日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

成熟した社会だからこそ、売れる商品

2013-08-26 19:45:38 | ビジネス

FMを聞いて過ごすことが多いのだが、今日ある番組で「なるほど」と感じたことがあった。
それは、兵庫県豊岡市が取り組んでいる「コウノトリに関係する農業政策」。
ご存じの方も多いと思うのだが、豊岡市はコウノトリの繁殖地として知られている。
皇族の方々も訪問をされ、その度にニュースになっている。

「第二のトキ」とならないように、人口的な繁殖が進められている(現在の取り組みは「野生化したコウノトリ」の個体数を増やすことを目的としている)。
その「コウノトリ」の繁殖環境を整えるため、重要なのが実は農業だという。
元々農地開発などで、コウノトリの餌が激減していたところに、農薬散布が一般的になったことが野生のコウノトリが激減した原因と、考えられているからだ。

そこでコウノトリの繁殖を促すために豊岡市がとった農業政策は、無農薬・有機農法などによる農作物の栽培なのだ。
その結果「豊岡の農作物は無農薬・有機栽培で美味しい」と評判になっているという。
特にお米は「コウノトリ育むお米」というブランド名で販売をされ、美味しいと評判になり、既に今年販売予定分は完売済みとなっているらしい。
元々の生産量も少ないために、早々に完売してしまったようなのだが、生産量が少ないだけで予約完売というのは、考え難い。

そう考えると、この「コウノトリ育むお米」の人気が、成熟した社会や経済の中で売れる商品の一つのモデルなのではないだろうか?
実際、豊岡市の「コウノトリ育むお米」のサイトを見てみるとわかるのだが、単なるお米という商品を売っているのでは無い、と言うコトに気がつく。

豊岡市:「コウノトリ育むお米」

一つの大きなビジョンがあり、それが時代と共鳴しあい、お米の美味しさを求める生活者の気持ちを捉えた結果として、予約完売となっているのでは?と、感じるのだ。
豊岡市の場合、「コウノトリ」の存在が行政をあげての取り組みとなっているが、決して行政の力を借りなくては成功できない訳ではないと思う。
地方の特産品にしても伝統工芸にしても、大きなビジョンの中に時代と共鳴できる要素があり、それをどのような方法で生活者に届けるのか?と言う、具体性のある行動だと思うのだ。

経済を中心に、未だに「成長することが良いこと」と思いがちだが、もし高度成長期に「コウノトリ育むお米」のような商品が市場に出たからと言って、生活者が振り向いただろうか?
「成長」することばかりが、モノが売れる要素という訳では無いと思う。
「成熟した社会」には、その社会にあった商品やサービスがあり、成長期に身に付けた様々な基本をより発展させ、洗練させたモノ・コトが当たり前にあるコトで初めて、高い商品価値となるモノ・コトがあるのではないだろうか?