ケイの読書日記

個人が書く書評

ジョン・ディクスン・カー「夜歩く」

2011-03-22 13:54:28 | Weblog
 福島原発はまだまだ困難な状況ですが、徐々に平常モードに戻していきたいと思っています。
 被災された皆様、ごめんね。忘れてないよ。私には援助物資や義援金を送ることしか出来そうもないのですが、末永く継続してやっていくつもりです。

 
 『夜歩く』は、カーの処女作として有名な作品。
 探偵役のバンコランは、カーの創作した名探偵としては影が薄く、フェル博士やH.メルヴェル卿のほうが圧倒的に有名だが、私はバンコランの方が好きだな。
 すごーく魅力的!! 容姿としては、フェル博士やH.メルヴェル卿は、赤ら顔の肥満体というイメージだが、バンコランはすらっとしたチョイワル親父風。

 前者の2人はイギリス人だが、バンコランはフランス人、という設定。パリ警視庁の大立者。予審判事。

 舞台は1920年代後半のパリだから、ナイトクラブの描写にしても華やかで、香水や白粉の匂いでむせ返りそう。もちろん動機は金でもあるが、男女間の愛情のもつれでもある。
 パリジャンとパリジャンヌの殺人事件だもの、これはお約束。


 数年前、夫に殺されかかったルイーズという美貌の女性が、お金持ちのフランス貴族と再婚する事になった。
 それを知った前夫は精神病院を脱走し、整形手術で顔を変え、新婚夫妻の命を付けねらう。
 衆人環視の中で、堂々と犯された密室殺人。有力な容疑者とされていた男が、次に殺され事件は意外な方向に…。

 カーお得意の密室殺人だが…これはねぇ。密室でも謎でもなんでもないじゃないか。

 トリックはともかく、2つの大戦の間のつかの間の平和を享受していたパリの、退廃的な雰囲気がよく出ていて、私はこういう作品、好きだな。
コメント
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