ケイの読書日記

個人が書く書評

二階堂黎人「吸血の家」

2008-05-23 09:39:16 | Weblog
 すっごく面白い。今までに読んだ二階堂黎人の作品の中で、一番出来が良いのではないか?

 3件の(広い意味での)密室殺人が起こる。本家本元のカーのトリックよりも、よほど完成度の高い優れたトリック。
 カーの方は、導入部が怪奇的でどんどん引き込まれるが、肝心のトリックは「なーんだ、バカバカしい」というものが多い。しかし、この作品は舞台設定は地味だが、トリックはとても現実的。
 犯人が密室殺人をやろうと意図したわけではなく、色んな人が自分のやるべき事をやって結果として密室殺人ができあがる。
 そうだ、そういう可能性だってあったんだ、とやっと気がつく。


 ただ1つ、この作品にも難点がある。それは、黎人と蘭子の会話を通して、古今東西の推理小説のウンチクが語られるのだが、トリックまでバラしてしまう事がある!!
 例えば、カーの『テニスコートの謎』。テニスコートの中央に遺体があり、足跡は被害者のものと発見者のものだけで犯人の足跡が無い、という状況はこの『吸血の家』の第3の殺人とそっくり! もちろんトリックは全く異なっているらしい。

 その『テニスコートの謎』のトリックを本文でばらしてしまっているのである。ほのめかす程度ではなく、白日のもとにさらしている。
 ああ、こういう事は止めてほしい。
コメント (4)
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