結構いるみたい。そうだよね。店長個人の営業ノルマと営業所の営業ノルマが両方あり、しかも営業所員が仕事のキツさに逃げ出すと、その尻ぬぐいは店長に行く。
 お客さんから「前の担当者は、食器棚も食洗器もサービスでつけるって約束しましたよ。ちゃんと約束守ってください」なんてゴネられること、しょっちゅうなんだろうね。
 クレームの電話は会社にかかってくるんじゃなくて、担当の社員のスマホにかかってくるわけだから、気の休まる時間がない。相手はお客様だから、非常識な時間帯にかかって来ても、電話に出ないという選択肢はない。あああ、本当に大変。

 結局、屋敷さんは10年勤務した時点でギブアップ、会社を退職する。その結果、自身のマイホームローンを払えなくなり、家を手放すことになる。家族はバラバラになり、屋敷さんにとって大変つらい時期だったが、新天地に引っ越し、住宅関係の仕事で再起し、家族を呼び寄せた。めでたしめでたし。
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宮崎伸治「出版翻訳家なんて なるんじゃなかった日記」三五館シンシャ 

2022-10-11 15:54:00 | その他
 三五館シンシャのこの日記シリーズ、人気があるみたいで、新聞によく広告が載っている。出版翻訳家のディープな世界をのぞいてみたいと、この本を読んだが…なかなか大変ですね。まあ、津村記久子の小説にあるように「この世にたやすい仕事はない」んだから、どこもかしこも大変だろうけど、出版不況でなおさら大変なんだろう。

 私のように英語が出来ない人間は、英語が出来たら、日常会話以上の翻訳家や通訳ができるレベルの英語が出来たら、すごく高給が約束された人生が待っていると思いがちだが、そう上手くはいかないみたい。
 以前、国際電話がKDDIの時代、仕事で数回、電話通訳を頼んだことがあった。その時、通訳してくれた女性に対し「どのくらいお給料もらってるんだろう?高いよね」と勝手に憧れていたものだが、その後TVのルポで、彼女たちの労働条件があまり良くない、かなりキツイという事を知った。
 欧米とは時差があるので、ほとんど夜中の勤務で、しかも時間給。もちろん普通のアルバイトよりは高いけど、専門性が高い人に支払うにしては少ないと思った。ほとんど女性。男性は海外留学から戻ってきたら、こういうアルバイトではなく、商社に正社員として入社するんだろうか?

 この本の著者の宮崎さんも、大学卒業後、大学事務員や英会話講師や企業の産業翻訳スタッフとして働き、お金をため、29歳でイギリスの大学院に入学し、一生錆びない英語力を身に着けようとする。苦労人なのだ。親の金で留学させてもらっている訳じゃないんだ。だから、2年間の留学時代、生活費と学費ですごくお金がかかったと思う。
 そんなにお金をかけて出版翻訳家になったのに、収入はさほど多くない。失礼ながら、一番年収が多い時が1100万円。その年だけ。あとは下がる一方。なんといっても収入が不安定なのが困る。
 もっと困るのが、出版社から依頼され翻訳したのに、出版社側の都合で出版中止になる事。出版業界では、契約書を取り交わさないのが慣例らしい。びっくり!! 中止になっても、それなりの金銭保証があればいいけど、翻訳を頼んでいないなんて言われたら、どうしようもない。裁判するしかないけど、お金と時間がかかるもんね。
 ただ、中小の出版社も経営は厳しいだろう。無い袖は振れない、かも。
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東野圭吾 「沈黙のパレード」 文藝春秋

2022-09-29 16:28:18 | 東野圭吾
 この「沈黙のパレード」が映画化され劇場公開されたという事で、私も読んでみた。久しぶりのガリレオシリーズ。女性刑事の内海薫ってTVドラマオリジナルと思っていたら、人気があるせいか小説の方にも登場することになったんだ!!
 確かに恋愛要素が皆無だと、女性読者や女性視聴者の関心が低くなるからなぁ。TVドラマで、湯川と内海刑事のやり取りがコメディチックというか掛け合い漫才みたいで、すごく楽しかったのを覚えている。
 しかし、この小説内では恋愛要素やコメディ部分は無いなぁ。残念。映画の方だとあるんだろうか? 湯川と内海薫というキャラではなく、福山雅治と柴咲コウという俳優・女優の持ち味なんだろうか?

 それに、ガリレオシリーズでは小説の登場人物もちゃんとトシをとるんだよね。火村・有栖川コンビのように、ずっと30歳代半ばという設定を変えず、トシを取らない探偵役・ワトソン役が多い中で、湯川たちは律儀に年齢を重ねる。湯川や草薙は40歳代半ばから後半、内海薫は30歳代半ばから後半になっている。ちょっと悲しい。
 湯川にいたっては、若い研究者に道を譲る形で、管理職みたいなことをやっているもの。ああ、Too Bad!

 ストーリーはこうだ。シンガーデビューを直前にひかえた若くて美しい娘が失踪する。手を尽くして探したが見つからない。3年たって皆が諦めかけた頃、遠く離れた土地で遺体が発見される。容疑者はいる。しかもこの男・蓮沼は20年ほど前、小学生の女の子を殺した事件で逮捕されたが、完全黙秘で無罪になっていた。今回は起訴すらされず、事件があった地元に戻ってくる。おさまらないのは親や恋人や娘を小さい頃から可愛がっていた地元の商店街の人たちだ。不穏な空気が流れるそんな中、蓮沼が死んだというニュースが流れ…

 「容疑者Xの献身」から、こういうパターンって多いよね。殺した側に何らかの事情があって感情移入してしまう。「真夏の方程式」もそうだった。

 完全黙秘って、なかなかできる事じゃないみたい。そうだよね。人間っていうのは誰かに話したい動物なんだよ。特に上手くいった犯罪なんかは。
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湊かなえ「豆の上で眠る」新潮社

2022-09-19 14:27:09 | 湊かなえ
 タイトルに惹かれ手に取って読んでみる。うーーーん、湊かなえらしからぬ駄作(失礼!)
 彼女は優れたストーリーテラーだから、最初からぐいぐい引き込まれるが、最後はいくらなんでも無理じゃない?!という展開。それとも、書き始めた時は、別の結末を考えていたのだろうか?

 小学1年生と3年生の仲のよい姉妹が、仕事熱心で真面目なお父さん、教育熱心で優しいお母さんと一緒に穏やかな生活を送っていたのに、ある夏の日、お姉ちゃんが行方不明になる…
 お姉ちゃんは、お話が大好きで童話を妹に読み聞かせするのも好きだった。その中の一つが「豆の上で眠ったお姫様」の話。さほどメジャーな話ではないけど、覚えている人も多いのでは?

 
 昔々、ある嵐の夜、1人の少女がお城にやって来る。少女の身なりはボロボロだったが、少女は自分をお姫様だという。お妃さまは、少女が本当のお姫様であるか確かめることにした。その方法とは、少女のベッドの上に一粒のエンドウ豆を置き、その上に羽根布団を何枚も敷くのだ。少女はその上に一晩眠る。
 翌朝、お妃さまは少女に、よく眠れましたか?と尋ねる。すると少女は、布団の下に何か固いものがあったので、よく眠れませんでしたと答えた。
 それを聞いたお妃さまは、それならば本当のお姫様に違いないと確信し、自分の息子の王子と結婚させた。めでたしめでたし。

 で、この仲良し姉妹は、いくら高貴なお姫様とはいえ、何枚も布団を敷いたのにエンドウ豆がある事が分かるだろうか?と疑問に思い、ビー玉で実験したのだ。
 私も、読んだのは小学校低学年だったと思うが、同じように本当に分かるかな?と疑問に思った。(実験はしなかった)
 でも、それ以上に、そんなあけすけな不満を、親切にしてもらった相手に伝えて良いんだろうか?と強く思った。
 こういう場合、いくら背中に異物を感じても「ありがとうございました。ぐっすり眠れました。ご親切、ありがとうございます」とお礼を言うべきではないの?それとも、このアンデルセンの時代のお姫様は、思った事、感じた事ストレートに口に出すべきというプリンセス教育を受けていたんだろうか?
 いやあ、この率直なお姫様と、姑に当たるお妃さまの今後が知りたいです。
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酒井順子 「男尊女子」 集英社

2022-09-09 14:46:15 | 酒井順子
 酒井順子さんは、自分ではフェミニストだと思っているらしいが…失礼ながら、ものすごく図々しいというのが私の印象。

 フェミニストという人は、私の中では、上野千鶴子、土井たか子、辻元清美といった若い頃から女性の権利を声高に叫び、戦ってきた人たちのこと。この「若い頃から」というのが大きなポイント。

 例えば「夫婦別姓」。「別姓だと家族としての一体感が無くなる」と自民党は言ってるらしいでど、結婚した夫婦の3組に1組が離婚するこの時代に、最初から別姓の方が子どもの負担も少ないと思う。それに何といっても、男一人が家族を養わなければ!というプレッシャーが弱まるんじゃないかな? 女の方も、特別な事情がない限り、自分の食い扶持くらい自分で稼がなければって思うだろうね。とにかく夫婦別姓はこの先、避けられないよ。
 当然、酒井順子さんも「夫婦別姓」肯定派だけど、それではいつから肯定派に?って思ってしまう。
 酒井さん、若かりし頃は、気に入った異性の姓と自分の名前を組み合わせ、ニヤニヤしていたんじゃない?
 こういう所が信用できない。

 酒井さんは、バブル真っ盛りの時代に若い頃を過ごし、男に貢がせてなんぼ、という価値観を持っていた人。それが、自分の年齢が上がり時代も変わって、異性の視線を感じなくなると、さっとフェミニストの看板を掲げるなんて図々しいよ。昔から、女性の地位向上を闘ってきた人たちに申し訳なくない?

 確かに自分の僻みもあるとは思うが、違和感を感じてしまう人って少なくないと思うよ。

 それからもう一つ。彼女が参加する女子会の話題が、あまりにもあけすけ。こんなに自分の性生活を友達に話さなくちゃ、仲良くなれないの? 怖いよ。酒井さんは、小学校から私立のお嬢様女子校に通っていたから、その影響なんだろうか?
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唯川恵「途方もなく霧は流れる」 新潮社

2022-08-31 15:54:24 | 唯川恵
 久しぶりに唯川恵の小説を読む。最近はサッパリだが、以前は唯川恵や山本文緒といった女流作家の大人の恋愛小説をよく読んだのだ。山本文緒さん、少し前に病気で亡くなったね。唯川さんと山本文緒さんはプライベートでも仲が良かったらしく、旅行を一緒に行ったこともあったらしい。才能のある人だった。残念です。

 梶木は50歳目前で会社を辞め、東京を引き払い、父親が所有していた軽井沢の別荘に引っ越してくる。8年ほど前に妻と離婚し、娘とも離れ離れになる。長く付き合っていた恋人とも別れる。
 子供の頃、父親が失踪し負い目を感じてはいたが、学力も体力も容姿も優れていた梶木は、一流大学に進学、ラクビー部で活躍し、国内トップの航空会社に入社。外国から飛行機を輸入する部署で、やり手で通っていた。颯爽と働いていたんだ。
 会社は長い間赤字経営だったが、まさか倒産するとは思わなかった。梶木はリストラされる。最も信頼していた上司から「君の仕事はもう無いと思ってくれ」と言われて。

 しかし何もなく放り出された訳じゃない。それなりの上積みされた退職金は貰ったし、何といっても失業保険がある。

 この梶木も、なかなか贅沢癖が抜けないんだよね。自炊すればいいのに、近くの色っぽい女将が切り盛りしている小料理屋に足繫く出掛ける。夏の軽井沢は爽やかかもしれないが、冬はべらぼうに寒く、通年暮らすとなれば防寒工事をしなければならない。その費用は相当なもの。大型犬が迷い込んできて飼うことになったり、何かと物入り。大丈夫か、梶木!!

 その梶木の前に、去って行った恋人、小料理屋の女将、ワケありな人妻、知的な獣医、分かれた元妻、が次々と現れる。無職の男が、どうしてこんなにモテる?! おかしいよ!

 いつも思うけど、唯川さんの小説に登場する男の人って本当にカッコ良くってモテるタイプの人ばかり。そうじゃなければ恋愛小説にならないんだろうが、世の中、キモヲタの男もいっぱいいるわけで…。キモヲタを出せ!!!
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「新訳ペスト」 ダニエル・デフォー著 中山宥訳 興陽館

2022-08-21 15:40:44 | 翻訳もの
 このダニエル・デフォーって人は、ロビンソン・クルーソーを書いた人なんだ!1665年のロンドンペスト大禍の時、彼はわずか5歳だったから、この本は彼の伯父や父親の手記という体裁で出版されている。わずか5歳とはいえ、当時の異常な雰囲気はよく覚えていたんだろう。
 当時のロンドンの人口は50万。そのうち10万人以上が亡くなったという。すざまじいねぇ。でも、裕福な人たちは、ペストが発生した初期の段階で、家族や使用人を連れ、遠くの領地や別荘に逃げだした。あのデカメロン物語のように、お金持ちは行動できた。
 金持ちでなくても、逃げる先がある人は続々とロンドンを脱出した。逃亡しなかった人は逃げ出せなかったんだ。お金もなく頼る田舎もないから。
 それでも、死にたくないからロンドンを脱出しようとする人は、森の中で野宿し物乞いした。他の町や村には入れない。ペストを警戒する村人たちに、村に入るなと銃で脅されたので。

 ペストの原因を「何か目に見えない悪いモノ」が引き起こしているという認識だけで、その正体がはっきり分からない。そうだ、細菌の存在が分かったのは、もっと後の事なのだ。だから、患者と視線を合わせると感染する、なんていうメチャクチャな事を言う人もいた。他には、神様が不信人な人を狙って感染させているという信心深い人もいた。

 そのせいか、まるっきりネズミの話は出てこない。以前読んだカミュの「ペスト」は、第2次大戦後の話だから、一応ペスト菌はネズミに寄生するシラミかダニが保菌していると理解している。だけど、この17世紀のペスト大禍期には、猫や犬は悪い空気を運ぶかもしれないから殺処分するようにというお触れが出たけど、ネズミについては触れてない。でも、ネズミが元凶じゃないかって経験的に分かっていた人はいたんじゃないかな?

 ワクチンも治療薬も何もないこの時代、人々はバタバタと死んでいった。でも、カミュの「ペスト」でもそうだったが、何か月かペストが猛威をふるった後、その勢いはパタッと衰えるんだ。どうして?特効薬が開発された訳でもないのに。これが集団免疫って言うんだろうか?
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今村夏子 「むらさきのスカートの女」 朝日新聞出版

2022-08-13 13:38:39 | 今村夏子
 この小説が芥川賞をとった時、NHKの女子アナが作者の今村夏子さんにインタビューしている番組を見た事がある。その時、その女子アナは「小説の最後で、むらさきのスカートの女と黄色いカーディガンの女は同一人物?!のように受け取れるんですが」という意味の発言をしていた。
 それを覚えていて心して読んだが、私にはそう読めなかったよ。読解力がないのかな?

 わたし「黄色いカーディガンの女」は、近所に住む「むらさきのスカートの女」が気になって仕方がない。彼女と親しくなろうと、自分と同じ職場で働くよう誘導し始める。
 
 この「むらさきのスカートの女」は、普通の女性なのだ。年齢は30歳前後。不運な事が続いて、その上失業してしまったので、げっそりとやつれていたが、新しい職も見つかり(黄色いカーディガンの女もいる)生活も安定して元気になる。職場の先輩たちとも馴染み、その上上司の既婚男性とも親密になり、どんどん派手になっていく。休日は二人で楽しくデートする時もあれば、相手の奥さんに嫌がらせの無言電話をかける時もある。
 そんな不倫関係が、女ばかりの職場の先輩や同僚たちに知られない訳がなく、尾ひれがついたヒドイ噂話が流れ始め…

 それに比べ、黄色いカーディガンの女はかなりエキセントリック。むらさきのスカートの女の座るベンチに、丸を付けた自分の職場が載っている求人誌を置いたりして、なんとか自分の職場に彼女を誘導することに成功。
 黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女の先輩になるが、たぶんむらさきのスカートの女は、彼女の事は名前以外知らないと思う。他の推しが強くにぎやかな先輩たちと親しくなっていく。親しくしないと職場で上手くいかない事を知っているから。
 黄色いカーディガンの女は、先輩たちの中でいじめられている訳ではない。影が薄い存在なのだ。親しい人もあまりいないんだろう。だから、元気のなかったむらさきのスカートの女を自分の同類だと思い、友達になろうとしたんだろう。

 ここらへんの心理、よくわかるなぁ。友達があまりいなかった私は、小中学校の頃、転校生が来ると色々話しかけて仲良くなろうとしたなぁ。ちょっと切ない思い出です。
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