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農協改革は、農業改革ではない

2015-02-09 20:44:20 | アラカルト

先日来から言われていたJA全中の「農協改革」の受け入れを、JA全中の万歳会長が表明した。
日経新聞:JA全中会長、農協改革受け入れを表明

このニュースを聞くと、「農協中心だったの農業が変わるのか?」という気が一瞬する。
しかし、記事をよく読むと「農協改革」であって、農地法などが変わり農業への新規参入がしやすくなる、といったことではない、ということがわかる。
ただ、一連の関連記事を読むと、JA全中そのものが農家に与えていた影響が大きかったことがわかる。
記事にある「農業指導」のようなことは、地域ごとに違ってよいはずなのに、中央で管理し指導していた、というのは驚きというか、まるで「農業版霞が関」のようなシステムだったのだな、という気がする。
親戚筋に専業農家も兼業農家もいるのだが、農機具一つ購入するにしても、農協を通さないといけないらしい。
ある意味、農協そのものは農業関連商品を農家へ販売する「独占企業」のような部分があった、ということだと思う。
そのような環境では、市場原理も働かず消費者である農家にとって、メリットも少なかったのでは?という気がしている。

そして今回JA全中が「農協改革」を受け入れた理由の一つに、「JAバンク」の存在があるのでは?という気もしている。
ご存じのとおり「JAバンク」というのは、農協が行っている金融機関のコトである。
かつては農家を相手の行っていたであろう金融事業も、今では農業とは関係のない人も利用することができるようになり、おそらく金融機関としては、地方銀行よりも取扱高なども大きいのではないだろうか。
となれば、JA全中の収益の中心は「農業指導」や「農機具の販売」など、農業に関連する事業ではなく、金融事業なのでは?
金融事業が中心であれば、何も本来の「農業指導」などの事業を手放すことには抵抗がないだろう。
確かに記事で読むような「農業指導」は、「濡れ手に粟」のようなうまみのある事業かもしれないが、今や「農業法人」のような形態の農家が誕生していることを考えれば、「先細り」と考えたのかもしれない。

もう一つあるとすれば、「地方の農協の意識差」から生まれる不満のようなモノが、JA全中に向けられていたのでは?という点だ。
「農協」といっても地域ごとで農業に対する意識が随分違う、と感じたことがある。
実家のある鳥取県西部地区だけであっても、農協が積極的に直売所などを設け農家が「売れる農作物」ということを、意識させている農協もあれば、そのようなこともない農協もある。
傍で見ている限りでは、農協が農家を後押しして「市場を意識させている」ところは、農家さんも元気があるような気がする。
そのように一生懸命、農家の意識を変えようとしている農協と、そうではない農協がJA全中という上部組織に管理されているとすれば、不満のようなモノが出てもおかしくはないと思う。

そう考えると、今回の「農協改革」は農協という組織改革であって、農業改革ではないということになる。
ただ期待するとすれば、地元農家と一緒になっていろいろなコトにチャレンジしている農協が、農業のあり方や農地法などを変えていく原動力となるコトだ。