ケイの読書日記

個人が書く書評

森博嗣「夏のレプリカ」

2015-04-05 13:18:22 | Weblog
 T大大学院生の杜萌(ともえ)は、夏休みに帰省した実家で、仮面をかぶった男に誘拐された。誘拐犯たちは、仲間割れしたのか、2人が車内で射殺体となって発見される。
 杜萌も、別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、家にいたはずの兄だけが、どこかに消えてしまった。いったい、どこへ?

 
 とっても後味の悪い作品。この杜萌という女性が、萌絵の高校時代の友人で、そのつながりで、この事件に萌絵が首を突っ込むようになったのだ。
 読者をミスリードするように書かれているので、「不思議だなぁ、どうして仮面が二つあるのだろう?」とか「なぜ、射殺した犯人は、車の中に死体を引きずって行ったんだろう」とか、謎はいっぱいあるが、それはさほど問題ではない。

 私は、この誘拐された杜萌の家族に、強い違和感を覚える。
 杜萌には父と母、兄と姉がおり、父と母は再婚同士。杜萌は母の連れ子なのだ。兄は、父の病死した前妻の子。父は県会議員で、病死した妻の父親は元国会議員。地元では大変な金持ちで有力者。父は、その七光りで県会議員をやっている。
 兄は、目が見えないが詩人として知られ、ハンサムなので、ちょっとしたアイドルだった。
 
 3年前、ある事件が起きて、兄は自宅の3階に半分監禁されたような状態になっていた。その「ある事件」が起こる前は、血はつながらなくても仲の良い兄妹だったのにね。



 しかし…なぁ、この県会議員をやっている父親っていうのは、どういう男なんだろうか?自分の実子である兄を閉じ込めてまで、女房の連れ子である杜萌たちのご機嫌をとるとは…。変な下心でもあるんじゃないかと思えるほど、義理の娘に優しいのだ。
 普通、母親を早くに亡くした息子を不憫に思うだろうに。

 傍目には、広々とした庭、大きな屋敷、高級外車、お手伝いさんに囲まれた素晴らしい家庭に見えるが、すごくいびつで歪んでいるよ。あーーー。ヤダヤダ。
コメント
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