ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ作「愛国殺人」

2005-04-20 15:09:53 | Weblog
 重婚が犯罪の動機になっていることはクリスティの小説の中で多い。この小説でもそう。しかし重婚ってそんなに簡単にできるものなのだろうか。
 日本には戸籍というものがあり、結婚したら、そこに記載されるので、実質的な重婚はともかく法的には重婚できないが、イギリスの場合、結婚証明書が発行されるだけなのかしら?それだったら重婚のやりたい放題になってしまう。
 わたしは、戸籍といったものが、どこの国にもあると思っていたが、ある国の方がめずらしいらしい。だから、簡単に別人になれるのだ。それにイギリスの場合、昔から植民地政策をとっていたからインド帰りとかアメリカ帰り、と称すれば少々おかしいな、と思ってもそれで通ってしまうのだろう。

 クリスティは、なぜベルギー人で難民としてイギリスに渡ってきたポアロを主人公にしたのだろうか。イギリスは長いこと世界の中心だったので外国からの移民が増え、生粋のイギリス人たちの外国人差別もまた激しい。イギリス人同士でもスコットランド人は差別されているような雰囲気がある。またギリシャ人やイタリア人といったラテン系も低く見られている。(どうしてだろう?ギリシャ文明やローマ文明はヨーロッパ文明の礎となっているのに)ましてや有色人種に対する偏見などすごいだろう。そこらへん書き方が難しいせいか登場人物に東洋人や黒人がでてくることはほとんどない。もっともクリスティのミステリは中産階級か上流階級が舞台となっているのがほとんどなので当たり前といえば当たり前だが。

 この作品で、ワトソン役とレストレード役をやっているのが、ジャップ警部。この人、好きだなあ。他にもスペンス警部やバトル警部などが出てくるが、私はジャップ警部が一番好き。ポアロとの会話はかけあい漫才みたいでとてもおもしろい。
コメント (2)
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