ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子 「二度寝とは 遠くにありて想うもの」

2016-02-01 10:47:59 | 津村記久子
 『やりたいことは二度寝だけ』の続編エッセイ。
 朝日新聞や読売新聞、京都新聞などの連載エッセイや、日経ビジネスオンラインに載ったエッセイを集めたもの。特に、日経ビジネスオンラインに載ったWEBエッセイは印象深いものが多い。

 「親は親をやりなおせるけどな」の章では、自分の生い立ちについて触れている。
 津村さんが9歳の時に、お母さんは彼女と弟さんを連れて別居、10歳の時に正式に離婚している。原因は、父親が働かなかったこと(ここらへんの子どもの気持ちについては『まともな家の子どもはいない』に書かれている) 離婚が別に珍しくない今、転校先にも母子家庭の子どもはいたはずだが、そういった事情は、子供の世界でも、表に出しづらいものらしい。
 お父さんは、離婚後、再婚し、新しい家族とは今度は仲良くやっていたようだが、病死した。
 お父さんとは全く音信不通だったので、死んだのを知らなかったが、再婚家庭の誰かが、娘が芥川賞作家だというので、出版社経由で津村さんに連絡した。

 ここらの津村さんの気持ちは…どんなだったろう。
 さすがに、出版社が連絡してくれたので無視するわけにもいかず、香典は出したが、悲嘆にくれる気分には全くなれず、葬式には参加していない。

 そうだろうなぁ、働かず、家でぶらぶらしていて、娘の友達が来ると顔を出し、寂しがり屋なのか、物欲しげに彼女たちの周りをウロウロする。「どうしてお父さんが家にいるの?」と友達に尋ねられ、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。そりゃ、私でも本当に嫌だよ。
 それなら、スパッと離婚して父親とはサヨナラして、友達には「お父さんは外国でお仕事している」ってしゃべるよ。

 親には親の事情があるだろうが、働く父親の背中を見せてほしかった。


 話は変わるが、木下晋也の挿画が、ほんとうにかわいい!
 木下晋也って、イラストレーターじゃなくてマンガ家なんだね。WEB無料マンガで少し読んだけど、そっちよりもこの挿画の方がうんとかわいい!津村さんの、ほんわかぼんやりした雰囲気をよく表している。おススメ!
コメント
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