ケイの読書日記

個人が書く書評

青山七恵「かけら」

2012-07-25 13:51:39 | Weblog
 端正な静物画のような小説。川端康成文学賞を受賞したらしいが、なるほどうなずける。

 女子大生である「わたし」が下宿先から実家に帰って来たら、結婚している兄が娘を連れて来ていた。じゃあ皆でサクランボ狩りでも行こう、と母親が予約するが、孫娘の体調が悪く、父親と「わたし」だけで行くことになる。
 そのサクランボ狩りバスツアーの様子を淡々と書いてある。事件らしい事件は何も無。でも退屈しないんだよね。これが。

 「仲良し父娘」という訳ではないが、「いがみ合い父娘」でもないので、バスには隣に座り、少しおしゃべりし、ぼんやり窓の外の景色を見ているか寝ている。このゆるさ。
 父親と二人でバスツアーに参加する女子大生が、この日本に何人いるだろうと思う。
 我が家では絶対無理!!!(娘じゃなくて息子だけど)


 しかし…この「わたし」は妙にさめていて、お父さんが転んで怪我をした老婦人を助けたり、バスツアーの他の参加者に高い位置にあるさくらんぼを取ってあげたりすると、下記のように感じる。
「父が一人前の男として人の役に立っているのを見るのは、突然人間の言葉を話し出した犬猫を見ているようで、好奇心が勝って目が離せない」
 
 いっくらなんでも、これって例えがヒドすぎない?!
コメント
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