ケイの読書日記

個人が書く書評

小泉八雲 「食人鬼」

2020-11-20 16:08:14 | 小泉八雲
 「耳なし芳一のはなし」を書いた小泉八雲(帰化前はラフカディオ・ハーン)の短編。まあ、どの怪談も短編だけど。

 上田秋成の『雨月物語』の中に、人を食う鬼の話が出てくるので、私はそれをベースにしたものかしら?と思って読んだが、普通の食人鬼の話だった。
 生きている時、ただお金が欲しいが為に読経も引導もしていた僧が、自身が死ぬと、その金銭への妄執から食人鬼になってしまい、村に死人が出れば、その死骸を貪り食う因果に落ちてしまった…という話。
 それで食人鬼になるなら、世の中のほとんどの坊主は食人鬼になってしまうだろうね。お金が欲しくて読経や引導するなんて、当たり前じゃん! 拍子抜けしちゃう。
 食人鬼になるなら、もっと悪行を重ねなければ。例えば、僧でありながら人を殺す、人肉を食べる、などなど。でも、大飢饉の時なんかは、人肉を食べなければ死んでしまうので仕方ない。仏さまも、地獄の閻魔様も、許してくれるよ。

 『雨月物語』の方の話は、もっとロマンチック。山奥の寺にいる僧のところに、美しい童が奉公に上がり、僧は彼を寵愛した。しかし流行り病で、その美童が死んでしまった。僧は嘆き悲しみ、愛欲の虜となって、あろうことかその美童の亡骸を食べてしまう。それからだ。周辺の村々に死人が出ると、食人鬼があらわれ…。

 死んだ美童の亡骸を食す、というより、死姦するという事なんだろうか。 人が死ぬと色んな汚物が出てくるから、綿を詰めたりする。死体を弄る行為は、すごく汚い気がするけど、土葬が一般的だった昔、若い女性が死んだりすると、死体をイタズラされないように、身内がしばらく墓を見張っていたらしい。
 
 まあ、昔は人が死ぬ場所も病院ではなく自宅で亡くなったから、死がもっと身近だったんだろうね。でも…想像するだけでグロテスクだよ。
コメント (2)
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