朝日新聞のウェッブマガジン、&Ⓦにロイヤルコペンハーゲンの新しいシリーズ食器の記事があった。
朝日新聞 &Ⓦ:シンプルこそエレガント。ミラノ・デザインウィークに登場、ロイヤルコペンハーゲンの新シリーズ
ご存じの通り、ロイヤルコペンハーゲンは、陶磁器食器の有名ブランドだ。
特に、毎年クリスマス前に発表されるイヤープレートは、数多くのコレクターがいることでも知られている。
そしてロイヤルコペンハーゲンと言えば、独特のコバルトブルーだろう。
中でも「ブルーフルーテッド」と呼ばれる絵柄は、日本の古伊万里の唐草模様に影響されたものと言われている。
元々日本の陶磁器に影響を受けたロイヤルコペンハーゲンだが、今回ミラノ・デザインウィークで発表された新しいシリーズを見ると、フォルムデザインなどは、日本の急須や湯呑、あるいは蕎麦猪口、お銚子などに似ているような気がするのだ。
もちろん、新シリーズのデザインをされたデザイナーさんたちは、インタビューを読む限りそのような発想はなく、まったくのオリジナルとして発表されている。
ただ、日本で見ている私からは、デザインフォルムを見るとどうしても急須やお銚子、湯呑や蕎麦猪口を思い浮かべてしまうのだ。
特に、今でも人気の高い柳宗理のデザインを思い浮かべてしまうのだ。
柳宗理の父である柳宗悦は、「民芸運動」を展開した中心的存在だった。
「日常使いの道具の中にこそ「美」がある」という考えから、普段使いの道具そのもの機能美や手仕事によってつくられる造形美を、評価しそのような道具のあるシンプルな暮らし、ということを運動を通して提唱していた。
その父の影響を受けたかのように、柳宗理がデザインをした生活の道具、特にキッチン用品や食器などはシンプルでありながら使い勝手が良く、時代が変わってもそのデザインに対する高い評価は変わることが無い。
そしてもう一つ思い出したのが、柳宗悦が「民芸運動」を始める前、イギリスで起こった「Art and Craft」という、「生活の中にある美」という考えだ。
「Art and Craft」は、ウィリアム・モリスが提唱した、「生活と芸術を一致させよう」という考えだが、モリスの考えとは逆にモリス自身がデザインをしたインテリアや壁紙デザインなどばかりが有名になり、本来の活動とは違ってしまったかもしれない。
モリスの影響力は今でも強く、モダンデザインの源流と言われている。
柳宗悦も「Art and Craft」から、影響を受けた部分もあったようだ(その後、批判をするようになるのだが・・・)。
モリスが提唱した「Art and Craft」、柳宗悦の「民芸運動」とご子息の柳宗理のキッチン用品や食器などのデザインは、「人の暮らしの中にある美」ということになるのだと思う。
そして今私たちが目にする「素敵なデザイン」と感じるシンプルで機能美に溢れた急須やお銚子、蕎麦猪口などは、カタチを変えロイヤルコペンハーゲンで新しいデザインとして誕生しているとすれば、「日常生活の中にある美」もまた、クールジャパンではないだろうか?
「ロイヤルコペンハーゲンだから素晴らしい」のではなく、もっと身近なところに「美」があり、注目する必要があると思う。