ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「歪笑小説」

2015-05-23 10:08:00 | Weblog
 出版不況の中、大手出版社・灸英社の編集者と小説家の戦いを描く、ドタバタコメディ。
 売れっ子小説家の原稿を、いかにして他社を押しのけ手に入れるか、小説が映像化されるときの映像会社・出版社・原作者たちの駆け引き、文学賞を創設する時の他社との軋轢、などなど小説業界の内幕が面白い。

 ただ、これ、初出が2011年「小説すばる」らしいが、電子書籍の脅威について全く触れてないのは、不思議。それに、出版不況と言いながら、結構、編集者の皆さん、景気良さそう。なんといっても、きちんと身分保障されている大手企業の正社員だもね。
 それに比べ、小説家の方は…。


 先日「婦人公論」に柳美里さんのエッセイが載ったので読んだ。彼女、この10年、うつ病で、ほとんど書けず経済的に困窮しているらしい。芥川賞作家である柳美里さんが…だよ。ショックだなぁ!
 そういえば、彼女の新刊って、全然見ないもの。
 なんといってもネームバリューがある人だから、書けば、どこかの出版社が出してくれるだろうけど、書けないというのは困る。お子さんは今度、高校生になるらしい。


 この「歪笑小説」の最後に「職業 小説家」という短編が載っている。
 唐傘ザンゲという新人ミステリ作家が、婚約者の両親に挨拶に来て、自分の収入について話す場面がある。
 年に単行本2冊の印税と、雑誌の原稿料をあわせ、348万円ほどが予定年収。ここから税金と社会保険料(年金・健康保険)を払うと説明。
 うーん、こんなものかなぁ。この唐傘ザンゲという新人は、「虚無僧探偵ゾフィー」というデビュー作で、第1回灸英社新人賞を受賞。今、もっとも灸英社が力を入れて売り出そうとしているのに、7000部しか刷らないとは…。
 この先、唐傘ザンゲは大化けするかもしれないが、大変な職業だよね。小説家って。
コメント
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