ケイの読書日記

個人が書く書評

鮎川哲也「黒いトランク」

2007-06-16 10:42:44 | Weblog
 読み始めて35P目で時刻表が出てくる。とたんに読む気が失せる。
 ああ、鉄道ミステリって、私本当に苦手なんだよね。生理的に受け付けない。リタイアしようかとも思ったが、とても有名な作品なので頑張って最後まで読んだ。

 とても優れたアリバイトリックで、こういうのが好きな人には本当に嬉しいだろうが、私のようなめんどくさがり屋は、国鉄のローカル線の地図や時刻表を見てもあくびを連発するだけで、トリックを崩そうと考える事ができない。

 それに、この鬼貫警部がアリバイトリックを見破る事ばかりに情熱を燃やし、犯人の動機について全く考えようとしないのは不自然。
 「気に入らないヤツ」というだけで社会的地位がある人間が、殺人を犯すだろうか? 
 後々その動機も出てくるが、あまりにも脆弱。

 また、鬼貫警部が犯人と疑っている人物が彼の旧友だと言うのに、その内面の葛藤がほとんど書かれていないのも不思議。旧友の心の内を思いやらず、嬉々としてアリバイを崩していく鬼貫警部は人間性に難があるね。

 悪口ばかり書いたが、アリバイトリックの本格としてはかなりの傑作。論理的思考が得意の人はぜひ読んで下さい。


 PS.クロフツの『樽』に似ているという話ですが、『樽』の中にも時刻表が出てくるでしょうか? もしそうなら、読むのやめよかな。
コメント (6)
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