日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ペコちゃんが泣いている

2007-01-12 22:28:12 | ビジネス
昨日発覚した、不二家での賞味期限切れ食材を使用した「シュークリーム事件」。
実は、シュークリームだけではなくアップルパイでも、同様のことがあったようだ。
昨日の記者会見では、昨年11月の時点でこの問題は社内で発覚していたにもかかわらず、数年前の「雪印乳業の二の舞」を避けるため公式な発表を避けてきたという、説明があった。
とすれば「雪印乳業」の事件の反省はまったく活かされていなかった、ということになる。

雪印乳業を実質的廃業にまで追いやったのは、企業の問題意識の欠如と説明責任のなさ。
そして、企業の社会的責任や企業理念を見失った経営陣の態度によるものだったはずだ。
それを「公表すれば、企業ダメージが大きくなり、経営自体が厳しくなる」という判断を、経営陣がしていたということなのだろう。
一昨年からさまざまな業種で発覚する問題は、企業の問題意識のなさと「なんとかなる」という甘い判断からコトが大きくなっている。
「わからなければ、何とかなる・・・」的な思考が、企業そのものをダメにしてしまっているのだ。
もちろん、利益・利潤を追い求める中で起きた生活者無視の企業活動だともいえるのだが、いつのころからかこのような発想が企業の経営陣に根付いてしまったのだろうか?と疑問に思う。

不二家という企業は、「洋菓子」を売っているだけではなかったはずだ。
創業当時「洋菓子」というオシャレで「夢のあるモノ」だったのではないだろうか?
そしてもうひとつ「お菓子」という側面から考えれば、子供たちにとって大切な食事でもあったはずなのだ。
高校の家庭科(だったと思う)で「幼児期におけるおやつは、3回の食事ではまかなえない大切な栄養を得るためのサブ的食事」だと、学んだ記憶がある。
そのため、量ではなく質の高いおやつが必要なのだと。
その考えをあらわしているのが、グリコのキャラクターであり、グリコのおまけ(グリコでは「おもちゃ」と呼んでいる)なのだ。
そのような考えが、不二家にもあったと思うのだ。
だからこそ「ペコちゃん・ポコちゃん」というキャラクターが必要であり、長い年月を経ても変わらないブランド力をもち続けることができたはずなのだ。
その「基本」となることを忘れてしまったことが、今回の事件の素なのではないだろうか?

もうひとつ、経営陣の記者会会見で気になったことがある。
それは、「(昭和)30年代から職人としてやってきた人間が、その当時の感覚で原料を扱っていた」という言葉だ。
きっと、この職人さんは集団就職かなにかで都会に出てきて、不二家一筋で洋菓子作りをしてきた人なのではないだろうか?
その人たちだけに、責任転嫁をさせるような発言は経営陣としてあるまじきことではないだろうか?
彼らが一生懸命洋菓子を作ってきたからこそ、今の不二家というブランドがあるはずなのだ。
もし「社内における衛生管理が、不徹底でこのような事件を起こしてしまった」と言えば済むことだったのではないだろうか?

経営陣がどこか他人事のような発言をする事件があるたびに、「企業経営の基本」ということを考えさせられる。
「お金儲けだけでは企業経営ではない」そういう時代だということを認識していない、企業経営者がまだまだ多いということなのだろうか?