日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

カップヌードルに込められた思い

2007-01-14 21:27:32 | CMウォッチ
先日、日清食品の名物会長・安藤百福さんが亡くなられた。
この訃報は、日本だけではなく世界へと打電され、欧米でも安藤さんの業績を称えるとともに、強い悲しみを伝えていた。
以前、拙ブログでも幾度か取り上げてきたのが「カップヌードルのCM」だ。
安藤さんの「食足りて世は平らか」という考えを、如実に表現していたCMだったからだ。
それは、カタチを変え今でも続いている。

ここ2、3年のカップヌードルのCMは、戦火の子供たちを取り上げ、彼ら・彼女たちの笑顔が印象的だった。
その一方で、なぜカップヌードルのCMなのに戦火の子供たちを起用する必要があるのだろうか?と疑問を問いかけもあったはずだ。
その一例が「少年兵」だった。
銃を手にした少年兵というのは、テレビCMとしては衝撃的だった。
だからこそ、批判が起きたのだろう。
「考えてほしい。なぜ彼が銃を持たなくてはいけなかったのか?ということを・・・」そんな問題提議をしながらも、静かにミスチルの楽曲だけが流れることで、メッセージ性と商品の持つグローバリズム(=世界で愛されるカップヌードル)ということを表現して見せていたのだ。

そして現在は、大友克洋さんを起用し「FREEDOM」をキーワードにして展開している。
制作ノートなどを読んでみても、前作「No Border」と通じるモノを持っていることがわかる。
すなわち「食には境界はなく、自由である」というメッセージなのだ。
もちろん、「食文化」を無視するのではない。
その国々の持っている伝統的食に対する文化を大切にすることと、カップヌードルのメッセージとは別だ。

カップヌードルという食品に込められた「境界がない自由」ということは、安藤さんが言っていた「食足りて、世は平らか」に通じる理念なのではないだろうか?
そのCMが年が明け、また新しくなった。
今度は「地球」だ。
青く美しい地球の姿は、「No Border」の最終編でも見られることができた。
それは「ほら、境界なんてないでしょ!」と、言っているような印象的なモノだった。
それを再現することで「自由」の意味を問いかけているのが、今回のCMなのだろう。

年明け早々、食品業界を揺るがす事件が続出した。
そこには「自分が良ければ(=儲かれば)」という、意識が経営陣に大きく働いていたように思う。
その中で安藤さんのような「食品への愛情と理念」が、クローズアップされていくような気がしてならない。