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「オバマケア」だけではなかった、オバマさんの医療政策

2017-09-03 19:57:38 | アラカルト

年に数回、愛知県がんセンターで「公開講座」が開かれている。
その中でも、9月の第一土曜日にある「公開講座」は、がん治療における最新研究の話が、臨床医からだけではなく研究者からも聞くことができる内容になっている。
今年のテーマは「ゲノム医療」に関する内容であったので、時間の都合をつけ出席することができた。

「がん治療」というと、先ごろ乳がんで亡くなられた小林麻央さんのことを、思い浮かべられる方も多いと思う。
当初、小林さんのお母様も乳がんの罹患者であった、という報道があったコトから「家族性乳がんなのでは?」と言われていた。
「家族性乳がん」については、その後小林麻央さんご自身が「遺伝子検査」を受け、「家族性乳がん」を否定されている。

ただ世間では、「がん家系」ということを言われることが、多い。
残念ながら一部の「家族性がん」と呼ばれるがん以外、ほとんどのがんは「家系」は関係ない。
何より日本人の2人に1人が、がんに罹患する時代。
「家系云々」などとは、言ってはいられないのが現実だ。
それほど、がんという病気について、余り理解されていないというのが現実なのだと思うし、私自身、自分ががん患者となったことで、初めて「がん」という病気を知ることになった。

その「がん」という病気は、「細胞の異変」による病気だ。
当然、細胞をカタチつくっているのは、「遺伝子=ゲノム」ということになる。
2000年代始めまで、「人のゲノム解析は、何十年もかかる」と思われていた。
それが「京」などの大型コンピューターにより、既に「人のゲノム解析」ができるようになった。
「ゲノム解析」ができたことで、がん治療も大きく変わることになったのだ。
それまで、ある程度区分されていたがんのタイプが、より細かく区分されることになったのだ。
当然、投与される薬もそれに合わせた薬の開発が目的となってきている。
3年ほど前の最新治療は「個別化治療」と言われる、患者一人一人の症状に合わせた(=タイプ区分された)治療だった。
それが今は「精密化治療」と呼ばれる、「ゲノム解析」によって得られた情報を基にした、遺伝子レベルでの治療へと変わりつつあるのだ。
それを推し進めたのが、オバマ前米大統領だった・・・ということのようだ。

これまでも「がん治療」においては、米国が一歩も二歩もリードをしてきた。
しかし、オバマ前大統領が打ち出した「精密化治療の推進」によって、治療という面だけではなく、今一番注目されている「免疫チェックポイント阻害剤」という薬の研究も飛躍的に伸ばすことができたのだ。
「免疫チェックポイント阻害剤」の薬のフロントランナーとなった企業は、実は日本の小野薬品工業だ。
「1年間で家が買える、がん治療薬」と言われた「オプジーボ」という薬が、それだ。
この「オプジーボ」という「黒色メラノーマ(皮膚がんの一種)」の治療薬の登場は、それまで抗がん剤の研究・開発に熱心だった、世界中の製薬企業の研究・開発の方向転換をさせるほどの衝撃だった。
そこにオバマ前大統領が、「精密化治療」の推進を打ち出したコトで、米国の製薬企業は「ゲノムレベルでの新薬の研究・開発」へと舵を切ることになったのでは?と、考えている。

言い換えれば、オバマ前大統領の「精密化治療」の推進は、直接的ではないにせよ、米国内の製薬企業の後押しをすることにも結び付いている、ということになるのだ。
「ゲノム治療」の話を聞きながら、オバマさんの政策の真意のすごさを感じたのだった。