日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ビッグデータとマーケティング

2015-02-19 20:18:22 | ビジネス

昨年から産業界から「個人情報」を、ビッグデータとして使えるようにしたい、という働きかけが政府にあった。それを受け、「個人が特定されるような情報は、わからないようにしてビッグデータとしての活用を検討」という話が出ていた。
このニュースが流れた時、今の企業のマーケティング力の低下を嘆いたのだが、それを示すかのような本を最近書店で見かけるようになった。
新潮社新書:マーケティングの嘘

私もどんな内容だろう?と思い読んだのだが・・・。
結局は、最近言われている「ビッグデータ」や思い込みや先入観で市場を見ると、大きく違うことがある、という内容であった。
その顕著な購買層として、子育てママや(元気な)団塊世代を取り上げている。
確かに、納得できる部分もあるのだが、「どうして?」と疑問に感じるところも多々ある。
何より、著者が行っていることそのものが「マーケティング」の手法の一つで、「マーケティング」そのものは嘘をついてはいないからだ。

おそらくこの著者は、「マーケティング」を「ビッグデータ」から分析したような市場調査に基づくモノだと、考えているのだと思う。
確かに「市場調査」というのは、実務としてのマーケティングではとても重要なコトであり、そのデータは十分考慮しなくてはならない。
問題なのは、そのデータではなく使い方なのだ。
あくまでもこのような膨大なデータを基にした「市場調査」というのは、「市場の傾向」を観るためのものであって、その傾向が本当なのか?実際は、どのような動きが市場に生まれているのか?ということは、実際の現場となる場所に行って、注意深く生活者の姿を観る必要がある。

たとえば、この本でも取り上げている「子育てママ」。
夕方、小さなお子さんの手を引いて仕事帰りの買い物をしている女性たちの買い物かごを観察していると、出来合いのお惣菜を買っている人は、案外少ない。
というのも、今の保育園などでは「極力、母親の手作り弁当」を言っている場合があるからだ。
逆に団塊の世代のほうが、出来合いのお惣菜を購入している人が多い。
「やっと自分の時間が持てたのだから、家事からも解放されたい」という気持ちがあるからなのだろうか?と、買い物籠に入れられている出来合いのお惣菜を観ながら、想像している。

本で紹介されているような、調査のために生活日記のようなモノをお願いする、というのは、実は個人の生活を丸裸にするような手法で、調査を依頼された側としては抵抗感があるのでは?と、思っている。
しかも、調査対象となる人が限られることを考えると、それもまた実際の生活者像を見誤る可能性も感じる。

「マーケティング」の中の「市場調査」というのは、ビッグデータだけでも個人の生活調査だけでも、実際の生活者を見ることはできない、と考えている。
何より、「生活者を調査する」という、上から目線で生活者を観ること自体、違っているのでは?
これまでは企業が市場を創り、リードしてきた。
そしてしばらく前は「生活者が市場を創る」と言われてきた。
おそらく、これからは企業と生活者が一緒になって市場を創るという時代になると思う。
というよりも、すでにそのような市場になってきている。
「ビッグデータをビジネスに活用する」というのは、確かに効率がよさそうだが、そこから考えられたマーケティングはあくまでも「傾向を知る」ためで、いかに生活者とコミュニケーションを取りながら、市場を考えるのか?ということが、大切なのだと考えている。