ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子 「君は永遠にそいつらより若い」

2015-07-08 13:10:27 | 津村記久子
 津村記久子のデビュー作にして出世作。デビュー作には、その筆者のエッセンスが詰まっているとは、よく言われるが、本当にそう。彼女の特徴が、あちこちに散らばっている。
 ゆるーいユーモア、仕事に対する誠実さ、ぐだぐだ無駄話できる友人、固有名詞にカタカナ使用…etc

 ミステリだと、後半に起る出来事に対して、ああ、前半のアレが、この伏線だったんだなと気付くことが多い。この伏線が無いと、駄作って事になる。
 でも、こういった純文学的な作品(これは太宰治賞受賞)って、ミステリと違って、伏線があまり無いのだ。出来事はそのまま作品中に置かれているから、ちょっとフラストレーションがたまります。


 女主人公のホリガイは、大学4年生で、就職も決まり、ホッとしてバイトに精を出す日々。彼女は子どもの頃、TV番組で、子どもの行方不明事件(誘拐された?)が多発している事を知り、将来、児童福祉に関する仕事をしようと決意した。
 大学入学時から、食品工場で働き始め、せっせとお金を稼ぎ、公務員試験向けの専門学校にも通い、見事、地元の役所に職を得る。
 この「君は永遠にそいつらより若い」という変わったタイトルは、ホリガイが虐待されている子どもたちに対して、「君たちは、そいつら・虐待している大人より、永遠に若いんだ。だからなんとか生き延びろ!というメッセージから来ている。
 最初は「マン・イーター」というタイトルだった。これはこれで怖い題名です。

 ホリガイの周りの大学の友人、その恋人、バイト先の上司・同僚のなかにも、訳ありの人はいる。リストカットを繰り返す女の子、その女の子を疎んじながらも愛する男、子どもの時レイプされ、心にも身体にも傷を負った後輩、親からネグレクトされ部屋の中でうずくまっている小学生…。
 でも、最後は明るい光が差し込んでくるところで、この小説は終わる。
 津村記久子の作品って、読後感が良いんだよね。


 そうそう、先日、新聞で、津村記久子のインタビュー記事を見た。津村さんって、結構かわいいんだ!驚いた(失礼!!)クールビューティってわけじゃないけど、柔らかく優しくかわいらしい容姿。いいなぁ。
コメント
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